一西の乱
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日の出と共に一西の国の将軍、一西政宗が城に来ていると言うので急いで用意して一西政宗を部屋へと通した。
隻眼だし、この鋭い目つき……
俺が政宗って名前にしたからか、なんか伊達政宗っぽいな。
「長旅ご苦労であった。
儂に何か用があって来たのか?」
「はい、陛下に頼みたい事があり、尋ねて参りました。
まずはこちらを」
一西政宗が差し出したのは一本の刀。
手に取って見てみるとなかなかの業物……
一色重盛の持っていた刀に似ている気がするが?
「この刀は?」
「はい、陛下よりその身を預かった一色重盛の刀に御座います」
「そうか。
これを儂に渡したと言う事は、つまり……」
「一色重盛を御返しすると言う意味に御座います」
一色重盛が……死んだ?
一西の国は西治帝国でもかなり平和な国だったはずだ。
日葵と陽太郎は無事なのか?
「一色重盛には妻と息子がいた。
その者達はどうなった?」
「はい、狸の化物共に食われたかと」
「狸の化物だと?
城は乗っ取られたのか?」
「いえ、何とか城は死守し、守り切りました。
向こうもかなりの痛手を負ってる故、すぐには動きませぬ」
忍者からはそんな話は聞いて居ない。
隠神刑部であれば、忍者達を始末して情報を隠す事は出来る……
ああ……
だめだ、平静を装って居られない。
怒りが込み上げてくる。
そうか、このゲームはそれ程のものか。
俺は堪えきれず、馬鹿みたいに大きな声で笑った。
これ程の怒りと言う感情をリアルで味わった事は無い。
そうかそうか。
楽しい、なんて楽しいゲームなんだ。
さて、選択肢だ。
怒りに身を任せ、隠神刑部を討ちに行くか?
それとも落ち着いてから兵を集め、万全な状態で挑むか?
何をしても楽しい事には変わりない。
それなら早く味わいたい。
俺は忍者を呼び、今動ける軍を全て集め、輿を使って一西の国へ移動した先で整列しておくようにと伝えた。
「隠神刑部。
あいつが居てくれて本当に良かった。
一西政宗、狸狩りだ」
「承知致しました。
それで、陛下に頼みたい事が御座いまして……」
「そう言えばそうだったな。
申してみよ」
「一西の国では、武器が不足しております。
化物狩をするのであれば尚の事。
我が兵達に武器をお譲りいただけないかと」
「構わん。
倉庫にあるものを好きなだけ持っていけ。
それと、一西の国へは輿を使うと良い。
先日便利な移動手段として、作っておいた。
城に兵を集めて待っておれ。
すぐに儂も向かう」
一西政宗は返事をした後、すぐに倉庫へと向かった様だ。
俺もすぐに準備をしないとな。
雪之丞がサッと現れ、俺の隣を並んで歩く。
向かう先は玉藻の国。
今度は嫌とは言わせん。
隠神刑部のライバルとして作ったんだ。
面白い物を見せてくれなければ作った意味が無い。
雪之丞と共に玉藻の国へと飛び、城にいる玉藻前の前へとやってきた。
「隠神刑部を殺す。
お前も兵を率いてついて来い」
「今回は断る訳にはいかん様じゃのう……
分かった。
ついて参ろう。
じゃが、この身は重い。
後ろの方で見ておっても良いか?」
「俺の許す限りであれば構わんぞ」
「最前線に立てと言っている様に聞こえるが、まあいいじゃろう」
渋々と言った感じだが、まあ……いいだろう。
玉藻前は俺の想像していたよりも多くの兵を用意して一西の国へと向かって行った。
あれはあいつの能力か?
化物共が増えている。
俺も雪之丞と共に一西の国へと向かい、ひょん太郎とショコラと合流する。
「御屋形様テンション高いっすね!
何があったんすか?」
「日葵と陽太郎、そして、一色重盛が隠神刑部にやられたらしい。
隠神刑部を狩りに行くぞ」
「ちょっと待って!
それ……本当の事なの?」
「一西政宗の話しを真に受ければそう言う事になる。
そして、忍者達も事が起こる直前に殲滅された様だ。
ショコラ、今日は加減などしなくていい。
暴れろ」
「そう……」
「主よ。
我も加減しなくても良いと言う事か?」
「存分に暴れろ」
「承知した」
俺は怒っている。
そして、それを誰よりも楽しんでいる。
抗えるものなら抗って見ろ、隠神刑部……
それにしても玉藻前の兵は凄い。
暗雲の中から万にも及ぶ異形の者達の群れ。
そして、百を超える龍が縦横無尽に飛び回り、雷の雨を降らせている。
とてもこの世の者とは思えない。
恐らくあの龍は妖怪百人によって生み出される特殊なモンスターだろう。
大体一万の兵で丁度百くらいの数だからな。
隠神刑部も兵を率いているなら、同じように龍がいるはずだろうし、異形の者同士の戦いも見てみたくなった。
口角が上がりっぱなしだ。
わくわくが止まんねえ。
しかし、少し冷静に考えて腑に落ちない点がいくつかあるな。
一西の国にも武士は配置したが、西治大帝国とは違ってそれ程強い武士はおろか、他のNPCもそれ程強い奴はいない。
強いて言うなら一色重盛がかなり強い部類になる。
だが、隠神刑部の相手をするとなると、一色重盛では刃が立たないだろう。
つまり、隠神刑部の相手が出来るとすれば、一西政宗ただ一人。
だが、争いはおろか一西政宗は傷一つ無かった。
嘘を付いているんだろう。
あいつも俺を裏切るのであれば、願ったり叶ったりだ。
面白い余興を見せてくれよ。
総勢三十万と言った所か。
俺は指示を出して一斉に一西の城へと向かわせる。
せっかくなので、フレンドリーファイアを一西の国全てで有効にして、忍者達には国中の人間を殺しまわる様に指示を出した。
何故って?
せっかく盛り上がってるんだから演出の為だよ。
ここは地獄だ。
もっと地獄らしく多くの血を流さなければな。
阿鼻叫喚の地獄絵図となった一西の国を行軍し、城の近くまで来ると、先頭を進む一西政宗の兵の足が止まった。
忍者からの報告によると、城にはこちらよりも大きな龍が住み着いており隠神刑部の軍と睨みあっている状態らしい。
城は落とされていないと言っていたが、いい仕事だ隠神刑部。
もっと楽しませてくれ。
龍の背に乗っている玉藻前と目が合う。
俺は手で殺れと命じると、玉藻前の軍が一斉に城を襲い始めた。
こんな戦いは見た事が無い!
暗雲を空を覆いつくし、まだ昼にも関わらず空は薄暗い。
空を舞う龍たちが幾千もの落雷の雨を降らし、けたたましい稲光と大気を引き裂いている様な轟音が鳴りやむ事は無い。
龍と龍がぶつかり合い、百を超える異形の者達の命が消し飛んで行く。
空からは血の雨が降り注ぎ、一西政宗の軍はあまりの出来事に茫然と立ち尽くし祈る事しか出来ないか。
普通の生活をしていた人間のNPCだし無理は無い。
「雪之丞は俺を守れ、ショコラ、ひょん太郎は最前線へいって暴れて来い」
それと同時に暗黒武士達にも攻撃命令を出す。
暗黒武士達は全員がボスタイプであり、強力なヘイトスキル持ち。
しかも防御特化型であるにも関わらず、その攻撃力は同じボスタイプの将軍達よりも強い。
これ程の戦力を前にどう抗うんだ?
俺は兵達に作らせた高台から、隠神刑部の出方を窺っていた。




