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弱気を演じ、国を貪る

ブクマ、評価、コメントあったら幸いです宜しくお願いします!

 茶会が始まる自由となった。

 情報は欲しいが不用意に動けば警戒される。

 とりあえず茶と菓子にでも、手を付けて様子を見るとしよう。



 内股だった男の一人が(てのひら)を広げて何かを確認している。

 魔法でも試しているかの様に。

 俺は元々魔法が使えないから試す事は出来ないな。



 何だ!?

 ドシドシとこっちに向かってあの蟹股(がにまた)の女が歩いて来る!

 なんの用だ?

 こいつは近づいて来て俺の腕を取り、その反動で手に持っていたティーカップが落ちて割れてしまった。



 攻撃!?

 流石にここではダメージは無いだろう?



 「お前!

  度胸があるな!

  真っ先に必要な事を聞き出したし、頭も良い!

  俺の女になれ!」



 そしてこいつはいきなり俺にキスしやがった!

 しかもそのせいで仮面は外れて床に……

 それと、唇が痛てえ!

 めちゃくちゃ吸い付いてきやがってこの野郎!



 全力で突き飛ばし、息を乱す。

 俺のファーストキスが女の姿をした男に奪われた……

 なんか涙出て来た。

 だが、これはリアルでも無いし俺の使ってるアバターでも無い……

 この女の姿をした男もそうだ。

 これはノーカン!

 俺まだファーストキッスしてない!



 突き飛ばした女の姿をした男はニヤリと笑みを浮かべて再び俺に近寄って来る。

 だが、俺の前に一人の男が立ち塞がった。

 こいつは内股の男のうちのもう一人。



 今は普通に男性らしい姿勢になっているな。

 


 「乱暴な行動はよせ、僕は彼女に君を近づけさせない」

 「なんだとてめえ!」



 女の姿をした男……ややこしいのでドレス男と呼ぶか。

 ドレス男が一歩近づくとすぐに動きを止める。

 それもそのはず、このタキシード女は(すり)り足で距離を測り、攻撃に身構える姿勢を見せた。



 ドレス女は明らかに脳筋で、闘い慣れしてそうだし、相手が戦えるのだと察知して警戒して止まったんだな。



 対するタキシード女は、近接格闘技を身に着けているな。

 そして傍目(はため)から見ても分かるくらいに綺麗な姿勢で重心が安定している。

 リアルで柔術か何かやってそうな感じだな。



 ドレス男は舌打ちして別のテーブルの菓子に手を付け始めた。



 タキシード女が振り返ってハンカチで俺の目元を拭ってくれる。



 「酷い事されたけど、大丈夫かい?

  さっきの事は気にしなくていいと思うよ。

  リアルじゃないし……

  ごめん、そんな風に慰めても傷つくだけだったかな」



 止めろよ、ちょっとキュンってなっただろ。

 まあ、こいつはこのまま男を演じるつもりか。

 油断は出来ねえな。

 と思っていたら耳元で「実は私女の子だから、安心して」と(ささや)いて来た。



 俺の手を軽く持ち上げられて、他の奴等とは離れた場所まで連れていかれる。

 エスコートってこんな感じなのか。

 何でするのかよく分かんねえな。



 「あなた女の子よね?

  本当は黙っていようと思ってたんだけど、涙を流してるのを見て助けなくちゃって思って間にはいっちゃったの。

  気分とか悪く無い?

  大丈夫?」



 感情を優先して動いたか。

 あまり頭は回らない様だな。

 それに、程よい正義感だ。

 利用するには中々悪く無い。



 「大丈夫。

  ファーストキスだったけど、リアルじゃないしノーカン。

  GJ本当に助かった」

 「GJ?

  グッジョブの事だよね?

  FPS好きだったりする?」



 「以前やっていた。

  反射神経には自信がある。

  それより、女の子だと言う事を私に話して良かったの?」

 「それくらいの事なら全然大丈夫。

  これって情報戦だよねー?

  得意じゃないんだよね、私」



 「問題ない。

  不用意に話さなければ不利にはならない」

 「それもそっか。

  私が女だって事は秘密ね!」



 「わかった。

  一つ提案がある」

 「なになに? 教えて」

 


 「運営は死んだらゲームオーバーって言ってたけど、別に協力してはいけないと言っていたわけじゃない。

  どこの領地かまでは言えないけど、たぶん私は弱い部類だと思う。

  協力者が欲しい。

  貴方(あなた)なら信用出来ると……思う」

 「いいよ!

  私は空にある国、スカイサン・ドナートの支配者のニース。

  よろしくね!」



 「ええっ?

  協力者と言ってもそんな事まで話すのは危険なんじゃ……」

 「ああ、君は話さなくてもいいよ!

  私はこの中で最強の自信があるから、しゃべっても問題ないのよ。

  それに、簡単に私の国へは辿り着けないしね」



 「んー……私はバタカフェ。

  プレイヤーが最初に(おとず)れるカルトリアって国の支配者」

 「信用してくれてありがとう!」



 一瞬抱き着いてこようとしたが、自分が男のアバターである事に気付いたのか止めたな。

 そんな事をされたら俺もちょっとトキメクかもしれないから止まってくれて良かった。

 それにしても、こいつ……

 全部鵜呑(うの)みにするわけじゃねえけど、単純で馬鹿そうだな。



 相手の領地を攻め落とせるってのが分かってるし、カルトリアの国の支配者じゃないって言っちまったからな。

 それならあの国を俺の手に納めて、バタカフェに王となって貰う。



 あの国の裏社会にでかい組織もねえし、内部からぶっ壊す事は出来そうだ。

 それに、プレイヤーが支配している割にはあまり発展している動きが無かった。

 つまり、脱落したプレイヤーが支配していた可能性を秘めている。



 一概(いちがい)にそうとは決めつけられねえけど、ニースにあそこの支配者だと名乗ったし、プレイヤーが王であった場合でもあの国を乗っ取るのは急がねえといけねえな。



 「うん。

  私も信用してくれて、嬉しい」



 返事したところで、丁度お茶会の終わりを告げる脳無いアナウンスが流れた。

 お互い「またね」と挨拶だけ済ませて、しばらく待っていると景色が変わり、元の場所へと戻っていた。



 よし! 急いでカルトリアを乗っ取らねえとな。

 それとバタカフェにも話を通しておかねえと。

 あいつには今後ニースと仲良くやってもらうつもりだし、あいつなら上手くやってくれる。

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