◆雪之丞参る◆
清十郎と狂史郎を追う雪之丞のお話です。
御屋形様に暇な奴等も連れて行けといわれた。
しかし、己の実力を知る絶好の機会。
他の方にそれを譲る道理無し。
新しい人の足跡……
間も無く目標に接触する。
いとも容易く後を追えるとなると、やはり待ち受けるは強者。
我が忍者軍団が遅れを取るほどの相手とあらば、相手に取って不足無し。
追いついた。
報告された数より多い。
人間の女が五人と、男が二人。
その他にドワーフ、エルフ、馬鹿でかいあれはトロールか、成程、となると残りの男はドラゴンニュートでは無くドラゴンハーフか。
それと鳥女が一人。
以前御屋形様がお創りになった最初にいた発掘隊の面子が隠れた戦力というわけか。
しかし戦闘に特化しているのはあのドラゴンハーフの戦士だけ。
鳥女はプリーストなので定石に従い、ヒーラーから始末する。
「待たれよ」
「忍者!
追手だな!
私と狂史郎であの者を相手取る!
姫達を連れて遠くへ行ってお逃げくだされ」
無駄口を叩いている内に鳥女に致命傷を与える。
絶命確認。
「馬鹿な!
早すぎる……」
「くそったれええ!」っと大きい声を上げて動いたのはエルフのレンジャー。
余りに動きが遅い。
紙一重で躱し、通り抜けるが如く一撃を加える。
絶命確認。
少し硬そうだが、御屋形様に御用意して頂いた、この武器であれば容易く葬れる。
絶命確認。
ドラゴンハーフと言えど、首を刎ねれば生きてはいまい。
トロールは体力が多くて切っただけでは死なない。
忍法火遁の術。
効果あり。
追撃スキル。
火遁演武の太刀。
小太刀に炎を纏わせ、大太刀の如く火炎柱で斬りつける舞。
絶命確認。
残りるはドワーフか。
スキル電光石火。
何者も私の姿は捕らえられない。
電光の如く閃光となり、敵の首を刎ねる。
絶命確認。
他愛ない。
この程度の者達に遅れを取ったか。
いや、そんなはずは無い。
「すばしっこいな」
突如現れた背後の気配から瞬時に身を避ける。
「反応も人間にしては早い。
その女の相手は某がする。
女共を連れて逃げろ。
すぐに追いつく」
「やはり居たか隠神刑部。
妖風情が、御屋形様に反旗を翻すとは愚かな」
「そう言うな。
某にも事情がある。
隠神組総大将、隠神刑部お相手致す」
「西治一派が懐刀、並びに雪組忍者軍団首領雪之丞。
いざ、尋常にその首、貰い受ける」
スキル背刺の小太刀。
瞬時に後ろへ回り背後から致命の一撃を刺す。
いない?
「某もそれは得意だ」
「背後!? しまっ――」
焦った振りをして、一撃を躱し、脇腹に一撃を入れて飛びのいて距離を取る。
致命の一撃。
だが致命傷には至らず。
「十分の一秒。
其方が行動に移った隼さだ。
動きの隼さとは裏腹に随分遅い」
「あなたはそれより早いと?」
「自ずと答えは出る」
スキル、電光石火。
移動中はほどんど何も見えない。
スキル発動と同時にオートアタックへと移行する。
ターゲットの首を狙い小太刀を振り抜くと言う結果が残るだけ。
しかし、目の前に隠神刑部の顔が現れ、私は地面に倒れていた。
成程。
認識を改める。
NPCはプレイヤーと違って、人の限界を優に超えて来る。
すぐに立ち上がり、再び距離を取る。
が、既に隠神刑部は後ろへと回り込んでいる。
攻撃を躱す動きをして、反撃の一撃を加え、離れようとするとまた背後に回り込んでいる?
溜まらず空へと逃げ、ペットの鷹助に捕まる。
下を見下ろすと隠神刑部が狸の化物へと変化している。
あれが、本来の姿か。
そして、このままでは不味い。
流石は将軍クラス、戦いに特化していては勝ち目は薄い。
一先ずここは退いておく。
更に高度を上げて、この場から離れる。
高度が……上がらない?
「鷹助、飛んでくださいっす!
あいつ強いんで逃げるっすよ!」
「ピィー、ピィー!」
「地上では追いつかれそうだし、万事休すっすね!」
高度は下がり続け、隠神刑部に引っ張られていく。
神通力と言うものか。
落下する速度が増している。
鷹助から手を離し、スキル今際の際を発動させ、メッセージが書き込まれた文を鷹助に持たせて御屋形様の元へ向かわせた。
引っ張られたお陰で上手く着地は出来なかったが、ダメージは無い。
「某から逃げようとするとは胸を痛めるばかりか」
「参られい」
「潔し!
それでは……
参る!」
ふいー食った食った。
これで明日からの胃袋事情は安泰だな!
ん? 足袋を結んでいる紐が切れたな。
不吉な予感がする!
なんてな!




