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◆在りし日の俺◆

西治真下(さいじさなか)の過去。

本編では無いので読み飛ばしても大丈夫です!

 俺の世間での評判は頭の悪いクソガキだ。

 そりゃそうだ。

 学校の宿題はいつもやってなねえ。

 テストはいつも0点。

 大切な教科書には落書きだらけ。



 担任も俺の事は見捨てて何も言わなくなったし、クラスの奴等はそんな俺の事を見下していた。



 誰も俺がどうしてそんな風に育ったのかは見ようともしない。

 他人事なんだしそれでいい。

 だが、担任はそれじゃあ駄目なんじゃねえの?



 そこまで担任に責任は無いって?

 先生もマニュアル見ながら正しい事をしてるって?



 まあ、そうなんだろうな!

 そうに違いない!



 親?

 勝手に俺の事を生んで、勝手に手が付けられないと見放した奴を親と呼ぶなら存在してるんだろうな。



 勝手に部屋を借りて、厄介払いだ。

 最低限の生活費だけ送ってきて顔も合わせてねえ。



 中学なんていかずにずっとゲームばかりしていた。



 誰かが作ったシナリオをその通りに動いてクリアして終わり。

 そんなゲームばかりだけど、ゲームっての成長していく。

 誰かが描いた空想の世界に俺は憧れていた。



 だってそこには馬鹿なキャラはいるが、必要の無い奴はいねえ。

 現実よりよっぽど理解が出来る世界だ。



 なんか知らんが中学を卒業した俺に親は、自分で働いて生活しろと言って来た。

 部屋が無くなるよりはマシかと思い、バイトを始めた。



 バイトを始めて俺が経験した事。

 人間がいねえ。



 わざわざ俺が、今のままだとこういう悪い結果になる可能性が高いですよと懇切丁寧(こんせつていねい)に教えてやったにも関わらず。

 まるで理解せずに、何度も同じ失敗をして、俺の行った通りの悪い結果になる。



 なんでこいつら学ばねえんだ?



 いい加減にしろと、バイトの俺がブチ切れると、俺は問題のある人間だと言われクビを切られた。



 次のバイト先もその次のバイト先でも同じように俺は弾き出され、ついには盗みを働いたと濡れ衣を着せられるまでに至った。



 いつも頭ごなしに言う事を聞かせていた、何度言っても理解しない頭の悪い先輩だったが。

 とうとうこんな稚拙(ちせつ)な事をして俺に復讐して来たんだなと思うと、ちょっと面白い奴だなと思って笑えた。



 こんな馬鹿の稚拙(ちせつ)な罠なんて、ちょっと頭の良い大人なら簡単に見抜けるだろう。

 そう思っていた……



 俺はずっと「そんな事はやっていない」と正しい事を言い続けて来た。

 しかし、警察の言葉は酷かった。

 「なんでやったんだ?」「金が欲しかったんだろ?」「親御さんの身になって考えてみろ」



 暴力までは振るわれなかったが、机を叩いたりして俺をビビらせようとしていた。

 中には優しそうな言葉を使う奴も居たが、全然響かねえ。

 ゲームの中にいた声も出さないキャラクターの言葉の方がよっぽど響く。

 なんだこのマニュアル通りの猿芝居は。



 くだらなくなって俺はずっと言葉を閉ざした。



 少年院へと入れられた俺に親が面会に来て、涙ながらに「どうしてお金なんて盗んだの」とか言ってやがる。

 「俺はやってねえ」と言っても「私は信じてる、だから本当の事を言ってちょうだい」だ……



 くだらねえな。



 俺はこの世界で真面に話せる相手を見つけるのがどれ程難しいのかをよく理解した。



 だってそうだろう?

 世間一般的には詐欺が最も繁栄している職業だ。

 警察は何をしている?

 憲法違反(けんぽういはん)は取り締まらなくていいのか?



 教師って何が仕事なんだ?

 こいつらの大半は分かってねえんじゃねえのか?



 平均寿命はだいたい80歳。

 そのうちの義務教育期間ってのは小学校から中学校卒業までって考えりゃ、9年だろ?

 9年だぞ?

 


 なんの為に教育しているんだ?

 黒板に書いた文字をノートに写して、いい点とったら褒められる。

 それだけで何を教育しているつもりだ?



 そんなもん馬鹿しか育たねえだろ。

 だから俺は論文を書いて文部省に送り付けてやった。

 その論文はどうなったか?

 まあ、ゴミ箱にでも放り込まれてるんだろうな。



 とにかくだ。

 そんな教育意味が無いから受ける必要がねえって言った俺の話しなんて誰も聞こうとしなかった。

 俺は必要な事は自分で探して、必要なだけ学んだ。

 だからバイト先でも俺より口の回る奴はいなかったし、誰も反論出来なかったんだ。



 俺は間違っていない。

 その俺を正そうとしている奴が間違っているだけだ。



 少年院での生活は、そこそこ刺激的で楽しかった。

 中には人を殺したと言っている奴もいたが、すぐに嘘だと見抜いた。

 口が回るみたいだがまるで説得力が無い。

 こいつ少年院を出ても詐欺師くらいにしかなれないぞ?



 看守にあいつには嘘を付く癖を直さなければ更生の余地はねえって教えてやっても、特に看守は行動を起こさねえ。

 矯正施設(きょうせいしせつ)ってなんだろうな?



 結局少年院を出るまで分からなかった。

 俺はなんも変わってねえけど、それでいいのか?

 少年院を出てからは、親が俺を部屋に閉じ込めた。



 働かなくても最低限の生活費だけは貰える。

 なんでそんな事してんのか俺には理解が出来ねえ。

 俺がどうしたいのか聞かれたら答えるし、やって欲しい事があるならやってやる。

 嫌な事があったらやりたくねえって答えるし、それが俺にとって必要だと本気で思ってるなら納得させたらいいだけの事だろ?



 なんで当たり前の事が当たり前にならねえんだ?

 この世界はおかしい事だらけだ。



 久しぶりにゲームでもするか。

 今はどんなのが流行ってんだ?


 

 MMORPG。



 オンラインゲームって奴か。

 やってみるとこれが結構面白い。



 この世界の人間は、こっちの世界の人間と違って自分で考えて行動している奴等が多い。

 俺みたいな奴は結構レアなんだと思っていたが、ここにはそういう奴等が沢山いる。



 そして、金が全てって訳じゃないが、戦えるだけのステージに立つには課金が必要だと確信して仕事を始めた。



 相変わらず馬鹿をこき使って、(うと)まれ、クビを切られたりしたけど、それでも新しい仕事を見つけてはゲームに課金していった。

 仕事を変えるのは得策じゃねえと判断した俺は、会社の為になるような働きはせずに、上司に気に入られる様に行動をする様になった。



 あっと言う間に管理者の立場になったが、俺ならこんな奴速攻でクビにするけどな。

 一日中上司に張り付いて、猿でもわかる改善提案をして、手柄をどうぞどうぞと譲り、あげくのはてには会社が背負うリスクを無視して上司の手柄を立てる。



 まあ、こんな場所に俺の居場所はねえんだからどうなっちまっても知らねえ。



 だって、この会社で働いてる奴等に興味がねえ。

 誰でも簡単に出来る様な仕事をあの手この手を使って、サボったりする意味なんて俺にはわかんねえし。

 


 わざわざそんな迷惑な事してる奴がいるのを教育もせずに見逃している上司もわからん。


 

 馬鹿な奴等の相手をしても誰も報われないのだ。

 俺が真面目に仕事するだけ無駄だ。



 さて、ゲームの続きをやろう。

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