誘惑の町 花町
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現在昼飯を食べ終わった俺は、変装をして花町へとやって来た。
馬で飛ばして来たけどもう夜か。
今日はここで宿を取らざるを得ないな!
ぶらぶらと歩いていると、呼び込みに声を掛けられる。
俺だと気付いている様で、丁寧に挨拶をして来た。
そう言えば地下闘技場は盛り上がってるのだろうか?
せっかくなので連れて行って貰うと、かなり人気が出ていた。
やっぱり以前よりも迫力が増しているし、一人ひとりがかなり強いな。
「繁盛している様だな。
どんな感じだ?」
チンピラに聞くと、越後屋が上手くやってくれているみたいだ。
農民vs落ち武者で連続で五回勝てれば罪人として剥奪された市民権を得られると言う事で皆必死になって市民権を取り戻そうとしている。
勝ち越していてもそこへ第三勢力である町民が乱入したりして横やりを入れる。
結構匙加減の難しい所だが、越後屋は見事に演出しているみたいで盛り上がっているらしい。
うん、悪い事してるなぁ……
確か町民って税金を払えずに借金抱えた普通の町民だろう?
家族だっているはずだしなぁ。
そりゃ誅罰メーターもすぐ溜まるわ。
他にもいっぱい悪行しているし、とりあえず税金を抑える様に伝えておくか。
越後屋に戦闘に強いNPCや回復の出来る精霊術士なんかを屋敷に配置して、さらにクラスアップさせておこう。
少しはマシになるだろう。
地下格闘技場をでて俺はまたブラブラと町の中を徘徊する。
なんだ?
行列が出来ているぞ?
あれは……獣耳王国か?
やけに女性プレイヤーが並んでいるが……
近くへ行くと獣耳王国でも家宰喫茶でも無く、在ろう事か三助喫茶に行列が出来ている!?
なんだやれば出来るじゃねえか!
こんなけ客が並んでるって事は接客だけじゃなく、メニューにも気合いれてるんだろうな。
ちょっと寄っていってやるか。
俺は長い行列の最後尾に並び順番が来るのを待つ。
なんか……俺注目されてんな。
まあ、女性客ばかりだしそうなるだろう。
男の客一人もいねえってのも変な話だけどな。
結構時間は掛かったがやっと俺の順番が回って来た。
店の中へ入ると内装が変わっている!
煌びやかでおしゃれな感じだが、中にはシックにコーディネートされた部屋みたいな場所もあるな。
それに、席も埋まっていて何処に座ればいいのやら。
子天狗が俺の前へとやって来る。
「おじさんかよ気持ち悪い。
金もってんのか?」
「客に向かって失礼な奴だな。
金はあるぞ」
「それならいいや。
指名は?」
「指名?
誰でも構わんぞ?」
まあ、人気ある奴もいるだろうし?
指名とかあっても不思議じゃないか……
「それじゃあこっち。
着いて来て」
案内された席に座るが落ち着かない。
何故か注目を浴びている。
「なんだ?
フリーの客が来たって言うから相手してくれって頼まれたけど図々しい奴だなぁ。
誰が座っていいっつったんだよ?」
「お前は何を言っているんだ?」
どういう事だよ、全然こいつら接客態度良くなってねえじゃねえか!
「あぁん?
口の利き方もなってねえブタが!
臭えから汚たねえ床にでも正座してろ。
メニューは俺が頼んでやる。
有難く思えよ」
こいつなんでこんな偉そうなの?
勝手に注文してるし……
周りの様子を見ていると、他の天狗共も接客態度は良くない。
一部の客にはそれなりの扱いをしている様だが……
ここ喫茶店なんだけどな。
明らかに酒のんでるぞこいつ……
それに、俺のグラスがねえんだけど。
「なんでお前が飲んでんだよ?
俺の酒は無いのか?」
「喉乾いたんなら指でもしゃぶってろよ豚がよー。
汚ねえからさっさと床に座れ」
「ふっざけんなよ!
帰らせて貰う!」
激怒した俺は店を飛び出して遊郭の方へと足を運ぶ。
途中、子天狗が追いかけて来てお代を支払わされたが、まあいいだろう。
あんな態度でよく金がとれるな!
しかもめちゃくちゃ高いじゃねえかクソが!
なんであれで人気でるんだよ……
気を取り直して、遊郭の入り口に辿り着くと、遊女の一人が俺に気が付き小声で話しかけて来る。
「御屋形様で御座いますよね?
このような所へ何用で御座いますか?」
「お前忍者か。
雪之丞には黙っておけよ。
今日はこの町で宿を取る。
乙女太夫さんを呼んで来てくれ」
「承知致しました。
それでは宿はこちらで用意させて頂きますのでご案内致します」
中々美人な子だったな。
忍者じゃなくても遊女であれば十分食っていけるだろう。
俺を案内するのは違う忍者か。
こいつも美人だし、遊女に扮している奴だな。
「忍者でも客の相手をするのか?」
「はい、口が裂けても御屋形様のお相手をするなどとは言えませんが」
「そ、そうか」
雪之丞が何か吹き込んでいるのか?
まあ、乙女太夫さんがいるから俺はいいんだけどな。
しばらく歩き、この町で一番いい宿を案内される。
「すぐに乙女太夫様が来られるので、ここでお待ちください」
薄い仕切りで分けているが、部屋には既に布団まで敷かれてある。
酒の準備も宿の者が運んで来てくれた。
後は乙女太夫さんを待つのみか。
緊張するな!
「失礼します」
おおっ!
来たか!
結構早かったな!
ドキドキして来たぞ!
まずはあの美しく妖艶な舞を見てから。
後はゆっくりと……ぐへへ……
変な笑いが出てしまった。
少し落ち着いた方がいいな。
「入れ」
襖をあけてこの町一番の遊女、乙女太夫さんが入って来る。
相も変わらず美し……ん?
なんか前と違うなぁ。
見た目はそっくりだがなんか変だ。
圧倒的な存在感と言うかオーラが出ていない。
何度か会っているから俺が慣れて来たのか?
とりあえず舞を踊って貰う様に頼むと、乙女太夫さんが舞始める……
ああ、これ絶対偽物だ!
全然違うんだもん!
中身は忍者か?
だが、中身が誰であれ事を致せば今日の所は満足だ!
そうと決まれば舞など見てられるか!
さっさと床へと誘い事を成してしまおう!
「舞はもうよい。
少し飲み過ぎた様だ。
着いて参れ」
ヨシ!
自然な流れだ!
あとは寝るだけ……
俺はササっと布団の中へと入り、偽太夫が入って来るのを待つ。
頭の片隅にあったここへ連れて来た遊女の言葉を思い出す。
「口が裂けても御屋形様の相手をするなどとは言えませんが」
ん?
こいつ俺の相手をするんだが?
中身は忍者のはず……
忍者は雪之丞に何か吹き込まれていて、俺の相手はしないんじゃないのか?
背中に冷たい汗が流れる。
布団に入って来た偽太夫を見つめ確信へと至る。
こいつ……雪之丞か!
慌てるな俺!
まだ分からんが、たぶんそうなのだろう。
ここは冷静に考えどう行動をする?
一つ。
気づかない振りしてこのまま雪之丞と致す!
城で会っても知らない振りをしていれば気まずくなったりもしないだろう。
二つ。
この場で見破るが雪之丞と致す!
気まずくなるわ!
三つ。
本当にこのままただ眠り、何事も無く朝を迎える。
ふむ。
まあ、答えなど正体を見抜いた時から決まっている。
「ところで雪之丞。
アイドルイベントで三位以内を勝ち取り、儂の妻になるのでは無かったか?」
「ほう……見破るとは。
流石は我等が主。
御屋形様はいつお気づきになられたのですか?」
「舞を見た時点で偽物だと言う事はわかっとったわ。
雪之丞、儂がお前だと見抜いたのは今し方の事だ」
「作用で御座いますか。
では、今宵は暑い夜を共にしましょう」
「ぬ?
ところで雪之丞。
アイドルイベントで三位以内を勝ち取り、儂の妻になるのでは無かったか?」
「成程、それまでは我慢するべきだと訴えているのですね。
ですが、御屋形様は……やりたいんすよね?」
「雪之丞……恥を知れ!
そんな簡単に自分の体を許そうとするな!
もっと自分を大切にしろ!」
「愛してるんすからいいじゃないっすか!」
「良くない!
そう言う事をするのはちゃんと結婚してからにしなさい!」
「それじゃあ御屋形様はここで何をしようとしてたんすか?
それとも男はいいんすか?」
「秘密だ!
もう何も聞こえん!
俺は寝る!」
グイグイ引っ張って来るが無視して俺は固く丸まって無理やり眠る事にした。
正直な話NPCと雪之丞とでは雲泥の差があるんだし仕方ないだろう。
重みが違う。
ゲーム内での出来事とはいえ、軽い気持ちで一線を越える勇気など俺には無い!
だが、本当に雪之丞がアイドルイベントで三位以内になったら真剣に考えようとは思ってる。
俺は誘惑に抗い眠りにつく事に成功した。




