悪将軍は忙しい
帰りは馬車を使って半日で西治の町まで辿り着いた。
スタミナが無いので全速力で走りっぱなしの馬車は想像以上に速い。
一色重盛は城の牢に閉じ込めて来た。
屋敷に戻った俺達は日葵に料理を作ってもらい。
町を挙げての宴を盛大に楽しんだ。
その夜皆が寝静まった頃、俺は一人で考え事をしていた。
さて……俺は何番目なんだろうな。
忍者を使い世界中に俺と同じく、一つの国の支配者となった者がいるのかどうかを調べさせている。
俺と同じ力を持った者がいるのであれば、敵として現れるのか手を取りあえるのかは分からない。
だが、警戒しない訳にはいかないだろう。
俺がやっているように、偵察にも気を付けないといけないな。
明日からまた忙しくなる。
嬉しい時間が……
◇
目が覚めて朝食を済ませた俺達は引っ越しを始める。
といっても荷物なんかはないし、人が移動するだけだが。
越後屋はこの町に残し俺は城へと移り住む。
ヨギノクニの町などの整理もやったしこれで分かりやすくなったぞ。
分かりやすく国と町の名前も変えた。
ヨギノクニから西治の国へと変更し、十ある町のうち、俺の支配している町を分かりやすく名前を変えた。
最初に居た町の名を西治の町から、歓楽街のイメージから花町に。
隣町は職人の町にしたから職町。
武芸に秀でた代官がいた町は戦う者の集まる町と言う事で武町。
酒好きで女癖の悪い代官がいた街は城から一番近いし、都町。
後の二つは何もいじってないし、行ったことも無いから雪町と葵町にした。
まあ、参考になるものもないし、適当に考えて雪之丞と日葵から一文字取っただけだけどな。
漢字が良かったからショコラは駄目だしぬらりにょん太郎は、うーんって感じになったからこれでいい。
あとの四つの町はそれぞれの代官の名前から来ている。
姉小路天也は姉小路の町。
片桐清苅は片桐の町。
佐久間秀虎は佐久間の町。
朝比奈蘭丸は朝比奈の町をそれぞれ納めている。
町の発展に手を付けると霧がないが、早速仕事に取り掛かろう。
先に俺は馬で城へと移動して、ゆっくりと町を理想通りの形へと仕上げていく。
細かい施設なんかは街に居る代官達から要望を出して貰い対応する。
雪之丞が暗殺して代官不在になっている二つの町にも新しい代官を送る。
他が忍者ばかりだから、趣向を変えて二人の女代官を新しく生み出した。
雪町には櫛名田雪姫、葵町には許乃波奈佐久夜と名付けた代官に納めさせる。
これから十人の代官達の要望に答えつつ俺はおれの仕事を熟さなければならない。
しかもその内四人は俺が作っていない良く知らないNPCだ。
俺がやったように力をつければ謀反を起こす奴もいるかもしれない。
だが、それはそれで楽しめるだろうし構わない。
それに負ける気が全くしない。
俺の種族が人間から鬼憑きと言う種族に変わっている。
ステータスもかなり上がっている気がするし、ボスタイプになったと言う事で間違いなさそうだ。
今後敵となるのは他の七つの国の将軍。
全て国を俺の支配下にしてまたクラスアップして次のステージへって感じだろう。
恐らくそこからがエンドコンテンツに差し掛かるんじゃないかと俺は睨んでいる。
多分このカワセミ地域の外でも同じような事が起こっている。
つまり、最終的には全ての国を支配したプレイヤー同士の戦いになる。
他に予想出来るのはプレイヤーを上手く仲間に引き入れて、戦力として戦って貰う事か。
その為には旨いクエストやらで釣って信用を得なければいけない。
ホント面白いなこのゲーム。
あくまで予想の範疇だからまだなんとも言えないが、やれる事はやっておかないとな。
後変わったのが、税金は代官達が勝手に持ってきてくれるので俺からは変更できない。
まあ、俺の作ったNPCの町だと出来るんだが、やり過ぎると代官達がプレイヤーに襲われてしまう。
なので、誅罰ゲージが溜まりそうな町の代官には強いNPCを沢山付けてなんとか凌いで貰う。
だいたいこんなもんか。
ちなみに、俺が送り出した発掘隊は大した素材を持ち帰って来る事も出来なかったし、量も雀の涙程だったので自由に冒険させている。
忍者達と違って情報も持って帰って来ないから、まるで役には立たなかった。
ショコラが一色重盛と地下の牢獄にいるし、ちょっと様子見に行くか。
辿り着くと、ボロボロになった一色重盛が釣られている。
微動だにせず、死んでいるのかとも思ったが、呼吸はしているみたいだな。
「どうだ?
気はすんだのか?」
「うーん……
飽きて来ちゃった♪」
「そうか、それじゃあ止めを刺すか?」
「ううん、まだまだ苦しんで欲しいの。
絶対に殺してあげない」
「そうかぁ。
それじゃあ仕方ねえよな!」
「えっ!?
ナニナニどうしたの?」
「民の血税を使いこいつを生かしておくのは勿体ないんだよな。
でも、こいつの事殺さないんだろ?
それじゃあ、仕方なくね?」
「どういう事?」
「解放してこいつにも仕事をして貰う。
俺達も助かるし、殺さなくて済むだろ?」
「苦しめなきゃ意味ないの!」
「びっくりしたぁ!
お前にどんな事情があるのかは知らねえけどな。
俺がお前の帰って来る場所になってやるし、全部受け止めてやるから、遠慮なく俺を頼れ。
だからこいつの事は俺に任せろ」
「…………」
ん?
急に黙って動かなくなったな。
「どうした?」
「大っ嫌い! 大っ嫌い! 大っ嫌い! 大っ嫌い!
嫌い嫌いきらーい!
馬鹿!」
「なんで俺はいきなり罵倒されてるんだ?
俺もお前なんて嫌いだばーかって言えばいいのか?」
「嫌うな!
勝手にしてよバカバカバーカ!」
怒ってどっか行っちまいやがった!
なんだあいつ?
急にプンスカしやがって!
玩具取られた子供かっつーの!
「はぁ。
一色重盛、てなわけで将軍になった俺の配下になれ。
衣食住は保証するぞ?
それとも将軍を討った俺に仕えるのは嫌か?」
「だ――れが、貴様の様な……悪党などに……」
俺は牢の中へ入る。
このままだと死んじまうな。
精霊術士を一人生産してこの場に配置する。
「傷を癒してやれ」
「わかた」
精霊術士が精霊を召喚して傷を癒していく。
傷が治ったばかりの一色重盛を加減をしてボコボコに殴る。
ふむ、将軍の火力が凄まじかったのも頷ける。
素手でもこの状態の一色重盛なら瞬殺出来そうだな。
「傷を癒してやれ」
「わかたです」
そして、もう一度ボコボコに殴った後、手錠を外して下ろしてやった。
「寛大なる俺がお前に自由を与えてやる。
好きに生きろ」
「まて……何故……だ?」
「何故?
ここで死ぬには惜しい奴。
僅かながらそう思っただけだ」
「そうか……拙者を葬らねば、その首に刃を向けるかも……しれぬぞ?」
「面白い余興だ。
俺はお前を許す」
NPCでありながら自我を宿す。
こいつの事は高く評価している。
だからこそ泳がせておくのが良い。
どう成長するのか、どう生きていくのかと言う興味が尽きない。
「励めよ」
俺がその場を立ち去ろうと、廊下の階段を上がろうとした時、後ろから俺を引き留める声が聞こえ振り返った。
「貴殿に仕えたい」
いやいやいや、貴殿って敬意を向ける相手に言う言葉だろ?
俺のどこにそんな要素があった?
なんでこいつ急に俺に敬意を払ってるんだよ怖いなぁ!
だが、せっかく頭を下げてくれてるんだしなぁ……
無下にする訳にもいかないか……
「傷を治してやれ。
あと、お前はその後、都町の診療所で働いておけ」
「わかたです」
「一色重盛、今日より俺がお前の主だ。
仕事はそうだな、追って伝える。
それまで家で待っていろ」
「御意」
こいつの仕事も考えないとな。
とりあえずの候補はあるが……
そろそろ日葵も城へ到着する頃だと思うし、まずは腹ごしらえだな!




