正義のヒーローはいない
ブクマ、評価、コメントあったら幸いです宜しくお願いします!
最悪の気分だ……
なんだこの宿とケチを付けたいが、仕方ない事か。
体が痛い。
まあ、枕が変わると寝れないって言うしな。
三影酒女改めの居る町に屋敷と女中を先に配置すればかなり旅は楽になるだろう。
しかし、俺はそれをしない。
何故なら日葵も俺達西治一派の仲間なのだから。
ヨシ!
今の俺、悲劇のヒーローみたいでカッコイイな!
さて、腹ごしらえをしてから旅に出るとするか。
宿の主人に朝食を頼み、持ってきてもらう。
焼いた鮭の切り身に、卵焼きと味噌汁。
きゅうりの漬物と金平牛蒡か、ふむふむなるほど。
朝食の味は悪く無いな。
宿をでて目的地へと歩み始める。
しばらくすると、雪之丞の隣に旅人のような恰好のをした男がひっついている。
すぐに離れた所を見ると手下の忍者か。
「御屋形様、ショコラさんの所在つかめたっす!
三影酒女改の納めている町に一色重盛の家が二つあるみたいっすね。
そのうちの一つにいるみたいっすよ」
「そうか、丁度良い」
俺は奉行所を買収して更に自警団も先に配置しておく。
牢獄も用意しておこう。
これでとりあえずは一色重盛を捉える準備は整った。
後は実行あるのみだな。
腹が減ったので雪之丞からスルメを貰って、ひたすら次の町へ向けて歩いて行く。
結構移動に時間が掛かるな。
プレイヤーもこれじゃあ疲れるだろうし、移動用の何かがあるはずだ。
「雪之丞、遠くまで行く時は普段から歩いているのか?」
「このゲームスタミナとかないんで走ってるっすよ」
「それじゃあ一日で目的地に着いただろう……
なんで言わねえんだ」
「いいじゃないっすか!
たまにはゆっくり旅するのも!」
「そうか。
走るぞ」
俺達は勢いよく駆け出した。
つもりになった。
俺足遅っそ!
ひょん太郎は多分普通なんだろうけど、俺はなんかデバフ掛かってんな!
歩くよりは早いが、全力で走ってランニングしているくらいの感覚だ。
これでも少しは次の町に着くのも早まるし継続して走り続ける。
雪之丞が俺の周りをグルグル走ったり、アクロバティックな動きで鈍足の俺を煽って来やがる。
移動用の馬でも今度買っておくべきか。
休みなく走ってるだけあって、昼時には目的の町へと辿り着いた。
適当な店に入って昼食を済ませた後、三影酒女改の屋敷へと赴き作戦を立てる。
作戦と言っても正面突破だけどな。
上忍を適当な数生産した後、一色重盛の居る家へと向かう。
「うん?
一色重盛は武士だし、貴族なんだろ?
その割には身分不相応な家じゃないか?」
「ああ、この家は掃除だけしてずっと使ってなかったみたいっすよ?
調べでは父親と渡来人の妾との間に生まれた妹をここで養ってたみたいっす」
「これからぶっ殺そうって奴の昔話はするな。
あいつ可哀想な娘を放っておけないとかって話だったが、色々察しちまっただろ!
その妹はどうしたんだよ」
「気になってるじゃないっすか!
調べでは死んでるっすよ。
父親も関わろうとしなかったみたいですし、質の悪い奴等に目を付けられて母親と共に首をくくったそうです」
「そうかぁ……
はぁ……
幸せになって欲しかったなぁ!
だが、悲しいかな奴は敵だ!
俺を裏切った事を後悔させてやれ」
「承知したっす!
それじゃあ遠慮なしにいくっすよ!」
「心得た」
広くは無い家なので探す手間など無い。
玄関を開け侵入するとすぐに二人の姿を見つける。
ちなみにこの家の周囲は忍者達に包囲させて人は寄り付かなくしてある。
多少声を荒げようと誰もここへは来ない。
「また会ったな同士よ」
「来たか、外道。
拙者を同士と呼ぶか」
「ああ、同士よ。
外道と呼ぶのなら儂を裏切ったお主も同じ穴の貉。
同士と呼んで何を差し支える事がある?」
「如何にも……
では、外道同士仲良く死合おうぞ!」
俺はその場で扇子を片手にパタパタと顔を扇ぐ。
首を狙って刀を振った一色重盛の攻撃は易々と雪之丞の手によって防がれ、ひょん太郎の毒攻撃がヒットする。
Lv差も埋まってるからちゃんと毒に侵されたみたいだな。
「くっ痺れ毒か!
しかし、そんなもので拙者は止まらん!」
レベルと言う概念は虚しいものだな。
つい先日程前までは、あれ程手の付けられない猛者であったと言うのに……
一色重盛でさえ今の雪之丞にとっては子供扱いだ。
まるで攻め入る隙を許さない。
「退屈じゃのう。
同士よ、お主の刃はその程度の物なのか?
その程度では亡き妹君にも顔向けできんぞ」
「聞き捨てならん!
なぜ拙者の妹の事を知っておる!」
「何故だろうなぁ?」
高笑いする俺に対して一色重盛が激高した。
さて、奇跡を起こすのか確かめておきたい。
ゲームでは感情しだいで強くなったりはしないし、正義のヒーローみたいなご都合主義的な展開にはなり得ない。
たまに本番に強いタイプが居て、想定外な結果を生む事があるが、あくまでもプレイヤースキルの範疇に収まる。
NPCだが、これだけ正義心が強く、激高した相手なら確かめる事が出来るだろう。
このゲームに人為的な奇跡が起こるのかどうかを。
結果は残念ながら奇跡など起きなかった。
渾身の一撃として放った刃は俺の首まで届かず、背中から打たれたショコラの魔法によって一色重盛は地面に這いつくばる。
「よくやったショコラ。
ここで止めは刺さんのか?」
「止めは後でゆるりと」
「ショコラ……殿!?」
「勘違いしておる様じゃから教えてやろう。
最初からショコラは儂の手の者だ。
お主が勝手に勘違いをして妹に姿を重ねてしまい同情しただけの茶番だ。
哀れよのう一色重盛」
「そ……そうであったか。
ならば言い残す事は無い。
止めを刺せ」
自意識過剰の正義マン。
俺はそう言う奴が嫌いだが、こいつ……
悪役に徹してやってるのに、良い顔してやがる。
どうせショコラが可哀想な娘で無くて良かったみたいな心境なんだろ?
せめてもの情けとばかりに、無慈悲に振る舞っている俺の慈悲を無下にしやがって!
とことんまで俺を裏切るとは大した奴だ。
俺はグレイプニルを使って一色重盛の身動きを封じる。
表で待機している忍者を呼び出し、牢獄で監禁するように命じこの場を後にする。
後の事はショコラに任せよう。
まあ、その前に将軍の首だな。
「ショコラ、帰ったら奴を出来る限り惨たらしくやれ。
生きている事を三度は後悔させてやれ」
「三度程度じゃ済まさない。
千九十五回は後悔させる」
「えぇ……
怖いんだが……」
「やーん♪
怖くないよう♪
ショコラの事セクハラした罰は重いんだよぅ♪
プンプン♪」
なんかショコラの闇を見た気がするが、気を取り直して。
これから将軍の首を取りに行く。
五本の指に入ると言われる一色重盛が俺達の相手では無かった。
つまり、将軍が馬鹿げた強さで無い限りは俺達の敵ではない。
「これより城に攻め入る!
もはや下剋上などとは言うまい!
有象無象など蹴散らかし、蹂躙しろ!」




