旅は道連れ世は情け
はぁ……流石に寝ざめが悪いな。
あそこまで冷血になれるとは思わなかった。
アニメや漫画とかで自分が怖いってセリフに、突っ込んだりもしてたが、こういう気持ちなんだな……
朝食といつもの越後屋を済ませて、外へと出掛ける。
まだまだ甘ちゃんなんだな、俺。
全然落ち着かねえや……
「共も連れずにどこ行くんすか?」
「散歩だよさんぽ」
「そう言えば褒美って何貰えるすか?」
「特に考えてねえな。
欲しい物でもあんのか?」
「んー御屋形様?」
「ん? どうした?」
「いや、欲しい物、御屋形様」
「影武者を作って雪之丞用の俺を作ればいいか?」
「のーせんきゅーっす。
真面目に答えると忍術道具屋みたいなの欲しいっすね。
忍者はソーサラー系みたいなAOEみたいな範囲バースト火力スキルにしこたま忍術道具を消費するんすよ」
「そうか、今まではどうやって仕入れていたんだ?」
「一応自分でも作るスキルあるんで地道に貯め込んでるっす!」
「それなら忍者を道具職人か何かにした方がいいか?」
「微妙っすね。
忍者のポイント振れるスキルに道具作り的なのが無いので道具作る専門のNPCを作ってくれる方がありがたいっす!」
「わかった。
隣町で忍術道具屋とそれ専用のNPCを作ってやる」
「感謝っす!
ところで、何処に向かってるっすか?」
「地下格闘技場だ。
作ってからまだ一度も様子見て無かったからな」
「それじゃボクもついて行くっす」
雪之丞と共に地下闘技場へ行き、案内人に連れられて特別席へと通される。
「うわぁ……ガチで殺し合ってるっすね!
それにしてもあれ、全部プレイヤーっすか?」
「好きな奴はすきなんじゃないのか?
殺し合うって言ってもしばらくすりゃリスポーンするし多少流血表現はあるが、死体とか残らないからな。
賭け事が好きなんだろう」
「でも、結構迫力あるっすよ。
あ、そうそう。
武芸に秀でた代官なんすけど、書状が届いてたっすよ」
「まだ見てないぞ。
なんて書いてあったんだ?」
「お前マジ許せねえ!
俺がお前をぶっ飛ばす!
YO!
みたいな感じだったっすよ」
「ラッパーに怒られるぞ?
それで、いつ頃来るのか分かるか?」
「それなりに人数揃えても明日には来ると思うっす。
激怒してたみたいっすよ!
よっぽど効いたんすね、あれ」
「あれか。
そりゃ怒るだろう。
あんな長くて綺麗な髪をバッサリいっちまったからな。
切った俺もちょっと後悔してるわ」
「ふっふっふ、お主も悪よのう」
「それ俺のセリフだろ!
返せ!」
格闘技場の戦士達だが、思ったより弱いな。
迫力はあるが、これじゃあ客が飽きてしまう。
リスポーンする度にLvリセットでもされてんのか?
一応こいつら全員俺の作ったNPCだし、金使ってクラスアップさせておくか。
それと、会場を管理しているチンピラ達に人気がある奴のグッズを販売しろと指示を出した。
こいつらの勢力も結構でかくなって来てるし、そろそろ纏める奴を作っておいた方がいいかもしれねえ。
かといってひょん太郎はそういう管理とかすんの嫌いな奴だからな。
放って置いたらずっと一人で狩してるタイプだから、普段から自由な時間与えてるわけだし。
となると、越後屋辺りに任せてみるか。
格闘技場を出て越後屋のいる屋敷へと向かう。
そういえば俺から尋ねるのは初めてか。
確か表向きには呉服屋だったはず、裏ではどんな商売してるんだろうな?
「これはこれはお代官様、何か御用でしょうか?」
「おおー、なかなか良い反物を扱っているようじゃな」
「ええ、これもお代官様のお陰に御座います」
「裏の商売の方は上手くいっておるのか?」
「はい、それはもう金の生る木を育てているかの如く順調に御座います」
「そうかそうか、それは……どの様なものであったか?」
「金貸しで御座います。
お代官様のお名前をお借りする事で、踏み倒そうとするような輩も居らず非常に実入りの良い商売となっております。
まさに……グッジョブオレ♪ ヴィッバキッラボッシ♪」
「なんすかそれ!
かっこよー!」
「雪之丞!
黙っておれ!」
「ところで越後屋、丁度お主に任せたい仕事があるのだがよいか?」
「お代官様の命と在らば、どの様な仕事も引き受けましょう」
詳細を説明すると快く引き受けてくれた。
任せたのは地下闘技場の管理とチンピラ達の管理。
仕事に必要なら好きに使っても良いと伝えると大喜びしていた。
ついでに唐栗屋敷も見ておくか。
「見た目は普通だな。
中にどんな唐栗があるんだ?」
「一応忍者達が住んでいるだけで鍛えられる感じになってるっすよ……」
「よし、帰るぞ」
聞いただけでどんなものなのかは分からんが、天井裏に上ったり走らされたりくらいはするんだろう。
そんな面倒な屋敷には入りたくは無い。
昼時か……
なんか女中の気持ちを打ち明けられてから気まずいんだよなぁ。
それに、雪之丞も着いて来ているし……
「そういえば、ちゃんと飯とか食ってんのか?」
「食ってるっすよ……」
「ん?
なんか妙な返事だな?
何かあったのか?」
「こっちの世界に来てからおかしいんすよ。
大豆とスルメ、硬めのご飯が主食っす。
おやつにクソ固い煎餅を小太刀の鞘で割って口の中でふやかして食べてるっす。
後は高カロリーのサプリメントとかっすね……」
「普通に食事はしないのか?」
「なんか仕事していないと落ち着かないんすよ。
それで、パパっと済ませられたり歩きながらでも取れる食事がメインになってるっす」
「ショコラは兎も角……
ひょん太郎が何食ってんのか心配になって来たな」
ものはついでだ。
あいつ等も呼んで食事に行くぞ」
ひょん太郎を雪之丞に連れてきて貰い、診療所へ西治一派が揃った。
「奢ってやるから何食いたいか決めろ」
「好き嫌いはないので何でもいいっすよ」
「ショコラはぁ♪
ショートケーキかなぁ♪」
「致死性の毒、素材は新鮮な方がありがたい」
「わかった。
それじゃあ、俺に着いて来い」
ショートケーキなんて無いし、毒物なんて食えんだろ!
だが、出してくれそうな人を俺は知っている。
屋敷へと戻り、広めの部屋に皆を通し、パンパンと手を叩き女中を呼び出す。
そして……
「皆も見た事はあるとは思うが、紹介しておく。
いつも俺の食事を用意してくれている女中の日葵だ」
名前を付けた事で何故かまた若返ったが、日葵は俺達西治一派の家族なのだと説明し、皆も自己紹介を始め西治一派に新たな仲間として迎え入れた。
そしてリクエストした料理を、日葵は見事に作って持ってきてくれた。
ひょん太郎の料理なんて毒物なのに、どんな料理知識なんだ?
しかもかなり旨いらしいし……
こいつの料理だけ見た目はヤバイから誰も手は付けてねえけど。
まあ、野暮な事は考えないでおこう。
楽しい宴の後、大部屋を用意して五人で夜を共にした。




