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恋は盲目、落ちれば地獄

 作戦を決行する。

 最も危ないのはショコラだが、危険と判断した場合は俺が助けに入る。

 将軍家の手の者となると、下っ端でもLv60くらいはあるかもしれねえ。



 それくらいならもしかすれば人数でゴリ押せるかもしれねえが、一番Lvの高い俺でもLvは42だからなぁ……

 雪之丞(ゆきのじょう)との戦闘を考えると攻撃はまず通らねえ。



 忍者達も後方からクリティカルヒットでなんとかダメージを与えられる程度だと考えると戦闘になったら絶望的だな。

 雪之丞(ゆきのじょう)が居ればなんとでもなるんだがな。



 隣の部屋ではマッサージを始めた様だ。

 男の吐息が漏れる……



 「嗚呼、なかなか良い塩梅(あんばい)だ。

  其方(そなた)、上手いな。

  そう言えば名を聞いておらんかったな、拙者は一色重盛(いっしきしげなり)其方は?」

 「ショコラと申します」



 「ショコラか、成程良い響きだ。

  付かぬ事を聞くが、この町の代官の事をどう見ている?」

 「はぁ、私の様な渡来人(とらいじん)から見れば、とても良い方だと存じております」



 「そうか……実はな、この町で妙な噂を耳にしているのでな……

  其方(そなた)の身に危険が迫っているのでは無いかと、その身を案じておるのだ」

 「ここは、とても良い町で御座いますよ?」



 「多くは語れぬ、だが拙者を信じては貰えぬか?

  その華奢(きゃしゃ)な手を引き、連れて帰りたい」

 「何を(おっしゃ)いますか……

  その様な事を申されても困ります」



 なんだこいつ?

 ずっと口説きっぱなしじゃねえか!

 それに、やっぱりLv差があるみたいだな。

 眠る気配がしねえ……



 これ以上ショコラに負担を……

 ん?

 ああ、ショコラでいいんじゃないか?

 よし、それで行こう!



 俺は外に出て忍者に指示を出す。

 診療所の人間の振りをし、ショコラを診療所の外へ逃がし、この男を診療所内で待たせるように命じた。

 再び部屋へ戻り上手くいくか聞き耳を立てる。



 「失礼、ショコラ殿。

  いつもの爺様の持病の具合が悪い。

  出向いて見てやって貰えるか?」

 「はい、お(うかが)いします。

  一色重盛(いっしきしげなり)様、少し出て参りますので、少しの間お待ち下さい。

  すぐに戻りますので」



 「重盛(しげなり)で良い。

  相分(あいわ)かった。

  しばし待とう」



 診療所の外へとやって来たショコラに声を掛ける。



 「上手くいってない様だな」

 「あいつぅ!

  全然眠らないしぃ!

  それに、ずっとボディタッチしてくるんだよぅ?

  キモスギ!」

 


 「そうか、頑張ったな!

  偉いぞ!

  それで、作戦の変更だ」

 「ウンウン♪

  ショコラは何すればいい?」



 「とりあえず俺と一緒に屋敷で待機だ。

  あいつお前の事が好きみたいだから、俺が(さら)った事にして罠にハメる」

 「ううーん。

  多分あいつすっごい強いよ?

  簡単には落とせないと思うんだけど、策はあるのかなぁ?」



 「あるぞ。

  まあ少しだけ時間がかかるから忙ねえとな」

 「ハーイ♪

  それじゃ、お屋敷へ向けてしゅぱーつ♪」



 ショコラと共に屋敷へと帰って来た俺は早速罠の準備を始める。

 金には余裕がある。

 有り余るほどの罠を設置して出迎えてやろう。



 屋敷を拡張して至る所へ罠を設置する。

 罠によるダメージが固定なのでLv差は関係が無い。

 ただし殺してしまっては意味がない。


 

 加減が難しい所だが、完全に身動きを封じればなんとでもなるはずだ。

 その為の罠を設置して行く。

 急いで罠を仕掛け、なんとか間に合ったみたいだ。



 しばらくすると、忍者がここへ一色重盛(いっしきしげなり)が間もなく到着すると伝えられる。



 俺はいつもの部屋で一色重盛(いっしきしげなり)を待ち受ける。

 血気盛(けっきさか)んな奴だ。

 忍者の報告によると屋敷内のチンピラや札付きを倒しながら此処へ向かって来ている様だ。



 時代劇のヒーローみたいな奴だな。



 ドタドタと言う足音が聞こえ、ピシャリと(ふすま)は開かれた。

 一色重盛(いっしきしげなり)は刀の切っ先を俺に向け、今にも飛び掛かって来そうだ。



 「ショコラ殿を知っておるな?

  何処へやった?

  大人しく口を開いた方が身の為になるぞ」

 「ショコラ?

  あの桃色の髪をした若い渡来人(とらいじん)の女か」



 俺はパンっと手を叩き、「連れて参れ」と口にするとしばらくして用心棒がショコラを連れてやってくる。

 ショコラを人質にした形だ。

 それに、用心棒には十分な距離を取らせている。



 「女子(おなご)を人質に取るとは、噂に(たが)わぬくずであったか!

  ショコラ殿を離せ!」

 「離せば儂を斬るつもりなのだろう?

  ならば刀を置いてもらわねば困る」



 「刀を置けば、ショコラ殿を開放するのだな?」

 「約束しても良い。

  廊下の方へ放り投げればその女を離してやろう」



 一色重盛(いっしきしげなり)は廊下の方へ刀を放り投げる。

 距離的に咄嗟(とっさ)にあれを取って攻撃するなんて事は出来ない距離だ。



 「刀は投げた。

  ショコラ殿を開放しろ」

 「分かった。

  離してやれ」

 


 用心棒がショコラを強く一色重盛(いっしきしげなり)の方へと突き飛ばし、一色重盛(いっしきしげなり)はショコラを受け止めた。

 その瞬間俺の罠が作動する。



 床の底が抜け、落とし穴へとショコラと共に一色重盛(いっしきしげなり)は落下していく。

 こうでもしなきゃ素直に落ちてくれそうに無かったからな。

 それに刀を手放させる事で刀でのスキルも封じた。

 穴の深さもかなりあるし、もうこれでどうする事も出来ねえはずだ。


 それに穴の中は床も壁も全部油まみれで滑るから登ってくるなんて不可能。

 後はひょん太郎の毒を貯め込んだ穴の中で、一色重盛(いっしきしげなり)が弱るのを待つだけ。

 念には念を入れておくけどな。



 穴の中の罠を作動させる。

 何百もの矢が二人を襲っているだろうが、一色重盛(いっしきしげなり)ならショコラを(かば)真面(まとも)にダメージを負ってくれるはずだ。



 ショコラに当たってもダメージは無いんだけどな。

 


 さて、穴の中の様子を(のぞ)いて見るか。

 上から穴の底の(のぞ)くと、大方予想通りの展開だな。



 後は弱った所をこのとっておきの糸で(しば)り上げるだけ。

 大金叩いて作ったこの糸の名は【グレイプニル】北欧神話でフェンリルを緊縛(きんばく)した糸だ。



 一度の緊縛(きんばく)でしか効果がねえって条件付けてなんとか作る事が出来たけど流石にこんなもん用意する必要は無かったかもな。

 ここは忍者に見張らせて、様子が変わったら報告する様に伝える。



 あいつまだまだ元気そうだし、もう一発罠を発動させてから次の仕事に移る。



 遊郭(ゆうかく)にいる代官と一対一(サシ)で勝負してぶっ殺す!

 忍者の話しでは既に音の漏れない広めの部屋へ通している。

 なんで一対一(サシ)の勝負をするかって?



 他の代官の強さを見ておく必要がある為だ。

 一応俺と同じ代官だし、相手も戦闘向きでは無いタイプだと言う事は雪之丞(ゆきのじょう)によって調査済みだ。



 遊郭(ゆうかく)の中へと入り、隣町の代官のいる部屋へと案内してもらう。

 外から外観は眺めていたが、中へ入るのは初めてだな。

 ちょっとドキドキする。



 重そうな部屋の扉を開いて、部屋の中へ入ると代官が楽し気に遊女(ゆうじょ)の舞を眺めていた。

 俺が近づくと遊女(ゆうじょ)達は退出し、隣町の代官と二人だけになる。



 「これはこれは、ご挨拶が遅れて申し訳なかった。

  何故(なにゆえ)ここが楽しかったのでな」

 「お気になさらず。

  それでは早速だが、始めさせて貰おう」



 「始める?

  何を?」

 「決まっておるだろ。

  殺し合いだ」



 隣町の代官は「何を馬鹿な!」と言いつつもしっかり武器を手に取る。

 ほう、こいつは刀か。

 銃を使ってるのは珍しいのだろうか?



 刀を使い斬りかかって来るが、やはり手慣(てな)れてないな。

 これは素人だ。

 斬撃を(かわ)して素手で殴りつける。



 代官はノックバックして後ずさり、鼻血を垂れ流す。

 俺が殴ってもダメージが通るのか。

 他の代官もLvだけは高いかもしれないが、弱いやつはやはり弱いって事だな。



 俺にとってこいつの存在意義は無くなった。

 銃を取り出し、ガンプレイを交えつつ体を打ち抜いて行く。



 急所を外してたった三発で絶命か。

 まあ、普通の人間が今使ってるマグナム弾を喰らったら一発で死んじまうけどな。



 忍者に顔をコピーさせて、隣町の代官の姿になり替え玉にする。

 これで隣町は俺の物となった。

 さっそく手を付けたい所だが、屋敷が心配だ。



 心配は無いとは思うが様子を見に行こう。

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