思わぬ客人は奈落の門を叩く
ふああっっと!
昨日の酒も抜けて気持ちよーく目が覚めた。
さて、軽くストレッチでもして朝食とするか!
「失礼致します」
ん?
この声は超越後屋!
「入れ」
今日は来るのが早いな。
襖が開き、越後屋が入ってくる。
「お代官様、まずはこれを」
「うむ、ほう……
羽振りが良いみたいだのう」
「お代官様の手腕あっての事です」
「はっはっは、褒めても何も出ないぞ?」
「いえいえ、お代官様のお陰でこの綺羅星惹夏流、贅の極み、至れり尽くせりに御座います。
それはさて置きお代官様。
今朝方入った情報で御座いますが、将軍家の手の者が視察に訪れている様です」
「そうか、儂に断りなくか?
お主、それは偵察というのだぞ?
はっはっはっは」
「私の手の者が追っているのですが、どうなさいますか?」
「そのまま気付かれずに追っておれ。
後は儂に任せろ」
将軍家にスパイを送り出す絶好のチャンスだな!
視察に来ている奴を捕らえ、情報を吐かせるだけはかせて、忍者がそいつに成り代わり更なる情報を得る。
こっちにはヒーラーも居るのだ、吐かせられない情報など無いだろう。
気分も上がった所で朝食だ!
越後屋を帰らせて女中を呼び朝食の用意をさせる。
ついでになんとなく卵かけご飯を食べたくなったので、女中にお願いすると快く引き受けてくれた。
今日のメニューは、オクラと鰹節とチーズが入ったご飯だと!?
そして卵もちゃんと用意されている。
そのままでも良かったものを、一手間加える心遣いがなんとも嬉しいものだな。
醤油を垂らして掻き混ぜた卵をご飯に掛け、ジュルジュルと口へと運び噛みしめると、むむっ!
これは、山椒の風味……それに僅かに大葉も入っていて粘っこい卵の後味をサッパリと拭い去ってくれる。
大根と蓮根に里芋と絹さやエンドウの入った煮物もシンプルに旨い!
白身魚の入った味噌汁も旨いな!
これは、河豚か!
良い出汁が出ている。
今日のご飯も大満足だ!
「ご馳走様」をしていつもの様に女中を帰し、仕事に取り掛かる。
さて、将軍の手の者が来ているのであったな。
雪之丞は出払っているはずだし、他の忍者に何処へ向かっているのか調べさせ先回りするか。
パンパンと手を叩き、忍者を呼び出す。
普通に出て来たのでちょっと怖い。
「将軍の手の者の先を回り、罠にハメる。
待ち伏せするのに適した場所はどの辺りになる?」
「端から順に新しく出来た施設を見て周っている様ですので、教会か診療所辺りが適切かと」
「それは好都合だ。
診療所へ先回りして待ち伏せをする。
近くまで来たら教えろ」
「御意」
早速診療所へと向かい、ショコラに事情を説明した。
「ワァ♪ 楽しそう!
ショコラはぁ♪
その人を診療所の中へ連れ込んで♪
身動きを取れなくすればいいのねん♪」
「その通りだ。
Lvがお前より高い可能性がある。
敵対せずに眠らせたりして拘束しろ」
「ハーイ♪
ショコラに任せてぇん♪」
Lvも然る事乍ら、将軍の恩恵も絶大な効果を持っている可能性もある。
簡単に引っかかるかどうかは分からんな。
下手を打つと返り討ちにされ兼ねんし、最悪将軍に目を付けられればゲームオーバーもありうる……
慎重に事を済まさねば……
待っている間にスキルを割り振り、武器も性能で選んだ物へと変更する。
たった一人相手取るのに少し緊張して来たな。
一人の町民が俺の横にそっと近づき、「今しがた教会の前を通りました故、間も無くに御座います」と言ってそのまま去って行った。
診療所内にある部屋へと身を潜め、隣の部屋へとショコラが将軍の手の者を通すのを待つ。
二人分の足音……来たか。
壁に耳を付け、小さく聞こえる会話に耳を傾ける。
「渡来人とは珍しい、教会でも異国の方にお会いした。
昨今西治の町では異国との取引が盛んなのであろうか?」
「この町を納めるお代官様は心が広く、私の様な渡来人でもお仕事を頂けるのですよ。
この町へ来て何か目を惹かれる様な物などは御座いましたか?」
「はは、拙者は美人には目が無くてな。
女子の顔ばかりに見惚れてしまっていかん」
「まあ、勿体ない。
この町の景観はとても素敵なんですよ」
「ああ、確かに見事なものだった。
遊郭と言ったか?
あの付近は色々と欲を擽られる」
「まあ、破廉恥ですわね。
本当に女の子の事ばかり見ているなんて」
「はっは、面目ない。
しかし……其方程に目を奪われた女子は一人としていなかった」
「まあお上手です事。
この診療所では気持ちの良い按摩もやっているんですよ」
「ほう、按摩か!
あちらこちらへと行ったり来たりで実のところ体の至る所が凝っておるのでな!
下心など無いので是非ともお願いしたい!」
「それでは横になって下さい。
体の力を抜いて全て私にお任せ下さい」
よし、いよいよ仕掛けるつもりだな。
俺も最悪の場合に備えて戦闘準備を整えておくとしよう。




