12-4 バネッサの断罪 1
「つ、償いって……?」
エリーゼは涙目になり、
宰相は悔しげに口を固く結んでいる。
ちょうどその時。
――バタン!
重い扉が外側から押し開けられた。
次の瞬間、
怒号と金属音が謁見室に飛び込んでくる。
「何をするの!? 離しなさい!
私を誰だと思っているの!?
エリーゼ様の侍女、バネッサ・フレミングよ!
こんな扱い、許されないわ!」
二人の衛兵に両腕を後ろで固く縛られ、
バネッサが引きずられるようにして
姿を現した。
その髪は乱れ、目は激しい怒りに燃えている。
「バネッサ!」
エリーゼが悲痛な声を上げる。
「くっ!」
宰相は見たくもないと言わんばかりに
顔をそむけた。
バネッサはエリーゼの姿に気付き、
助けを求める。
「あ! エリーゼ様ではありませんか!
この無礼な衛兵たちを何とかしてください!」
するとアドニスが一喝した。
「無礼なのはお前だ!
バネッサ・フレミング!
ここは謁見室、陛下の前だぞ!」
その声に、バネッサは初めて
前方にいるアドニスたちに気付いた。
「! アドニス様……それに……あら?」
バネッサの口元に、まるで獲物を
見つけたかのような意地悪な笑みが浮かぶ。
「あ……」
サフィニアの顔が青くなる。
迫力に気押されて後ずさると、
まるでバネッサの視線から
隠すようにアドニスは一歩前に出た。
「あら。どこの誰かと思ったら……
まだ生きていたのね、あなた。
しかもそんな身なりの良いドレスなんか着て」
未だサフィニアの正体を知らない
バネッサの態度は、
どこまでも高飛車だった。
サフィニアの肩が小さく震え、
アドニスはバネッサを鋭く睨みつける。
だがバネッサは、まるで面白い玩具を
見つけた子供のようにサフィニアを
じっと見つめ続けた。
すると宰相が叱責する。
「バネッサ! 陛下の前で無礼な態度をとるな!
我々まで巻き添えにするつもりか!」
「そういうそなたこそ黙るのだ!」
すかさず国王が声を上げた。
「……っ」
さすがの宰相も国王には逆らえず、
黙り込む。
そこへアドニスが口を開いた。
「父上、私にバネッサを裁かせてください」
「うむ、よかろう」
アドニスは再びバネッサを睨みつけた。
「裁き? まさかそこにいる
メイドのことをまた仰っているのですか?
私は伯爵家の者。
言うことを聞かないメイドに
罰を与えて何が悪いのです?」
「サフィニアはメイドではない!
『ノルディア王国』の公爵令嬢だ!
その証拠もある!」
「!」
バネッサの眉がわずかに上がり、
エリーゼと宰相の目が驚きで見開かれる。
「そして我が妹の孫娘……オケアリオン王国の
正当な血を引く王女でもある!」
セレウスが断言した。
「……」
バネッサは少しの間、
顔色一つ変えず無言で話を聞いていたが……。
「……なるほど。つまり、ただのメイドでは
なかったということですね」
後ろ手に拘束されながらも、
肩をすくめてみせた。
「聞け! バネッサよ!
お前はサフィニアを陥れるため、
フットマンたちに命じて森に落とし穴を掘らせた。
そして彼女を落とし穴に落とした後、
その場を去って見殺しにしようとした。
その罪は重い!
よって、お前に流刑罪を命ずる!
監獄島でその一生を終えるがいい!」
アドニスの声が謁見室に響き渡った――




