12-5 バネッサの断罪 2
監獄島――北北西に存在する陸の孤島。
周囲は荒波に覆われ、
1年を通して空は黒雲に閉ざされている。
当然、太陽の光は届くことはない。
吹き荒れる風は冷たく、
体温を容赦なく奪っていく。
島の中央には鉱山がそびえ立ち、
囚人たちは老若男女を問わず、
朝から晩まで鉱石を掘らされる。
少しでも手を止めれば、看守の叱責と鞭が飛ぶ。
この島に送られた者は、二度と生きては出られない。
そんな恐ろしい場所だった――
「監獄島だと!?」
青ざめた顔で真っ先に声を上げたのは宰相だった。
監獄島の存在は、一部の者しか知られていない。
「お、お父様……監獄島というのは……?」
エリーゼが震える声で尋ねる。
するとセレウスが頷いた。
「なるほど、監獄島とはな。
これはいい。
確かに、我が国の正統なる王女の命を
脅かすような真似をした者にはふさわしい場所だ」
「……クッ……」
宰相の額に脂汗が滲む。
その様子をサフィニアは、じっと見つめていた。
(監獄島というのは……そんなに恐ろしい場所なの……?)
一方のバネッサは、
自分のことなのに無言を通している。
「お父様! 監獄島とは、一
体どのような場所なのですか!?」
エリーゼが宰相の腕をつかみ、再度尋ねる。
するとアドニスが口を開いた。
「宰相が答えないのなら、代わりに教えてやろう。
監獄島は重大な罪を犯した罪人たちが送られる島。
荒波に覆われた陸の孤島で、
1年を通して冷たい風が吹きすさび、
草木も生えぬ。
生きてその島から出られることは、
二度とない!」
「そ、そんな……バネッサ……」
エリーゼは涙目になり、
震えながらバネッサを見る。
すると――
「ご安心ください、エリーゼ様」
バネッサはにこりと微笑み、アドニスへ視線を移した。
「監獄島ですか。
何だかとても面白そうな場所ですこと。
そこなら退屈せずに暮らしていけるでしょうね?」
その笑みは今の状況にそぐわないほど明るく、
異様だった。
アドニスは鋭い眼差しで
冷たく言い放つ。
「……あぁ、そうだな。
お前ならきっと退屈しないで
一生を監獄島で終えるとが出来るだろう」
そして衛兵たちに命じた。
「その罪人を連れていけ!
監獄島へ行く船の準備ができるまで、
地下牢に閉じ込めておくのだ!」
「「はっ!!」」
バネッサを確保している衛兵たちは返事をし、
再び彼女を連れ出していく。
「バネッサ!」
謁見室を出て行く直前、
エリーゼが必死に名を呼んだ。
その声にバネッサは振り返った。
そして、にこりと微笑む。
「エリーゼ様。今まで本当に楽しかったですわ。
あなたが泣いたり怒ったりするたびに……
私、とても満たされましたの。
エリーゼ様の侍女にしていただいたこと、
心より感謝申し上げますわ」
「え……? バ、バネッサ……?」
思いもよらないバネッサの言葉に
エリーゼの顔が瞬時に青ざめる。
バネッサは軽く会釈した。
「それでは、失礼いたします」
まるで散歩にでも出かけるかのような足取りで、
彼女は衛兵たちに連行されていった――




