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孤独な公女~私は死んだことにしてください  作者: 結城芙由奈@コミカライズ連載中


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謁見の前兆

 宰相とエリーゼは謁見室を目指し、

急ぎ足で回廊を歩いていた。


「全く……この私に何の報告もなく

謁見室で使者と会っているとは……

一体陛下は何を考えているのだ!」


「アドニス様、酷いわ……

十日ぶりに戻られたのに、

何も知らせてくれないなんて……」


怒りに震える宰相とは対照的に、

エリーゼの顔には悲しみが浮かんでいる。」


やがて二人は謁見室の前に辿り着いた。

王家の紋章が刻まれた重厚な扉の両脇には

衛兵が控えている。


「お勤めご苦労。入らせてもらうぞ」


宰相が扉に手をかけようとした

その瞬間――


カンッ!!


鋭い金属音とともに、

両脇の衛兵が槍を交差させて

行く手を塞いだ。


宰相の眉間に深い皺が寄り、

怒りの眼差しを双方の衛兵に

向ける。


「……これは一体何のつもりだ?」


すると左の衛兵が一歩前に出た。


「申し訳ございません、宰相様。

ただいま国王陛下はご謁見の最中です」


右の衛兵が続けた。


「どうぞお引き取りください」


「な、何だと!? 

この私が誰だか知っていて

そのような口を叩くのか!?

たかが衛兵のくせに生意気な!」


宰相の顔が怒りで赤く染まる。


エリーゼは震えながら父の様子を見つめていた。

今まで穏やかな父しか知らなかった彼女にとって、

この豹変は恐怖そのものだった。


「ですが、なんとおっしゃられても

陛下のご命令は絶対です」


右の衛兵が言い切る。


「どなたであろうと、通すことはできません」


左の衛兵が槍をさらに前へ押し出した。


「ふざけるな!! 

この私を愚弄するつもりか!

いいからそこをどけ! どかぬか!」


宰相は吠え、エリーゼが震えながら袖をつかむ。


「お、お父様……もう、やめて……!」


しかし宰相は聞く耳を持たず、

槍の前にさらに踏み込んだ。


「アドニス様が戻られたのだぞ!?

しかも使者を連れて! 

なぜ私が締め出されねばならんのだ!!」


「う……」


恐怖でエリーゼの目に涙が滲んだ、その時――


ガチャ……


扉がゆっくりと開いて

中からディエゴが姿を現すと会釈した。


「宰相様。

アドニス様より『お通しして構わない』との

許可を頂きました。

どうぞお入りください」


衛兵たちは即座に槍を下げ、

道を開ける。


「ふん!

最初からそうしておればよいものを!」


宰相は怒りを押し殺しながら、

エリーゼを連れて謁見の間へと足を踏み入れた。


――その瞬間、二人は足を止める。


広い謁見室は静まり返り、

空気がピンと張りつめていた。


奥の玉座にはミレア王国の国王が座り、

視線を宰相へ向けている。


その正面には、

アドニスとサフィニアが並んで立っていた。

マント姿のアドニスは真っすぐに王を見据えている。


その隣のサフィニアは

海の光をそのまま纏ったような淡い青の

ドレスに身を包んでいた。


オーガンジーの布が波のように揺れ、

そのたびにドレスに縫い付けられたビーズが

キラキラと光を放っている。


エリーゼの目には、サフィニアの姿が

まるで王女のように見えた。


(な、何……? 

あの銀髪は、もしかしてサフィニア……?

どうしてサフィニアがここにいるのよ!

出て行ったはずじゃなかったの?

それが、あんな……まるで姫みたいな恰好で

アドニス様の隣に立つなんて……)


イヤな予感に押しつぶされそうになり、

動悸が速くなる。


アドニスもサフィニアも、

宰相たちが入ってきても振り向かない。

ただ国王だけを見ていた。


サフィニアの少し後ろには、

見知らぬ老人が立っている。

ただそこにいるだけなのに、

圧倒的な存在感を放っていた。


(……あの老人は一体、何者なのだ……

……なぜか、とてつもなく嫌な予感がする……)


宰相にも、それが何なのか理由は分からない。

だが、彼の本能が警鐘を鳴らしていた。


その時、国王がゆっくりと視線を

宰相に向ける。


「良い所へ来たな、宰相。

ちょうどそなたを呼ぼうとしていたところだ」


「……え? 私を、ですか……?」


宰相はごくりと息を飲んだ――

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