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孤独な公女~私は死んだことにしてください  作者: 結城芙由奈@コミカライズ連載中


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12-1 苛立つ宰相

 午前10時――


「はぁ……アドニス様ったら

本当に一体どこへ行ってしまったのかしら。

もう10日はお姿を見ていないわ。

それまでだってずっと城を空けていたのに……」


窓際のテーブルに座ったエリーゼが、

深いため息をついた。


「何か、お忙しい用でも

あるのではありませんか?」


侍女のバネッサが刺繍をしながら返事をする。


「用事ってどんな? 

大体お父様まで、アドニス様の行方を

知らないなんておかしいと思わない?」


「まぁ、確かにエリーゼ様の

おっしゃるとおりだとは思いますが……」


すると――


「……もう我慢できないわ!」


エリーゼはカップをソーサーに戻し、

勢いよく立ち上がった。


「エリーゼ様? どうなさったのですか?」


「私、お父様の元へ行ってくるわ!」


「え? ですがこの時間は

もう宰相様は執務についていらっしゃいますが……」


「構うことないわ!

お父様はいつだって私を

最優先してくれるのだから!」


「そうでしたね。宰相様が一番この世で

大切にしている存在はエリーゼ様ですから」


バネッサが微笑む。


「それでは行ってくるわ!」


「はい、行ってらっしゃいませ」


エリーゼはヒールを鳴らしながら

宰相である父の執務室へ向かった――



****



「お父様! 聞きたいことがあります!」


ノックもせず扉を押し開けたエリーゼに、

宰相は目を見開いた。


「エリーゼ! どうしたのだ?

いきなり執務室に現れるとは」


「お父様、お尋ねしたいことがあります!」


エリーゼは宰相の言葉を遮り

机へと歩み寄る。


「それは急ぎの用なのか? 見て分かるだろう?

今は仕事中なのだ、話なら後に……」


「はい! 急ぎの用です!」


宰相は娘の剣幕に押され、渋々頷いた。


「わ、分かった。急ぎの用なのだな?

では話してみなさい」


「はい、話というのは他でもありません!

アドニス様のことです!」


「な、何? アドニス様のことだと?」


「そうです! 一体アドニス様は

どちらに行かれているのですか!?

もうここ一月ほど、まともにお城に

いた試しは無いではありませんか!」


宰相はため息をついた。


「だから、何度も言ったであろう?

この私自身もアドニス様がどこへ

行かれているのか聞かされていないのだよ。

陛下もご存じないのだから」


だが実際は違う。

国王に尋ねた時、「宰相は知らずとも良い」と

切り捨てられたのだ。


(最近の陛下はどうしたというのだ……?

以前は私の駒のような存在だったというのに……)


宰相は苛立ちを押し隠しながら続けた。


「……エリーゼ。お前が心配する

気持ちは分かる。

だが、アドニス様は王太子だ。

何か大事な任務に就かれているのかもしれん」


「任務? そんな話、一度も聞いていません!」


「だから、私も知らされていないと

言っているだろう」


宰相は机を軽く叩き、苛立ちを露わにした。


(アドニス様が姿を消してから、陛下はまるで別人のようだ……)


「お父様……本当に

何もご存じないのですか?」


「……ああ。だが、心配するな。

アドニス様は必ず戻られる。

何しろ、お前の婚約者なのだからな」


その瞬間――


――バンッ!!


勢いよく扉が開き、若い兵士が駆け込んできた。


「何事だ! 慌ただしい! 見ての通り今

取り込み中だというのが分からんのか!」


宰相の叱責をものともせず、兵士は続ける。


「さ、宰相様! 大変でございます!」

アドニス様が……アドニス様が城に

お戻りになりました!

ただいま国王陛下と謁見中であります!」


「……なんだと!?」


宰相は立ち上がった。


「まぁ! とうとう戻られたのね!」


エリーゼは、ぱっと表情を明るくした。


しかし宰相の顔には、

喜びよりも苛立ちが浮かんでいた。


(いったいどういうことなのだ?

アドニス様が戻られたのなら、

この私にも話を通すべきだろう!)


兵士はさらに口にした。


「それだけではありません!

アドニス様は使者を連れて戻ってこられたのです!」


「何!? 使者だと? 

その者たちはどこの者だ!」


「も、申し訳ございません……そこまでは……」


肩を落とす兵士。


「もうよい! こちらから参る!

我はこの国の宰相、

当然立ち会うべき立場にあるのだからな!」


「私も参ります!

私はアドニス様の婚約者ですから!」


エリーゼは胸に手を当て、強く頷いた。


「よし、ならば共に参るぞ」


「はい、お父様」


2人は急ぎ足で謁見室へ向かった。


そこで何が待ち受けているのか、思いもせずに――



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