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孤独な公女~私は死んだことにしてください  作者: 結城芙由奈@コミカライズ連載中


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11-33 40年ぶりの悲願

 腕を組んで歩き出すと

すぐにアドニスが尋ねてきた。


「サフィニア。

昨夜はよく眠れたかい?」


「い、いえ。その……緊張していたので、

あまりよくは……」


国王にアドニスとの結婚の許可を

得ること。

そして昨夜アドニスと交わした

キスの感触が忘れられないことも

重なっていた。


(私……昨夜、アドニス様と初めて

キスをしたのよね……)


チラリと上目遣いでアドニスを

見上げた瞬間。

サフィニアはドキリとした。


(え!?)


アドニスが優しい笑みを浮かべ、

じっと見つめていたからだ。


「あ、あの? アドニス様……?」


「……良かった」


「え?」



「俺もそうだよ。昨夜は緊張のあまり、

ほとんど眠れなかった。

サフィニアも同じだったんだね」


「アドニス様もですか?

 意外です……」


王太子であるアドニスは、

これまでにも緊張する場に

何度も立ってきたはず。

慣れていると思っていた。


「本当だよ、嘘じゃない。

何しろ結婚の許可を得る話をするのは

初めてだからね」


アドニスはサフィニアの肩に手を回し、

引き寄せると額にキスをする。


「ア、アドニス様! な、何を……!」


サフィニアの顔がますます赤くなる。


「ハハハ。やっぱりサフィニアは可愛いな。

……好きだよ。愛してる」


「!」


「愛してる」と言われたことがない

サフィニア。

顔を真っ赤にしながらも返事をした。


「わ、私……もアドニス様のことを……

あ、愛しています……」


まさか朝からこんな言葉を口にするとは

思わず、サフィニアは恥ずかしさのあまり

俯いた。


「ありがとう、サフィニア。

……執務室の前に着いたよ」


「え?」


顔を上げると

前方に二人の近衛兵が立っていた。

アドニスとサフィニアが近づくと、

近衛兵たちは同時に姿勢を正して

胸に右手を当てて深く礼をした。


「アドニス殿下、サフィニア様」


「ようこそお越しくださいました」


アドニスは頷き、二人を交互に見る。


「国王陛下に大切な話があって伺った。

お目通りしたい」


「はっ」


一人の近衛兵が扉に手をかけ、

ゆっくりと開け放つ。


「ありがとう」


「ありがとうございます」


二人は礼を述べ、執務室へ足を踏み入れた。


中では国王カイロスが書類に目を通しており、

その傍らには偶然居合わせた

セレウスの姿もある。


二人は揃って深く礼をすると、

サフィニアが先に口を開いた。


「おはようございます、国王陛下。

先王様」


続いてアドニスも丁寧に頭を下げる。


「おはようございます。

国王陛下、セレウス殿」


「おぉ! サフィニアに

王太子殿下ではないか」


セレウスが真っ先に声をかける。

カイロスも顔を上げ、言葉をかけてきた。


「これは都合が良い。

ちょうど2人に話があったところだ」


「話……ですか?」


サフィニアが首を傾げる。

するとカイロスは身を乗り出した。


「あぁ。だがその前に、

話を聞かせてもらおうか?

このように朝早くから

一緒に姿を現すからには、

大切な話があるからだろう?」


セレウスは無言のまま、

2人を見つめている。


「は、はい。あの……」


サフィニアが口を開こうとしたとき、

アドニスが右手を少し上げた。


「いいよ、サフィニア。自分で言う」


「アドニス様……」


するとセレウスがアドニスに視線を移す。


「それでは、『ミレア』王国の王太子殿下よ。

用件を聞かせていただこうか?」


「はい」


アドニスは真っすぐ顔を上げ、

よく通る声で告げた。


「国王陛下、セレウス殿。

私はミレア王国の王太子として、

サフィニアとの婚姻を正式に願い出るため、

本日こうして参りました。

サフィニアがオケアリオン王国の養女となり、

いずれ王女となられることも承知しております。

それでも……私は彼女を生涯の伴侶として迎えたい。

どうか、この結婚をお許しください」


執務室がシンとする。

サフィニアは胸の前で手を握りしめ、

セレウスとカイロスの反応を伺う。


(お二人は結婚の話をどう思われるのかしら……)


緊張しながら見つめていると

最初に言葉を発したのは、

前国王セレウスだった。


「……そうか。とうとう

40年ぶりにその言葉を聞くことになるとは」


歳月の重みが、声に滲んでいる。


「本来ならば、我が妹ナディアは

ミレア王国へ嫁ぎ、

両国は王族同士の縁で結ばれるはずだった。

だがナディアは己の心に従い、

愛した男と生きる道を選んだ。

その結果、オケアリオン王国は

ミレア王国に負い目を抱えたまま、

40年もの時が過ぎてしまった」


セレウスはサフィニアを見つめ、

目を細める。


「先王様……」


言葉を詰まらせるサフィニア。


「だが……サフィニアと

アドニス殿下が結ばれるのなら、

その負い目は帳消しになるな。

そなたた達のおかげで」


そしてアドニスに視線を移す。


「アドニス殿下。

私はこの婚姻を心から認めよう」


(先王様が……許して下さったわ……!)


サフィニアの胸が熱くなる。

続いて、カイロスが立ち上がる。


「……私も同じ思いだ」


彼はサフィニアに優しい視線を向ける。


「サフィニア。

我々はそなたがこの国の王女になることを

望んでいる。

だが王女である前に――

我らの大切な家族だ」


そして次にアドニスへ向き直る。


「アドニス殿下。

昨日の晩餐会でも、

その誠実さはよく伝わった。

サフィニアを大切に思っていることも、

薄々感じていた」


「国王陛下……」


「オケアリオン王国国王として、

そしてサフィニアの親族として

この婚姻を許可する。

四十年越しの縁が、ようやく結ばれるのだな」


「ありがとうございます!」


「本当に……ありがとうございます」


アドニスに続き、サフィニアも

声を震わせながら会釈した――

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― 新着の感想 ―
先王と現王が物分かり(あるいは諦め)良くて、返って心配になる。 傍系が健在なのかもしれないが、その男子がサフィニアに一目惚れ(←重要)して「私と結婚して、この国の王妃に(一目惚れする前は王位から逃げ…
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