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チュートリアルガチャへこめられた祈り……そして死亡フラグ

 チュートリアルガチャ。それは最初に与えられたチャンス。初めての出会い。そしてリセマラの始点となるべき場所……。


 私はチュートリアルガチャをいくつも潜り抜けてきた猛者である。一目ぼれしたあの子を得るためにどれだけの努力を重ねてきたか、考えることさえ億劫なほどだ。



 しかし、マジ恋において、私がリセマラをした回数は0。0だ。


 これがどのような意味をもつかわかるだろうか?

 そう、ひとめぼれをしたのである。このチュートリアルガチャで。


 あれは私がまだバイだった時のことだ。

 イケメンと美少女がいっぱいいるソシャゲがリリースされるという言葉につられた私は、事前登録をしっかりと済ませ、そしてリリース日を迎えた。


 あまり期待をしていなかったし、軽くキャラを流し見ただけだった私は、あまりにも罪深きことにアリーシャちゃんの存在に気付いてはいなかった。むしろ推し声優さんがやっているからとセレスティーナに狙いを定めていた。


 ああ、罪深き私をどうかお許しください。神よ。


 ……そして回したチュートリアルで、私は出会ってしまったのだ。あの、あまりにもかわいい声を持ち、愛らしくほほ笑むアリーシャちゃんに!



 であるからして、私にとってのチュートリアルガチャはとてもとても大切なものになったのだ。輝かしき出会いの物語である。思い出すだけで涙が……おお神よ……。


「おぬし、なぜ泣いておるんじゃ……?」


 ……もしこれがチュートリアルガチャと同じシステムなら、ワンチャンアリーシャちゃん引けるんじゃね……?


 それはあまりにも天才的ひらめき。


 私は天才かもしれない……。

 早速私はガチャの準備運動に入ることにした。


「おぬし何をやっているんじゃ……」


 ガチャにはいろいろな宗教がある。空飛ぶスパゲッティモンスター教や舞教、最近だと左乳首をつかって回す左乳首教や、逆立ちをする宗教などがある。トイレを清掃するトいうものもあった。

 私はいろいろな宗教をミックスした邪教だ。


「お、おぬし……?」


 まず丁寧にストレッチをする。

 指を念入りにほぐし、血流を流すことによって気の滞りを防ぐ。

 アリーシャちゃんをしっかりと頭に思い浮かべ、テーブルから強奪したペンで運命線をしっかりと書き込む。

 ぐるぐると頭を回し、神に感謝を捧げたあと、本番が始まる。


「ビスクドールちゃん、封筒を、ください」

「あ、あいわかった」


 私の真剣な目につられたのか、ビスクドールちゃんも硬い表情で封筒を手渡してくれた。

 封筒には、十枚のカードが入っているはずだ。


 種類は2種類。キャラクターカードとウェポンカード。ウェポンカードは属性ランダムで、どちらのカードもレアリティが1から5まで用意されている。

 チュートリアルガチャで確定しているのはキャラクターカードが1つ入っていることと、レアリティ4以上が必ず入っていることだ。


「……ふぅ」


 糊付けされていない封筒の口に手をやって、深呼吸をする。

 狙うはアリーシャちゃん一択。

 しっかりと、先ほどよりも鮮明に彼女の姿を思い浮かべ、軽やかにステップを踏む。


 私は震える声でアリーシャちゃんのソロ(先日発売された。もちろんリリースイベントの参加券目当てで十数枚ほど積んだ)を歌いながら、封筒を開いた。


 一枚目、ウェポンカード(武術)、殴る。レア1

 二枚目、ウェポンカード(回復)、ショートキュア。レア3

 三枚目、ウェポンカード(武術)、キック。レア1

 四枚目、ウェポンカード(武術)、突き(短槍突き)。レア4


「……まだ、まだだ……」


 五枚目、ウェポンカード(魔術)、ファイアボール。レア2

 六枚目、ウェポンカード(魔術)、ワンダードリーマー。レア5

 七枚目、ウェポンカード(魔術)、サティスファクション(盾)。レア4

 八枚目、ウェポンカード(回復)、いたいのいたいのとんでけ。レア1

 九枚目、ウェポンカード(魔術)、サンダーバード。レア3


 ここまでキャラクターカードなし、か。

 私は一度手を止め、しかし歌い踊ったままで思考を巡らせた。


 ここまでで、ウェポンカードでならレア4以上が4枚も出ている。クソゲーの闇ガチャにしては上出来だ。つまり最後のキャラクターカードのレアリティには期待できないと思っていいい。

 しかし、しかしだ、レアリティにこだわらなければ何も問題はない。

 今回の目指すべきゴールは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 私は軽く息を吐き、歌声をさらに高らかに響かせながら最後の一枚を手に取った。

 それは、それは虹色の輝きだった。


 このゲームでは、レア3が銀、レア4が金、レア5が虹色のカードという特別演出を持つ。

 つまり……つまりこのカードは、レア5の……キャラクターカード……!!


 頬を涙が伝うのを感じる。

 私は、私は祈りを込めてカードをひっくり返した。なんということだ、そこには……!!


 ウ  ェ  ポ  ン  カ  ー  ド   


 回復カードのレア5、死んでも生き返ることができるレベルの超絶やべーカードを目にして、私は悲しみと混乱を隠すことができなった。


「な、なんで、なんで……?」

「ど、どうしたんじゃ先ほどから……おぬし大丈夫か……?」

「そんなことはどうでもいいんですよぉッ!!キャラカードは、キャラカードはどこに行ったんですか!?私のアリーシャちゃんは!?」


 ビスクドールちゃんの華奢な肩を掴んで、私は叫んだ。


「なんでウェポン一択なんですか!!!!!クソゲーかよ!!!」

「う、うぇぽん?きゃら?」

「なんで武器カードしか出てこないのかって聞いてるんですよぉ!」

「どういうことじゃ……?」


 思わず涙目になるビスクドールちゃんの声は震えていた。

 少しだけ我に返った私は叫びそうになる声を抑え、できるだけ冷静にと努めながら聞く。


「アリーシャちゃんが出ないのはなんでですか……?」




「は?封筒に人が入るわけなかろう……?ありーしゃ?とやらはどの封筒にも()()()()()()()……?」

「そっかあそもそもはいってないのかあ……あああああ……アア……」



















 気が付いたら敵を殲滅中だった。

 ウェポンカード・サンダーバードをちぎり、雷でできた無数の鳥で敵を打ち抜く。

 サティスファクションと書かれた札を空に翳せば、満足せざるをえない量の盾が空中にランダムに浮かぶ。隙間なくかつ階段のように並べられたそれを蹴って進み、上空からファイアボールを死ぬほど落とした。


 圧倒的である。

 正直雑魚戦とかいくらでも乗り越えてきたし、妄想のイメトレはばっちしだしで中二病かってくらい体が動く。いやもうね、最高。


 ガチャでアリーシャちゃんさえ出てればね。最高でしたよ。


 隣ではドン引きした顔のもっさりチビが未使用のカードを握りしめて震えている。

 一体私は何をしたんだ……?このこぶしにこびりついた緑色の液体は……?


 まいっか。





 ちぎれた3枚のカードを苛立ちに任せて地面にたたきつけてみれば、ふわりと溶けるようにして消えてしまった。

「わーお、マジカァル」



 なにこれヤバいね、アリーシャちゃんが出てこないくらいやばいわ。と隣のチビに話しかけようとすると、得も言われぬ微妙な顔で見返されたので目をそらした。

 チビお前ちっこいし前髪が異様に長くてもっさりして見えるけど口元はイケメンだな!強く生きろよ!とか言い出せる雰囲気じゃない。


 とりあえずこれどうしよっかな、と余った7枚のカードをひらひらしてみる。


 私は魔術適正しかない、つまり魔術カードしか使えないから、残りの回復と武術カードはただのゴミでしかない。私が持っている限りは。


 チビの属性ってなんだっけ……?それによってはそのカードを渡しちゃうのもアリだよね。


 口元に指をあててうぅんと唸る。あと1属性分どうやって捌くか……。そこかで交換できたらいいなあ。

 まあでも今は学校に帰るのがさきかな、ここ、敵が流した緑色の血でべたべただし。


 そっと立ち上がった私とチビの胸元で、ぴろぴろぴろと音が鳴った。

「えっ何これ?」

「……さっき、校長にもらった……つうしんき……」

「ありがとう……喋れたんだ……」

「……うん」


 チビがシャベッタアアアアアアアアアアアアア!!!


 わあ、とびっくりする私を置き去りにして、通信機?からビスクドールちゃんの声が流れ出した。

 わースピーカー越しでもかぁわいい~!


『こちら校長じゃ。二人とも、聞こえておるか?』


 ……ビスクドールちゃん校長先生だったんだあ。

 スピーカーから流れる声は焦っているようだった。上ずってかすれた声の後ろで、ドタバタと騒ぐ音も聞こえる。


『そちらにレベルSの……じゃわからんの。と、とにかく強いメテオ……いや、敵が向かっていることが分かったんじゃ!すぐにそこから逃げるんじゃ!』

「……ちびくん。もしかして私たちピンチ?」

「ち、ちび……?」


 顔を見合わせる私たちをよそに、通信機から伝わってくる切迫感は尋常ではなかった。

 それはそうだ。レベルSといえば、レベルカンストしたレア5キャラにレア5ウェポンカードを突っ込めばまあ勝てるっしょレベルである。

 今の私たちには太刀打ちできない相手だ。


『すまぬ、妾は別の現場に行かねばならぬゆえ、そちらに優秀な援護を送る。そやつらが来るまででいい、逃げてくれ……!』


 すまぬの、と繰り返した後、通信機はぶちりと途切れた。


「ど、どっちに逃げればいいと思う?」

「……勘、で……?」




 えへら、と笑うチビの後ろから、のっそりと大きなメテオが、あまりにも静かに顔を出した。


【次回予告】

>>>実☆質☆大☆勝☆利<<<

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