もしかしてチュートリアルですかこれ
短いです~
「おぬしの適正は回復じゃの~!わが校には回復の特性もちが少ないからの。歓迎するぞ」
「……」
なんてことだ……私はついに推しのいる次元にたどり着けたというの……?
わたしは静かに顔を覆い、ゆっくりと地面にしゃがみこんだ。
「なんじゃおぬし照れよってからに。愛いやつよの~」
「……」
これも愛のなせる業ね……。アリーシャちゃんと同じ次元とか尊すぎて私死ぬんじゃない?やばいめっちゃ空気瓶に詰めて保管したい土をガラスケースに入れて飾りたいこの世界のすべてがとうとい……もう夢でもいいです……。
「……」
「はっはっは、こやつめこやつめ」
「いや会話成り立ってなくないですかそれ」
真顔で微動だにせず虚空に視線を投げるシノハラ?シノノメ?とかいう男と、何も発していない彼に楽し気に、あたかも会話しているかのように言葉を投げかけるビスクドールちゃんの様子がヤバすぎて話しかけてしまった。くやちい。
「は?成り立ってるんじゃが?」
「SNSアプリの煽り厨みたいな顔やめてもらっていいっすか」
「なんじゃそれは……」
不可解な!という顔とおぬしそんなのもわからんのかとでも言いだしそうなドヤ顔はかわいらしいが、それゆえにとてもこちらの怒りをあおってくる特別仕様だ。
「おぬし聞き取れぬのか?」
「いや聞き取れるも何もなにも発してなかったじゃないですか……」
「えぇ……」
「なんすかその顔かわいいなクソ」
ビスクドールちゃんは不思議そうに首を傾げた。「ありがとう……?」
「ところで私の属性はなんですか」
「おぬし話題転換雑すぎるとよく言われぬか?」
ここまでくるとビスクドールちゃんも表情の基本装備が「怪訝」「ジト目」「半笑い」に固定され始めてくる。
やるの~?みたいな雰囲気を出しつつも大きなハート形の水晶を懐から取り出し、どんと机に置く。
「じゃあその水晶が赤くなくなるまで指で触れていてたも」
私みたいな庶民がふれてもいいんですか……!?と聞きたくなるくらいに透き通る水晶が美しく静謐な気をまとっている。
ちょんと指で触れて見せると、あっというまに赤が抜けて青い光がふわふわと踊っていた。
「魔術だねえ。しかも珍しいことに攻撃魔法への適正があまり高くない。れあ、じゃの」
ビスクドールちゃんはにんまりと笑って、ぐりぐりと私のほっぺをつついてきた。
ロリにほっぺをつつかれる。最高に言って最高です。
「……二人には、聞いてほしいことがある」
ビスクドールちゃんはすっと立ち上がり、にこりとほほ笑んだ。
「おぬしたちにはこれからの、友達と、あるいは恋人と組んで敵を倒して欲しいんじゃよ。
いうなれば野生動物のようなものじゃ。害獣駆除をしてほしい」
「がいじゅうくじょですか」
「うむ。その対価、報酬として、妾たちはおぬしらに教育を与えよう」
バイト代が教育とは、なんだか不思議な気持ちになるものだ。
私はこつこつと椅子の足をけろうとして、その瞬間に思い出した値段にすっと気が遠くなる。
私が貢ぐのは推しだけである。椅子は未知数すぎた。
「……え?」
ふとビスクドールちゃんの目の色が物理的に変化する。
あっけにとられる私を置いて、彼女はふわりと目を閉じた。彼女の付き人のような影がそっと紅茶を注ぐ。
「……あいわかった」
ぱち、ぱちり。
二度瞬きをした彼女は、目の色を赤く戻してにっこりと笑った。
「すまぬが決断をしてほしいんじゃ。この近くに害獣が出たらしくての。せっかくだから倒してきてみて欲しいんじゃ。無理にとは言わぬが」
遠隔からの情報でも受けたとったのか、彼女はふわりと優しい笑顔のままこちらを見る。
「べ、別に対峙するくらいは大丈夫ですけど」
「ありがとう!」
ぱ、と喜色を浮かべた彼女が嬉しそうに大きな封筒を取り出した。
「では、君たちの門出にこちらの護符を渡そう。
きっとおぬしらの役に立つであろう。十枚ほどしか渡せぬがの」
「チュートリアルガチャだああああああ!!!!!!」




