どどどどど、どっきりじゃない……だと!?
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さて、校内である。
イケメン二人に囲まれて、校内を闊歩しているのである。
校内自体はマジですごい。このドッキリのベースとなっているだろう「魔法学園で恋しよっ♡」略してマジ恋には二つの学校が出てきて、プレイヤーは初めに選んだ学校をベースとしてゲームをプレイすることになるんだけど……わかりにくい?そうだな。もう少し詳しく掘り下げよう。
マジ恋の基本的なプレイ方法をまず整理しよう。マジ恋は、ガチャでゲットしたキャラクターでチームを組み(あるいはソロで)学校周辺に出没する「ラブ★メテオ」という、こっのっ上なくアホそうなネーミングのエネミーを討伐するゲームだ。ラブ★メテオを倒すと、ラブゲージというキャラクター→プレイヤーへの好感度がぐぐんと上がり、チームを組んでいれば、チーム同士での親愛度もぐぐんと上がる。この好感度を溜めていくギャルゲーみたいなものなんだよね。
マジ恋の中には2つの高校があって、一つは私が今いる「ミネストロ学園」というお金持ち~お嬢様~お坊ちゃま~~な学園。もう一つは「スパカッチ高校」という庶民的な高校だ。各学校には男女3人ずつの合計6人ずつキャラクターが所属していて、一定のレベルになるまでは最初に選んだ学校の所属キャラクターしか使えないのだ。
私?もちろん使い放題ですけど?何か?
……ごほん。とにかく、とにかくだよ。このセットはとてもミネストロ学園らしさにあふれている。
ゲームでのスチルはもちろん再現されている(多分)。赤いカーペットは丈こそ学園らしく短いものの、ふわふわしていて足音が恐ろしいほど吸収されるし、天井には控えめなサイズのシャンデリアがきらきらと光を放っている。壁に掛けられた絵画はよくわからないけど格式高そうなもので、薄暗いと思うでしょう?でも窓は大きくて光が大胆に入って、すごく明るいんだ。絵画に当たらなように緻密に計算されているのがみてすぐにわかる。
1ドッキリにお金をかけすぎではないだろうか……?
こんなので視聴率とれるんですかね……おばちゃん心配だわ……
ふう、とため息を吐くと、先ほどのイケメンがさわやか笑顔で振り返る。イケメンと会話していた謎のもさい男も意外と軽快な動きで振り返る。
―――そう、二人である。
みなさんはお気づきだっただろうか。ファーストエンカウント時のイケメンの言葉を。
彼はこう言っていたのだ。君たち二人……と。
わかりにくい?覚えてない?
そうかそうか。ではここでリプレイしてみよう。
きゅるきゅるきゅる
「やあ、初めましてレディ。今日から君たち二人はこの学園の生徒と――」
きゅるきゅるきゅる
そう、二人だ。
私ともうひとりいたのである。全く気付かなかったけど、いたのである。
というわけで、私たちは校内で3人、ぐるぐると案内をしてもらっていたところである。
左前方には光り輝く金髪の高身長、右前にはもっさりした長い前髪の低身長。
バランスがいいのか悪いのかいまいちわからない組み合わせである。
女の子しか育ててなかったから男キャラの名前もなにも知らない身としては、お前ら一体誰なんだ……という気持ちしかない。男には興味がないので……。
とりあえず、女の子を発見したら即話しかけられるよう、男どもとおしゃべりなんかしてそのタイミングを見失わないよう、私は彼らの数歩後ろを歩くことに決めた次第である。
うむ。
うーむ。
しかし夕方だからだろうか、他に生徒は見当たらない。
「ミスター・シノノメ、レディ・セレスティーネ。ここが今日案内する最後の場所だ。入ってくれ」
あのちっこいひとシノノメって言うんすね。……っていやそうじゃなくて。
「最後ですか?」
「ああ、もう食堂も寮も保健室も寄っただろう?さすがに疲れただろうし、残りは明日案内しようと思ってね」
「あ、ありがとうございます……?」
不覚ッ!!
圧倒的不覚ッ!!!!
女の子探しに必死になりすぎて説明を一切聞いていなかったでござる!!!
早速ピンチの予感に打ち震えながら、まあでもきっとここでどっきり大成功~!ってやるんでしょ!じゃあいっか!と思考を彼方へポイして部屋に踏み込んだ。
自慢じゃないけど、私の長所といえば後先考えない短絡的で変にポジティブなところなのだ。歴代の彼女に言われたからここだけは自信がある。
ふふん!
さて、部屋の中をみて、私のテンションは否応なく上がっていった。
「かかかかっかか、かわいい美少女おるぅ……!!」
そう、美少女が!いたのだ!
150に届いていないくらいの小柄で華奢な体をモスグリーンのローブで覆い……それだけでもうかわいいのに、さらに小さな頭の中にはまんまるいルビーのような瞳が煌いている。薔薇色の頬にかかるふわふわのロングヘアは銀色で、まるでビスクドールのように、すごく、すごくすごくかわいい……そんな生き物が、自分の身体よりも大きな杖を持ってどや顔をキメていた。
「お付き合いを前提に結婚してください……!」
「……面白いおなごよの」
はっ体が勝手に……!
とっさに跪いた格好のまま、にへりと笑いかけてみる。お菓子すきかな?かわいい。
ビスクドールちゃんはぱっちんぱっちんと瞬きをすると、私の頭をするする撫でてくれた。
反射的にほわりと熱を持つ頬を抑えてうっとりと見上げる。下から見てもかわいい……!
「すまぬが妾はもう夫がおるゆえな……」
虚無になった。
「さて、気を取り直していきましょう!それで?ここでは何をするんですか?」
涙と鼻水でどぅるどぅるになった8枚目のタオルを部屋にいたメイドさんに引き取ってもらいながら、私はにっこり笑顔でピースをキメた。
「……まあ、よかろう」
胡散臭そうな目でこちらを流し見てから、ビスクドールちゃんは話始めた。
「この部屋ではな、ぬしらの特性を見る」
「特性っすか?」
「ぬしは言葉遣いをどうにかした方がいいの。
……特性とはな、ぬしらが使いこなせる武器のことじゃて」
言うや否や、彼女はばらりとあめ色に磨かれた木製のテーブルにカードをばらまいて見せた。
トランプのような手のひらサイズで、でもトランプよりも重厚なデザインのその山が、きらきらとシャンデリアの光を反射する。
「属性は大きく分けて3つある。武術、魔術、回復術じゃ。
偶にすべてを使えるものがおる、しかし基本的にはまあ、一人につき一つの特性が出るの。
でな、特性も持つものはその特性に類する技を使うことができるんじゃ。この護符を使っての」
大まかに三つの山に護符を分けて見せて、ビスクドールちゃんは得意げに胸を張る。
「その威力を増幅するのがこの増幅器じゃ」
ビスクドールちゃんは傍らの大きな杖を指でぱちりとはじいて見せた。
「妾の特性は「魔術」じゃ。防御よりではあるがの、やろうと思えばなんでも使えるぞ」
「おおお……!」
マジ恋では、ガチャで出たスキルカードをキャラクターの持つスロットに入れ、その技と装備した武器で戦うことができた。キャラごとに属性があることといい、ゲームそのまんまなシステムに感動してしまう。どっきりってすごい!
「……少し実践して見せようか」
おつきの男に杖を渡し、どっこらせと彼女が立ち上がる。手にはきらきらのカードが一枚。
「まずは杖なしで実践してみるの。……『小さな炎』発動」
言うなり彼女がべりっとカードを破って見せる。破れたカードのすぐ上に、ほわりと小さな火の玉が浮かんだ。
「ファッ!?」
火の玉である。
なんのトリックであろうか。
火の玉である。
混乱する私をよそにビスクドールちゃんは杖を装備した。片手で持てないのか、杖を抱くように持つ姿が愛らしい。
「では次は杖ありで」
器用にぺりりと破れたカードのその真上で、一メートルほどの炎が浮かぶ。
絵にかいたようなオレンジ色の、しかもなぜか近くなのに熱を感じない。ワイヤ―も見えないし投影機も見えない。部屋にはなんの変哲もないオカルティックな調度品だけ。思わず頬っぺたをつねってみたけれど、かすかに揺れるそれは消えない。
「どうじゃ?驚いたか?」
「……つかぬことをお伺いいたしますが」
どや顔のビスクドールちゃんがほっぺたをつやつやさせる。なんでもこたえられるよ!と言わんばかりの愛らしフェイスである。
「もしかしてあの、これってどっきりじゃなかったり……?」
「どっきり?」
あっこれドッキリじゃねえわ
ぽかんとさくらんぼのようなつやつやの唇を半開きにする彼女に、私は天を仰いだ。




