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第0078撃「メタ氏、ゴジラと化す!!」の巻


平成4年1992年、5月、高校1年の1学期。


いよいよ、

初夏の汗ばむ季節になりました。


週に二、三日は、

カケル――七菱翔(仮名)か、

甲村健一(仮名)の家へ遊びに行っていました。


甲村の部屋の棚や、その上の空間には、

UFOキャッチャーで獲得したらしき、

開いた手のひらほどのサイズのぬいぐるみが、

所狭しと並べられていました。


妙にメルヘンな部屋です。


しかし当の本人は、

しきりに鼻筋を上下になぞっていました。


ああ、この男、

鼻を高くして立体的な顔立ちになりたいのだな、と、

小生にはすぐ分かりました。


甲村は、

M学院高校の受験に失敗し、

大阪市内最凶との呼び声も高い、

公立の上淀高校(仮名)へ通っていました。


小生は最初、

彼が虐められ、

パシリのように扱われてはいないかと、

少々案じていました。


ところが。


当人はどこ吹く風。


その根性たるや、

むしろ見上げたものでした。


“喧嘩上等”の空気が渦巻く校内で、

いつしか四天王の一人として数えられるほど、

堂々とのし上がっていたのです。


部屋のテレビでは、

日清カップヌードルのCMが流れていました。


原始人がマンモスに追いかけ回され、

「hungry?」という声が響いています。


甲村はふらりと台所へ向かい、

当時発売されたばかりの「ラ王」に湯を注ぎ、

自分の分だけ持ってきて、

ズルズルと啜り始めました。


小生は普段、

手土産を持参して訪れているわけでもないので、

腹が減っていたとしても、

「おれのぶんは?」などという図々しい発言は、

とても出来ませんでした。


そのときでした。


甲村が、

煙草を吸うわけでもないのに、

カチリ、とライターを鳴らしました。


火を点けたかと思うと、

そこへキンチョールの殺虫剤を噴射したのです。


瞬間。


炎が、

ボウッ!と火炎放射のように噴き上がり、

小生の眼前をかすめました。


もはや、

メラゾーマ級です。


彼はそれを面白がって、

何度も繰り返しました。


「おい、ボンクラ! やめろや!」


小生は半分ふざけるような調子で、

甲村の苗字をもじって言いました。


すると彼が、

急に真顔になって訊き返しました。


「いま、なんて言った?」


「やめろボンクラって言ったんや!」


次の瞬間。


彼の拳が、

小生の頬へ飛んできました。


さらに立ち上がった小生の顔面へ、

再び拳が叩き込まれます。


そこで小生は、

まるで拳による衝撃波でも受けたかのように、

あえて大げさに、

後方へ三メートルほど吹き飛びました。


そのまま押し入れの襖へ激突し、

見事、襖を真っ二つにへし折ってやったのです。


当然ながら、

尚更怒る甲村。


さらに殴りかかってきます。


しかし小生は、

彼へ反撃するかわりに、


「クソーッ!」


と叫びながら、

腰を据えて壁を殴りました。


壁は、

べこんっ、という嫌な音を立て、

直径三十センチほど凹み、

中央には立派な穴が開きました。


〈甲村よ!

さあ、どんどん殴ればいいさ!


おまえがおれを殴るたび、

ミサイル攻撃を受けてのたうち回るゴジラのように、

おまえの部屋を破壊し尽くしてやる!


おまえがおれを殴れば、

崩れていくのは、おまえ自身の部屋なんだぜ!〉


とはいえ、

甲村の理性も、

もはやブレーキが利かなくなっていました。


またしても殴られっぱなしの小生は、

「今日から俺は!!」

「カメレオン」

「疾風伝説 特攻の拓」など、

不良漫画の全巻がぎっしり詰まった書棚ケースへ、

頭から突っ込んでいってやりました。


ガラス窓は砕け、

家具類も次々と使いものにならなくなっていきます。


もはや喧嘩というより、

怪獣映画の撮影現場でした。


やがて、

彼の部屋から鳴り響く異常音に気づいたご両親が、

慌てて飛んできました。


「健一! なにやっとるんや!」


彼の父親が、

ようやく甲村を制止しました。


くちびるを切り、

血まみれになった小生。


そして、

もはやリフォームが必要と思われる甲村の部屋。


なんとも後味の悪い、

しかし妙に記憶へ焼きつく午後でした。


翌日。


自宅のインターホンが鳴りました。


現れたのは、

甲村の母親でした。


彼女は、

ただひたすら頭を下げ、

何度も謝っていました。


その後しばらく、

小生と甲村が電話で話すこともありませんでした。


何日空いたのか、

もう覚えていません。


ある日。


マンション地下のショッピングセンターで、

ばったり甲村と鉢合わせしました。


「ちょっと買い物、一緒に見に行こうや」


どちらが言い出したのかも覚えていません。


けれど気づけば、

それまでの大騒動など、

まるで最初から存在しなかったかのように、

再び交友が始まっていたのでした。


槇原敬之「もう恋なんてしない」(1992年)

YouTubeで視聴する https://youtu.be/naz0-szzYXk?si=VMU0XpgbMaMwd9W4


続く。果てしなく続く……。

(まだまだ続くよーっ!お楽しみに〜!)



いつもお読みくださり、

無限の無限のありがとうございまする☆

ブックマーク(フォロー)していただけますと嬉しいです。

では、ご氣元よう‼️

( ⸝⸝•ᴗ•⸝⸝ )੭⁾⁾


↓過去の自叙伝も、

読んでいただけますと幸いです。


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