第0073撃「メタ氏、カケルの辞書を見くびる!!」の巻
平成4年1992年、4月、高校1年の1学期。
あたたかい風に、満開の桜の枝がゆれると、
どこからともなく、メロディーが聴こえてくる——
そんな季節でした。
小生は、芝嶋中学(仮名)を卒業したあとも、
カケル(七菱翔・仮名)の家へ、ちょくちょく顔を出していました。
部屋に入ると彼は、ラジカセの端子にマイクをつなぎ、
GAOの「サヨナラ」を録音したカセットを流しながら、
まるで小生に聴かせることが使命であるかのように、
気持ちよさそうに熱唱するのです。
ドラマ『素敵にダマして!』の主題歌でした。
〈たまには、聴かされる側の気持ちにもなってくれ〉
そう思いつつ、小生は彼の学習机を借りて、
ドラゴンボール風のイラストばかり、ひたすら描きなぐっていました。
ふと目に入るのが、机の上に堂々と鎮座する、
やけに存在感のある分厚い辞書。
『大辞林』でした。
重さのせいか、机がほんの少し前のめりになっている気さえします。
「これ、高校の入学祝いでもろたん?」
「いや、自分で買ったんやで」と、彼はさらりと言います。
しかし、どこか詰めが甘い。
こういう場面で選ぶべきは、やはり辞書界の王将、
『広辞苑』ではないのか――と、小生は内心で腕を組みました。
ハハーン、さては予算の都合で妥協して、
いわば広辞苑の二番手的な大辞林にしたのだな。
そう、ひとり勝手に納得していたのです。
のちに彼は、
「表紙のデザインもええし、厚みも負けてへんし、
それに広辞苑、店に無かってん」
などと、いかにももっともらしい理由を述べていました。
さて、かくいう小生の家にも、分厚い辞書はありました。
緑がかった布張りの、いかにも古めかしい一冊です。
ただしそれは、新品を奮発して買ったものではなく、
母が粗大ゴミの日に、マンションの集積所から拾ってきた代物でした。
全体的にくたびれており、表紙も擦り切れて、
もはや辞書の名前すら判別できません。
なんとなく、見えない誰かの念でも染み込んでいそうで、
小生はあまり開く気になれませんでした。
それでも母は、
なにか言葉を調べるときには、
その辞書を大切そうに使っていました。
同じ頃、母はさらに、
何十巻もある百科事典まで拾ってきました。
北海道民藝家具の書棚の下段に、きちんと並べて収められました。
小生は、中古であることばかりが気になって、
ほとんど手を伸ばしませんでした。
けれど今になって思えば、
母は良かれと思って、重たいそれらを一冊ずつ抱えて、
わざわざ家まで運んできてくれたのだな、と感じます。
GAO「サヨナラ」(1992年)
YouTubeで視聴する https://youtu.be/H8a2k0cGmew?si=pQAIZXl9JEIDAWWJ
続く。果てしなく続く……。
(まだまだ続くよーっ!お楽しみに〜!)
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