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第0072撃「メタ氏、せつなさを殺せない!!」の巻


平成4年1992年、4月、高校1年の1学期。


入学してまもなくの、ある日のことでした。

高校に入ったらやってみたい部活といえば、やはりバンド活動です。

小生は放課後、ひとりで軽音楽部を探して、

校内の部屋をあちこち見てまわりました。

しかし、どういうわけか見つからないのです。


そのとき、音楽室のほうから楽器の音が漏れてきました。

ドアをノックして入れてもらうと、そこは吹奏楽部でした。

軽音を探していると伝えると、「うちの高校には無いよ」と、

男性の部長があっさり答えました。


室内では、いかにも文化系といった雰囲気の、

おとなしそうな美人の先輩が、静かにフルートを奏でています。

「とりあえず見学だけでもしいや」

そう言われ、小生は結局、部活が終わるまで居続けてしまいました。

――その和賀さん(仮名)という二年生の先輩に、

すっかり魅入ってしまったからです。


翌日。

小生はまた、ひょっこりと音楽室に顔を出しました。

部員は昨日と同じく五名ほど。

しかし残念なことに、和賀先輩はお休みとのことでした。


「夢野君、毎日見学というわけにもいかんしな。

よかったらこのまま入部してみいひんか?」

部長がやや強引に迫ってきます。


〈軽音も無いしなあ、楽器ができるならここでもええか〉

そんな軽い気持ちで、小生は入部届にサインをしました。


「夢野の練習する楽器、どうしよか……。

とりあえず和賀が休みやから、彼女のフルート貸しとくわ。

音出す練習でもしといて」

そう言って部長は、棚からフルートを取り出し、

小生の前に置きました。


「はい……、わかりました」


内心、かなり動揺していました。

これ、和賀先輩の私物ではないのか。

そんな大事なものを、しかも男子生徒に、

こんな気軽に貸していいのか。


しかし小生は、平静を装いながら、

上品な光沢を放つフルートにそっと唇を当てました。

ひんやりとした感触が、

じんわりと身体の内側へ溶け込んでくるようでした。

申し訳ないと思いつつも、どこか背徳的な気配が漂います。

眠っている和賀先輩の〈くちびる〉を、

本人の知らぬところでそっと奪っているような――

そんな妙な感覚に、何度も囚われてしまいました。


数日後。

体調を崩していた小生は、昼前から登校することにし、

泡嶋駅(仮名)へ向かって歩いていました。

指を空中に浮かせて、見えない障害物を跳び越える空想をしながら、

「ぴょーん、ぴょーん」と、スーパーマリオの効果音を口ずさみつつ。


泡嶋教会(仮名)の前を通りかかったとき、

向こうから真新しい制服の女子高生が歩いてきて、

「ゆーめのー」と微笑みながら声をかけてきました。


芝嶋中学時代の同級生、

帆沖琴音さん(仮名・『自叙伝第一部第0031撃』参照!)でした。

彼女はどうやら下校途中のようです。


その瞬間、自分の幼稚な姿を見られたことに気づき、

小生は動揺のあまり、思わず彼女を無視してしまいました。

いま思えば、ここが新しい関係へ踏み出す絶好の機会だったのかもしれませんが――

そのときの小生には、そんな余裕はありませんでした。


帰宅すると、ベッドの上に新品のトランクスが六枚並べられていました。

籠村や甲村が履き始めていたのを見て、

小生もブリーフから卒業したいと母に頼んでいたのです。

それぞれ異なる柄で、白一色だったこれまでとは打って変わり、

気分が少し華やぎました。


さっそく履き替えた小生は、

そのままマンション地下のショッピング街にあるホームセンターへ向かいました。

目的は、流行りの整髪料です。

そして、ひときわ目を引くピンク色の、

ギャツビーの大容量ジェルを手に入れました。


翌朝からの支度は、にわかに気合いが入ります。

朝食をかき込み、髪にジェルをなじませ、

六・四に分けて、ドライヤーで念入りに固める。

仕上げに、愛犬ぺるへ好き好キッスをして、勢いよく玄関を飛び出します。


そんなある日。

甲村からの電話が、小生の心をざわつかせました。


彼は、エホバの証人の中学三年の長田(仮名)と初体験をしたというのです。

どこか得意げな口調で、「おい、おまえ童貞か?」などと、

妙に上から目線で語ってきます。

〈こいつ、アタマでも狂ったのか?〉

さらに受話器を代わった窓田(仮名)までが、

「まだ童貞なんか!?」と笑いながら追い打ちをかけてきました。


小生はすぐに電話を切りました。

そして、どうしようもない虚しさが、胸の奥に広がっていきました。


部屋に戻り、最近手に入れた、

吉川晃司の最近のシングルCD 「せつなさを殺せない」を、

何度も何度もリピートで再生しました。

その旋律だけが、やけにやさしく、

小生の胸のあたりに残り続けていたのでした。


吉川晃司「せつなさを殺せない」(1992年)

YouTubeで視聴する https://youtu.be/OmVvWnIHSnk?si=S0lXgdTRyORRLAjb


続く。果てしなく続く……。

(まだまだ続くよーっ!お楽しみに〜!)



いつもお読みくださり、

無限の無限のありがとうございまする☆

ブックマーク(フォロー)していただけますと嬉しいです。

では、ご氣元よう‼️

( ⸝⸝•ᴗ•⸝⸝ )੭⁾⁾


↓過去の自叙伝も、

読んでいただけますと幸いです。

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