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第0071撃「メタ氏、M学院高校に入学する!!」の巻


平成4年1992年、4月、高校1年の1学期。


入学式。

初めて袖を通す、M学院高校(仮名)の濃紺の詰襟学ラン。

小生はわくわくと不安を胸に抱えながら、校門をくぐりました。


芝中の頃とは勝手が違い、下駄箱で靴を脱ぎ、校内では青いサンダルに履き替えます。

どうにも足もとが落ち着かず、妙なよそよそしさに包まれました。

ただでさえ人見知りの激しい小生です。

こんな場所で、果たしてうまくやっていけるのか……と、胸の奥がひやりとしました。


式を終え、教室へ。

担任の指示で、はじめて「自分の席」に腰を下ろします。

一時間ほど先生の自己紹介があり、そのあとは生徒の番となりました。


小生は「小学校のとき、番長と呼ばれていた」などという、

中学時代に余計なことを口走って自分の首を絞めた苦い経験を思い出し、

今度こそは慎重にいこう、と心に決めていたはずでした。

が――


「夢野です。

中学の文化祭の劇で主役をやり、拍手喝采を浴びました。

よろしく!」


……言ってしまいました。

しかも、やや得意気に。


「オオッ!」と教室がどよめきます。

〈しまった!〉と、心の中で頭を抱えました。

またしても、自らハードルを上げてしまったのです。


案の定、

「夢野! なんか一発芸やってくれよ!」

と、間髪入れずにリクエストが飛んできました。


そのとき小生は、なにを思ったのか――


「うちでは犬とドナルドダックがケンカしてます。

ワンワンッ! クワァックワァッ!」


十八番の鳴き真似を披露してしまいました。


結果は、爆笑。

「すげえ、ホンマもんかと思った」などと、思いのほか高評価です。

おそらく守護霊さんが、咄嗟に小生へ知恵を授けてくれたのでしょう。

しかしその代償として、今後は陽気な人物像を期待され続ける運命に――。

陰の者としては、なかなかに骨の折れる話です。


やがて自己紹介は終わり、教科書や参考書が配られました。

空っぽだったバッグが、一瞬でずっしりと重くなります。

新品の紙の匂いに、かすかな高揚を覚えつつも、

この意欲が長く続かぬことは、経験上ほぼ確定事項でした。


そのとき、隣の席の生徒が声をかけてきました。

「さっきのモノマネおもろかったで。おれ、籠村大介(仮名)な」


間を置かず、ななめ後ろからもう一人。

「おれは朝森(仮名)や。よろしく!」

黒縁メガネの彼が、ぬるっと現れました。


こうして自然に知り合えたことに、どこか救われる思いがしました。

帰りは三人で電車に乗り、途中駅まで並んで帰りました。


翌日、さっそく授業が始まります。

昼休み、三人で食堂へ行ってみることにしました。

思ったより広々としており、

壁にはうどんやカレーうどんのメニューが貼られています。


籠村はカレーうどんを選びました。

小生は、財布事情と、

所詮、安物の食材を使ってるんだろ、という猜疑心の合作により、

『ミニスナックゴールド』などで軽く済ませます。


食事をしていると、どこからか視線が飛んできます。

ふと目をやると、いかにもな風体のヤンキー集団。

こちらを観察しているようで、少しばかり背筋が伸びました。


数日後の朝。

眠気まじりで泡嶋駅(仮名)へ歩いて向かう途中、

前方のほうに同じ制服の男子生徒を見かけました。

ホームに上がると、その人物が電車を待っています。


「あれ!? パピ先輩じゃないですか」


芝嶋中学の写真部時代、二学年上だった先輩です。

小生が同じ高校に入ったと知り、彼は苦笑いを浮かべました。


〈これから一年、毎朝つきまといますよ〉

心の中でそう呟きつつ、小生は金魚のフンのごとく後を追いました。


「おもろいとこ連れてったるわ」

そう言って先輩は坂道をのぼり、校舎から少し離れた場所へ。


そのひっそりとしたところには、小さな売店がありました。

鉄板の上で焼きそばが香ばしい音を立てています。

コッペパンに焼きそばとウインナーを挟み、ケチャップをS字にひと筋。


「奢ったるわ。旨いで」


いただきました。

ほおばりました。

……これは、確かに旨い。


教室に戻るなり、籠村と朝森に報告。

以後、朝礼に多少遅れてでも寄り道するのが習慣となりました。

ときおりヤンキーの先輩がいて緊張しましたが、

意外にも穏やかな視線で迎えられ、無事にパンを買えたのは幸運でした。


帰宅後、リビングでくつろいでいると、母が言い出しました。

猿と大型のアフガン犬を飼おうか、と。


猿――それはもう、家の中が戦場になる未来しか見えません。

一方、アフガン犬はベランダで放し飼いにするといいます。

一瞬心が揺れましたが、

長年連れ添う愛犬ぺるのことを思うと、素直には頷けませんでした。

結局、その話はいつのまにか立ち消えとなりました。


さて、中学時代からの悪友、ヤンキーと化した甲村との付き合いは相変わらずです。

ある日、『SUPER BEST II』というCHAGE&ASKAのベスト盤が出たと聞き、

二人で泡嶋本町商店街のレコード店『エコーズ』へ向かいました。


同じCDを手に取り、同じように喜ぶ。

初回限定の外スリーブ付き。

片側が開いた厚紙の手触りが、なんとも言えず嬉しい。


こうして小生の高校生活は、

少しずつ、しかし確かに、動きはじめたのでした。


CHAGE and ASKA「黄昏を待たずに」

YouTubeで視聴する https://youtu.be/7OFdYjwpvg8?si=rH1GxPX2hIbs_Jt2


続く。果てしなく続く……。

(まだまだ続くよーっ!お楽しみに〜!)



いつもお読みくださり、

無限の無限のありがとうございまする☆

ブックマーク(フォロー)していただけますと嬉しいです。

では、ご氣元よう‼️

( ⸝⸝•ᴗ•⸝⸝ )੭⁾⁾


↓過去の自叙伝も、

読んでいただけますと幸いです。

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