第0088撃「メタ氏、何も言えなくて…夏」の巻
平成4年1992年、9月、高校1年の2学期。
小生は相変わらず毎週日曜になると、
教会通いを続けていました。
理由は、礼拝式に真摯に参列するため。
ではなく、一学年下でキリスト教系の学校へ通う、
縞谷麻由子(仮名)が来るから! でした。
彼女は学校へ提出するために牧師のスタンプが必要だったのであり、
決して小生に逢いたかったからではないことは確かです。
でも、家にいても暇だからということなら、まだいいです。
少なくとも小生は、
害獣とは見なされていなかったわけでしょうから。
数ヶ月前のことです。
彼女に何か綺麗なものを贈りたいと思いつきました。
その頃、母がアクセサリー販売の副業をしていたので、
「教会の女の子にプレゼントしたいんやけど、何かない?」
と相談しました。
それから数日ほどして、
母がブローチをひとつくれました。
母からタダでもらったものとはいえ、
新品の可愛らしいデザインです。
ところが小生は、
それを受け取ってから数ヶ月ものあいだ、
渡せずじまいでした。
引き出しの中にしまったまま、
そこにあることを思い出しては、
また引き出しを閉める。
そんなことを繰り返していました。
そして夏休みが終わりを告げ、
二学期が始まった頃、
ようやく彼女に渡す決意ができました。
告白するわけではありません。
ただ、プレゼントを渡すだけのことです。
それだけのことが、
小生にはなかなかできなかったのでした。
しかし、せめてお洒落な包装紙で包めばいいものを、
透明な袋に入っているだけのブローチを、
小生はそのままの状態でポケットに突っ込み、
教会へ持っていきました。
中高生の会が終わり、
彼女が一階へ降りて、
駅へ向かって歩き出しました。
小生は急いで階段を駆け降り、
彼女のあとを追いました。
幸いなことに、
彼女は一人でした。
「縞谷さん!」
彼女がゆっくりと振り返りました。
「これ、よかったら貰ってほしいんやけど!」
意外なことに、
彼女は嫌がる様子もなく、
素直に受け取ってくれました。
そこで何か気の利いたひと言でも言えたらよかったのですが、
小心者の小生には、
そんな言葉が急に出てくるはずもありません。
「じゃ、また!」
そう言って、
くるりと向きを変え、
逃げるように小走りで教会へ戻りました。
教会では、
まだ礼拝式が続いています。
小生は一番後ろの席に座りました。
安西牧師(仮名)のユニークな説教も、
讃美歌の穏やかなオルガンの音色も、
うわの空になっている小生の耳には、
ほとんど届きません。
今日ついに、
縞谷さんにプレゼントを渡せたという達成感。
そして、
もっと何か言えなかったのかという、
なんとも歯がゆい思い。
神様やイエス様のことよりも、
そんなことばかりが頭の中をぐるぐる回っていました。
J-WALK(THE JAYWALK)「何も言えなくて…夏」(1992年)
YouTubeで視聴する https://youtu.be/sUJERrJO2wE?si=FPoVloLwH9YIIRfg
続く。果てしなく続く……。
(まだまだ続くよーっ!お楽しみに〜!)
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