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第0080撃「メタ氏、ウォークマンを手に入れた!!」の巻


平成4年1992年、6月、高校1年の1学期。


通学していた高校では、

ウォークマンを携えてくる生徒が実に多かったです。


ソニーのウォークマン。


学ランのポケットからさっと取り出し、

イヤホンを耳に装着する。


それが当時の、

最先端のイケてる姿というやつでした。


ご多分にもれず、

級友の籠村(仮名)までもが、

そのお気楽な流行の波に乗っていたのでした。


ガム型充電池を銃の弾丸のように素早く入れ替え、

液晶リモコン付きのワイヤレスイヤホンで好きな音楽を聴きながら、

窓の外の退屈な景色へクールに視線を投げる。

そんな生徒たちが羨ましくて仕方がありませんでした。


小生は誕生日の贈り物にと母に執拗にねだり、

なんとか念願のウォークマンを手に入れることが出来ました。


しかしながら、

新品とはいえ値段の安い旧型でした。


イヤホンは当然ワイヤレスではなく、

電池も流行のガム型ではありません。


単三乾電池を専用ケースに入れ、

それを本体の側面へネジ式で固定するのでした。


小生も一応はウォークマン仲間になれたのですが、

どこか一世代前の仲間だった気がします。


それでも嬉しくて、

用もないのに何度も手に取って眺めていました。


ちょうどその頃、

「ずば抜けてピアノの上手いやつがおるで」


と籠村が紹介してくれた同学年の生徒が、

ガクトでした。


それから何年かのち、

世に華々しく「GACKT」がデビューすることになりますが、

奇遇にもそれと同じ名前だったのです。


ある日、

小生が教室にいると、

別のクラスであるそのガクトがふらりと訪ねてきました。


そして、


「これ、なかなか気持ちいいで。聴けよ」


そう言って、

BOØWYボウイのカセットテープを貸してくれました。


解散から数年が経過してなお、

絶大な信奉を集める伝説のバンドでした。


世間で流行りすぎているものに対しては、

偏屈な抵抗感を抱いて敬遠しがちだった小生ですが、

いざ磁気テープを回してみれば、

なるほど皆が熱狂するのも頷けました。


放課後。


なんだか気持ちが軽くなって、

ガクトも交え、

籠村や朝森(仮名)と共に高校の最寄り駅のM駅へ向かいました。


駅に着いてプラットホームへ入ると、

そこには赤いシャツを身にまとったヤンキーの先輩方が数人、

電車がしばらく来ない退屈を紛らわすためか、

ホームの下へと降り立ち、

線路の上を平均台のように、

つたってうろうろしているのが見えました。


小生は極力、

彼らと視線が交差しないように細心の注意を払いました。


もし、

「そのウォークマン貸してくれや」


などと言われようものなら、

二度と手元へ返ってこない覚悟をせねばなりません。


あるいは、

ボロボロになって戻ってくるのが関の山でしょう。


たまったものではありません。


すると、


「おう!」


その先輩のひとりが、

小生に向かって声を掛けました。


ぎょっとして顔を向けると、

意外にも小学生のような無邪気な笑顔です。


小生は慌てて、


「こんにちは」


と敬語めいた返事をしました。


幸い、

それ以上は何も起きませんでした。


無事にことなきを得ることが出来、

ほっと胸を撫でおろしたのでした。


「みんな、日曜に俺んち来ぉへんか?」


別れ際、

ガクトがそう誘ってくれました。


約束の日曜日。


彼の住処は、

空を遮るような大きな集合マンションでした。


そこを訪ね、

奥にある彼の私室へと通されましたが、

そこには立派なピアノが、

部屋の主であるかのように傲然と鎮座していました。


「ちょっと聴いてや」


そう言って彼が鍵盤に触れ、音を奏で始めると、

それは小生の耳にも覚えのあるメロディーでした。


ショパンです。


常に切羽詰まったようにカッと見開いて、

血走った切れ長の目をしているガクト。


彼の指が紡ぎ出すのは、

華麗でありながらも、

どこか死の恐怖に追われているかのような、

張り詰めた響きを帯びていました。


ただピアノに向かうガクトの背中に、

小生は彼が人に見せていないであろう、

執念のような努力の痕跡を、

ほんの少し垣間見たような気がしたのです。


帰宅したあと、

何気なく音楽番組をつけていると、

一つの素晴らしい名曲に出会いました。


CHAGEが率いる三人組ユニット、

MULTI MAXの

「遠い街から」という楽曲でした。


もともとチャゲアスを好んでいた小生は、

居ても立ってもいられなくなり、

すぐさま泡嶋駅前(仮名)にあるレンタルCD店、

アコム(消費者金融とは違う)へと自転車を走らせるのでした。


MULTI MAX「遠い街から」(1992年)

YouTubeで視聴する https://youtu.be/3qSAcaFr9fU?si=HmvhtHIa1NgJAC9t


続く。果てしなく続く……。

(まだまだ続くよーっ!お楽しみに〜!)



いつもお読みくださり、

無限の無限のありがとうございまする☆

ブックマーク(フォロー)していただけますと嬉しいです。

では、ご氣元よう‼️

( ⸝⸝•ᴗ•⸝⸝ )੭⁾⁾


↓過去の自叙伝も、

読んでいただけますと幸いです。


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