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第84話 上位精霊


オニキス ダイニング 朝(ナツ視点)


俺は朝食を作りながら、

昨日の夜のことを思い出していた。


(俺…カナと付き合えたんだよな……)


そう考えると、

なんだか落ち着かない。


テーブルに料理を並べてると、

匂いに釣られて続々とみんながやって来た。


いつもの日常…。


いつもと変わらない朝のはずなのに……。


なんだか、ずっとドキドキしている。


すると、カナが俺のところへ近づいてきた。


「おはよう…、ナツ…」


「おはよう…、カナ…」


「いつも…ご飯ありがとう…」


「う、うん…」


俺は少し照れながら答える。


「食べよ…?」


「うん……」


俺たちは、みんなと一緒に席についた。


「カナ…、美味しい?」


「うん、とっても美味しい」


「よかった……」


それだけの会話なのに、妙に緊張する。


長テーブルとはいえ、

人間が十人、魔王が七人。


全員が座ると、かなり狭い…。


必然的にカナとの距離も近くなり、

俺の肩とカナの肩が触れ合った。


その瞬間、俺たちの視線が重なる。


「「………」」


俺たちは同時に俯いた。


「だぁあああ!!」


突然、ユウが叫んだ。


「中学生かお前ら!!」


「な、なんだよ……」


ユウが俺の背中を叩く。


「なんでその年の恋愛で、そんなに初々しいんだよ!!」

「こっちがむず痒くなるわ!!」


ゴンッ


「イタッ!」


レイナがユウにゲンコツを落とした。


「初々しくていいじゃない!!」

「優しく見守ってやんなさいよ!!」


ミツルが苦笑する。


「いやまあ、黒瀬さんの意見も分かるんだけどさ……」

「焦れったいのも分かる……」


顔が熱い…。


隣を見ると、カナの顔も赤くなっていた。


すると、サイと篠原が席を立つ。


「サイ、もう行くのか?」


ユウがサイに尋ねた。


「あぁ、天使が来るまで時間がないからな」


そして、サイがふと思い出したように口を開いた。


「……そういえば、佳奈ちゃんの相方ってなんなんだ?」


「……忘れてた…」


「……やっぱりな…」

「風属性なのはなんとなくわかってたけどな」


サイの言葉に、俺もハッとした。


俺たちの魔力を少なからず受けてるはずなのに、

変異の兆候すらない。


そのせいで、いつの間にか気にしなくなっていた。


すると、ベルフェゴールがご飯を食べながら口を開いた。


『みんな知らなかったんだ』


「え?」


俺はベルフェゴールを見る。


「お前知ってるのか?」


『俺たちもだけど、天使も気づいてるんじゃないか?』


「は!?」

「なんで!?」


魔王たちの食事をする手が、一斉に止まった。


『独特なんだよ…』

『精霊の魔力は…特にな』


ベルフェゴールが続ける。


『上位精霊なら、なおさらだ』


「精霊!?」

「しかも上位の!?」


『逆に、竜種たちが気づいてないことに驚いた』


俺は春嵐に念話を飛ばす。


(春嵐、カナの相方が上位精霊って知ってたのか?)


《いや、知らなかった》


周りを見ると、みんなも相方に念話を飛ばしてるようだった。


《多分だけど、悪魔と天使の天敵が精霊だから、敏感になってるんじゃないかな?》


(……なるほどな…)


俺は魔王たちを見る。


「春嵐たちは気づいてなかったみたいだ」

「今聞いたけど、精霊って悪魔と天使の天敵なのか?」


『……ま、まあね』


ユウが俺を見る。


「天使の天敵でもあるなら、一度話してみるのもありか…」


「話し合えるならいいけど…」


俺はカナを見る。


「カナを…危ない目に遭わせたくない…」


トンッ


俺の肩にマサキが手を置いた。


「言いたいことはわかるけど」

「自分で身を守れるならお前も安心じゃないか?」


「そうだけど……」


ギュッ


カナが俺の手を強く握る。


「ナツ…」

「私…お荷物になるのは嫌だ…」


「……」


その瞳には、強い意志が宿っていた。


「……分かった」


俺は小さく頷いた。








オニキス 俺の部屋 昼


俺はカナの手を握った。


「準備はいい?」


「うん」


カナの温もりを感じる。


こうして手を繋いでいるだけでもドキドキする。


俺は頭を横に振り、

雑念を払った。


「……行くよ」


シュゥゥゥ、ブンッ……






精神世界


目を開ける。


そこは、深い森の中だった。


「ここが…精霊の……」


木々が生い茂り、どこからともなく心地よい風が吹いている。


俺はあることに気づく。


「カナ、光!」


アルビノのカナが、陽の光を浴びている。


俺は思わず心配になった。


「大丈夫みたい…」


「……精神世界だからか…」

「良かった……」


俺は胸を撫で下ろす。


その時だった。


森の奥に、光に照らされる石の台座があった。


その上には、淡く翠に輝く水晶が据えられている。


「あれに触れれば…」


「私のパートナーが…」


その瞬間……。


『やっと来てくれたのですね』


「「!?」」


突然、頭に響く声…念話か…?


いや、違う。


この声は……森そのものから聞こえているような感覚だった。


『ずっと……待ちわびていました』


声とともに空から、

精霊が姿を現す。


風が吹き抜ける。


ザァァァ……。


木々が一斉に揺れ、

無数の葉が空へ舞い上がった。


「な、なんだ……!?」


俺はカナの前に立つ。


その直後、森の上空から一筋の光が降りてくる。


その中から一人の精霊がゆっくりと姿を現した。


俺は息を呑む。


「…………」


これが……。


カナのパートナー……。

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