第83話 大切な人
オニキス ダイニング 朝(ユウ視点)
俺たちは、いつもの通りに朝食を取り、
そのまま作戦会議を始めていた。
「とりあえず、篠原に関してはサイに一任するってことでいいか?」
「はい!」
アキラが食後のコーヒーを飲みながら言う。
「まあどの道、精神世界で修行するならサイ以外行けへんしな」
『うんうん、そうだよね〜♡』
『私もアキラに賛成よ』
ジュンはアスモデウスとレヴィアタンが、
アキラにベタつく光景を見て動揺した。
「ま、まあスパルタだけどね……」
「ホントそう……」
「病みそうになるからな……」
同意したマサキに、
サイが反論する。
「お前らは相方が竜なのに弱すぎなんだよ」
「篠原には優しめにするさ」
「よ、よろしくお願いします!」
ミツルが腕組みをした。
「優しめって……」
「信用できねぇぇ……」
「むさ苦しい男どもに教えるのと、美人に教えるのは違うだろ?」
「……」
篠原の顔が真っ赤になった。
「……お前らさ…、無自覚にフラグ立てるのやめようぜ…」
サイとアキラを見て言うと、
何言ってんだ?、
みたいな顔をされた。
昨日帰って来てから、
レヴィアタンとアスモデウスはアキラにべったりだし…。
まあ理由はなんとなく察しが付くけど……。
ガチャ…
すると、ナツが部屋に帰ってきた。
「カナの様子はどうだ?」
「昨日一日ご飯食べてゆっくりしたから、もう大丈夫そうだ」
「みんなと早くご飯食べたいって言ってたぞ」
話を聞いてレイナが声をあげた。
「カナって本当に可愛い〜!」
「レイナってホント、カナのこと溺愛してるよな」
「そりゃそうでしょ!」
「可愛いって思ってないの!?」
「レイナ一番可愛いだろ」
「………」
周りの視線が痛い…。
「見せつけてくれてんな〜」
『いいな〜、ラブラブで〜♡』
まあ、言いたくなったから仕方ない…。
話を変えたくて、俺は咳払いをした。
「ゴホン、ナツも来たし本題に入るか」
「あっ、ごまかした」
間を開けずにジュンがツッコんできた。
「ナツ、カナの体調が良さそうなら、告白は今日の夜でいいんだろ?」
「お、おう」
「い、いいぞ……」
ナツの様子を見てアキラが口を開いた。
「おい、そんな状態で大丈夫なんか?」
「あ、当たり前だろ!」
「三十歳過ぎて、こ、告白で緊張するわけ無いだろ」
ミツルが頭を抱える。
「まあ、こればっかりはお前が頑張るしかないいんだが……」
「不安しかない…」
ここで、マサキが浮かんだ疑問を口にする。
「あれ?」
「そういえば、佳奈ちゃんって何歳だっけ?」
「……俺たちの十個下…」
「お、おう」
「ま、まあ年の差は愛の前では関係ないよな」
「やっぱり下過ぎるかな!」
「無理かな!」
バンッ
「イタッ!!」
ナツの背中をアキラが叩いた。
「なに弱気になっとんねん!!」
「告白するって自分で決めたんやろ!!」
「気合入れろや!!」
「……そ、そうだよな…」
「俺…今日の夜、告白する!!」
「ようゆーた!!」
「骨は拾ったるからな!」
「玉砕する前提やめろ!!」
(箱館に浮遊城を移動させるか…)
オニキス 監視塔最上階 (ナツ視点)
街を見下ろせる高台に、俺とカナは二人でいた。
目の前には、箱館の夜景が広がっている。
無数の光が暗い街を照らし、
遠くには海に浮かぶ船の明かりまで見えていた。
「……綺麗だね」
カナが小さく呟く。
「……ああ」
俺は隣にいるカナを見る。
銀色の髪が、
夜風に揺れていた。
その横顔を見ているだけで、
胸が苦しくなる。
逃げないぞ……絶対に言う。
ずっと言いたかったことを。
「……カナ」
「……なに?」
「俺さ……」
言葉が出てこない。
何度も頭の中で考えていた。
もっと格好いい言い方も考えた。
もっと気の利いた言葉も。
でも……。
俺は、そんな器用な人間じゃない。
だから……。
「……俺と、付き合ってください」
言った。
それだけを……。
カナは何も言わない。
ただ、静かに俺を見つめてくる。
「…………」
「…………」
数秒が、ものすごく長く感じる。
やっぱり……ダメだったか?
そう思った瞬間。
「……はい」
「……え?」
思わず聞き返してしまう。
カナは、いつもの無表情に近い顔のまま、
ほんの少しだけ頬を赤くしていた。
「私も……ナツくんのこと、好きでしたから」
「…………」
俺の思考が止まる。
「……でした?」
思わず聞き返す。
カナは少しだけ目を伏せて…。
「……今もです」
「…………」
その瞬間。
顔が一気に熱くなった。
「…………マジ?」
「……はい」
「……マジで?」
「……はい」
「…………」
俺は両手で顔を覆った。
「うわぁぁぁ……マジかよ……!!」
「……ナツくん?」
「いや、だって……!!」
顔を隠したまま、俺は震える。
「俺……ずっと、カナに嫌われてるかもしれないとか……」
「……嫌ってないです」
「知ってる!!」
「今は分かってる!!」
「……ふふ」
カナが小さく笑った。
その声を聞いて、俺はゆっくり顔を上げる。
「……カナ」
「……はい」
「俺……カナのこと、幸せにしたい」
「…………」
「正直、俺に何ができるか分かんないし……」
「ユウみたいに人を引っ張る力もねぇし」
「サイみたいに強くもねぇ」
俺は苦笑しながら言った。
「でも……」
カナを見る。
「辛いときは、一緒に悩んで」
「…………」
「嬉しいときは、一緒に笑う」
「…………」
カナは黙って俺を見つめていた。
「だから……」
俺は少し照れながら言った。
「これからも、俺の隣にいてください」
「……はい」
カナは小さく頷いた。
そして、
カナが俺の袖をそっと掴む。
「……私も」
「……ん?」
「ナ、ナツの隣にいたいです」
「…………」
俺は一瞬、言葉を失った。
「……そっか」
嬉しそうに笑った。
「……よかった」
俺たちは並んで夜景を見る。
さっきまでと同じ景色。
同じ夜。
だけど……。
俺たちにとっては、少しだけ違う夜になった。
決戦まで……あと三日。
精神世界
「はぁ…はぁ…」
「篠原、大丈夫か?」
「は、はい!」
「大丈夫です」
「……いきなりだけど、篠原って何歳?」
「27歳ですけど…?」
「へー」
「え?」
「なんですか?」
「なんでもない…」
「続けるぞ」




