↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

81/89

第81話 孤独な覚醒者


北の大地 箱館 夕方(アキラ視点)


日が落ち始め、

辺り一面がオレンジ色に染まり始めとった。


「まだなんかサイ…」

「大丈夫なんやろな…」


サイを待ってる間に、

先に帰って来ていたレヴィアタンが、

わいの肩に手を置いた。


『竜が下級の魔物に負けるわけないわよ』


「わいが頼んだんや」

「そら心配になるやろ…」


その時やった。


スゥゥゥ……


変異しとった女の身体が、

ゆっくりと元に戻っていく。


「やっとかい!」


わいはホッとしながらも、

苛立ちを隠せんかった。


「遅いねん、サイのアホ!」


やがて女の瞼が小さく揺れる。


「おい、大丈夫か?」


女がゆっくり目を開けた。


「……戻って…来れた…」


「おっ、気ぃついたみたいやな」


「!?」


女は飛び起き、慌てたように辺りを見渡した。


「さっきのあの人は!?」


「サイのことか?」

「もうそろそろ戻って来るやろ」


シーン……


「おい姉ちゃん!」

「あいつ無事やんな!」


「…はい、怪我はなさってないはずですが……」


「たくっ、なに油売っとんねん」


わいがイライラしていると、

頭に燐火の声が響いた。


《アキラ、大丈夫だよ》

《精神世界が快適で、ゆっくりしてるだけみたいだから》


「なんやてぇぇえ!!」


《ちょ、アキラ!?》


「わいが心配してるっちゅーのに、ゆっくりしてるやて!!」

「ざけんなや!!」

「サイ!!」

「早く帰ってこーーーい!!!」


『『アキラ?!』』


突然暴れ出したわいを、

レヴィアタンとアスモデウスが両脇から押さえ込んだ。


「離せやぁぁあ!!」


わいが必死に二人を振り払おうと暴れ続けとると…。


シュゥゥゥ、ブンッ……


「……何騒いでんだバカ」


「……」

「てめぇ!!」


『アキラ落ち着いて!!』


『サイくんも煽るのやめて〜〜』


結局、わいの怒りが収まる頃には、

すっかり日が沈んどった。


「はぁ…はぁ……」


『……やっと収まった』


『……疲れた〜〜』


サイがわいらを完全に無視して、

女の方へ歩いていく。


「変異も元に戻ったんだな」

「良かったな」


そう言うと、サイが女の頭に手を置いた。


「よくやった」


「……」


女は目を見開き…、

頬を赤らめた。


「あ、あの私…篠原 綾乃って言います…」


「そういえば、名乗ってすらいなかったな」

「俺は鳴神 砕」


「わいは焔崎 晃や」


「……よろしくお願いします」


綾乃がペコッと頭を下げる。


すると、

篠原がレヴィアタンとアスモデウスを見た。


「あの、後ろのお二人は…」

「変異しておられるんですか?」


レヴィアタンとアスモデウスは、

お互いの顔を見合わせる。


『私たちは人間じゃないの』


『悪魔だよ〜♡』


「ちなみに魔王やで」


「魔王!?」


篠原の顔が強張り、

反射的に身構える。


「大丈夫や、わいらの仲間やから」


「魔王と…仲間……」

「もしかして…お二人って…」

「ニュースに出てた…」


篠原はわいとサイを見る。


「どのニュースかは分からへんが」

「わいらは竜の覚醒者や」


「やっぱり…」


篠原は少しだけ迷ったあと、

口を開いた。


「砕さんたちは…世界をどうしたいんですか?」


「どうしたいか…」


サイが少し考える。


「ニュースを見たなら、俺達が人間の敵に見えるのも分かる」

「西京都では、俺達は住民を守った」

「でも、その後……国が俺達の仲間を襲撃した」


篠原は黙って聞いとる。


「仲間を殺された俺達は……報復した」


サイの声が少し低くなる。


「だから、今の俺達を見れば……人間の敵だと思われても仕方ない」


篠原が静かに口を開く。


「龍華の核攻撃から、私たちを守ってくれたのも……」


「被爆する可能性があったから迎撃しただけだ」

「その後、天使と戦うために悪魔とも手を組んだ」

「経緯は……こんなところだ」


「そんなことが……」


綾乃は俯いた。


「私でも…許せないと思います」

「でも…」


「篠原が言いたいこともわかる」

「俺達は、あの時冷静じゃなかった」


一瞬、サイが黙る。


「でも後悔はしてない」


「……」


「何なら、襲撃の指示を出した奴らが生きてるなら、俺は殺してやりたい」


辺りが静まり返った。


わいも思っとった、

あんな報復で、恨みが消えるわけがあらへん。


それでも、

一番恨んでるはずのユウとナツが、

前に進もうとしとる。


やったら、わいらもいつまでも過去に囚われとるわけにはいかへん。


前を向かなあかん。


そう思っとると、サイが篠原に尋ねた。


「篠原は…一人なのか?」


「……」


篠原の表情が曇る。


「……魔物化するまでは…、友人と一緒にいました…」

「でも……」

「魔物化の兆候が出てからは……」


篠原は自分の手を見つめる。


「バケモノって…」


『『「「……」」』』


誰も口を挟めへん。


「でも…私、この街が好きだから」


篠原は震える声で続ける。


「魔物の力を使って…魔物を倒してました」

「人を助けたりも…したんです」

「でも……」


篠原の目に涙が浮かぶ。


「私の姿を見て……みんな、暴言を吐きながら逃げていって……」


「……ありがとう」


サイが静かに言った。


「もういい」


綾乃が顔を上げる。


サイは篠原の前まで歩いていき、しゃがみ込む。


そして……。


綾乃の頭に手を置いた。


「綾乃は頑張った……」


「……」


「お疲れ様」


「……うぅ」


篠原の目から涙が溢れた。


「うぅぅぅ……」


篠原はそのままサイにしがみつき、

声を上げて泣き始めた。


サイは何も言わず、

その頭を優しく撫で続けとる。


わいはその光景を見つめとった。


気がつけば……。


頬が濡れとった。


(……わい、泣いとるんか)


篠原の気持ちが……分かる。


人間に拒絶される苦しみ。


わいらも……似たようなもんを味わっとる。


せやから、胸に来るもんがあった。


気がつくとわいはユウに念話を飛ばしていた。


(ユウ…、悪いねんけど…)

(箱館に…来てくれへんか?)


(アキラか…)

(…泣いてるのか!?)

(サイに何かあったのか!?)


(いや…そうやないねん…)

(ユウ…頼む!)

(来たってくれ!)


(……わかった)

(ちょっと待っててくれ)


それから、しばらく待った。


篠原が泣き止み、

静寂がわいらを包んでいた。


すると…。


浮遊城の方から、

漆黒の竜翼が箱館の光に照らされたユウが、飛んでくる。


その姿はまるで、ヒーローみたいやった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。