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第80話 抗う者


精神世界 (サイ視点)


シュゥゥゥ、ブンッ……


目を開けるとそこは、

広い草原だった。


空気が美味い。


ユウに聞いてた通り、

竜種の精神世界とは違った。


「私はあんたなんかに負けない!!」


女の叫び声が草原に広がった。


周りを見渡すと、

カマキリの魔物と対峙する女を発見した。


すると、魔物の鎌が振り上げられた。


「ちっ…」


俺は焦って駆け出す。


竜化(弱)。


ガンソードを具現化し突っ込む。


間合いを潰し、斬りかかろうとしたとき…。


暁闇の仮説が頭によぎる。


俺達が死ぬと万雷達も死ぬ……。


ガキンッ…


俺は攻撃をやめ、

咄嗟に鎌を受け止めた。


「くっ…」


(考えろ…)

(理性のない魔物を止める方法を…)


「あなたは…」


「自分が使えそうな武器を想像しろ」


「え?」

「そ、そんなこと言われても…」


キンッ…ドォンッ


俺は鎌を弾き、

魔物を蹴りで吹き飛ばした。


(これで少し時間を稼げるか…)


「いいか、ゆっくり説明してる暇はない」

「武器を想像して、具現化するイメージだ」


「で、でも……」


「あいつに負けないんだろ!」

「さっきの気合いはどうした!」


「!?」

「……やってみます…」


女は目を瞑り、武器具現化を試し始めた。


ギシャァァァ


魔物が起き上がり、

こっちに突っ込んできた。


「お前はそのまま続けろ」


俺は魔物に突っ込む。


ガキンッ


ガンソードと鎌がぶつかり火花が散る。


俺は魔物の攻撃を受けながら、

女に叫ぶ。


「助けてもらえるとか甘い考えは捨てろよ!」


「!?」


「このカマキリを殺したらお前も死ぬ!」

「だからこいつにお前には敵わないと思わせるしかない!」

「多分(ボソッ)…」


「でも私、さっきカマキリに殺されそうだったんですけど…」


「……」

「いいからやれ!」


「は、はい!!」


(女の言葉にも一理ある…)

(殺したら死ぬと思ってたけど違うのか…?)


キンッキンッキンッ


「……しつけぇな」


ガンッ


俺はガンソードをひっくり返し、

魔物の顔面に峰打ちを叩き込む。


魔物は頭が揺れたのか、

その場でのたうち回った。


(こっちに魔物が出て来るときはどうやってるんだ…)

(捕食…精神を食われると乗っ取られるとか…)


「出ました!!」


俺が女の方を見ると、

死神が持つような鎌を持っていた。


「鎌って……」


「し、仕方ないじゃないですか!!」

「カマキリを見てたらこうなったんですもん!!」


「…まあいい」

「あとは戦ってお前が勝てば自由になれる」


「簡単に言わないでくださいよ!!」


俺は地面を蹴り、

女の後ろに移動した。


「悪いが俺も時間がないんだ」

「反応出来ない攻撃は俺が防いでやる」

「やってみろ」


「……はい」


すると、魔物が起き上がる。


ギシャァァァ


「武器具現化の時に魔力は感じれたか?」


「多分…?」


「今度は魔力を身体の中に流すイメージをしてみろ」

「身体能力を底上げするんだ」


「また無茶な…」


「言われた通りにやれ」

「死ぬぞ」


「……はい」


魔物が鎌を振りかぶりながら突っ込んでくる。


ギシャァァァ


女は雑ではあるが、なんとか身体強化できている。

これなら…。


「今だ!」


ガキンッ


鎌同士がぶつかり火花が散る。


「いいぞ、腕に力を込めて弾き飛ばせ!」


カンッ


「がら空きの腹を掻っ捌け!」


バサァッ


ギシャァァァ


魔物は叫び声を上げながら後退る。


「や、やった」


「油断するな」

「怯んでるうちに畳み掛けろ!」


慣れない力のせいか、

致命傷には届かない。


しかし確実に削っていくと、

魔物の動きが鈍くなった。


「さて、ここからどうなるか…」


魔物は脱力し、

両鎌は地面についた。


「とりあえず諦めたみたいだな…」


「私…助かった…」

「……あの…ありが…」


シュゥゥゥ、ブンッ……


どうやら女は現実世界に帰ったみたいだ。


「はぁ、疲れた…」


俺は仰向けで草原に寝転がる。


「ここめっちゃいい精神世界だな…」

「竜種も見習えよ」


《悪かったな殺風景で!!》


頭に万雷の声が響く。


「なんだよ、ここでも万雷と会話できるなら相談すりゃよかった…」


《サイが集中してたからな…》

《邪魔になっても良くないと思って》


「……まあ、なんとかなったし」

「いいか…」

「まさか…あいつ等との修行がこんな形で役に立つとはな」


俺は目を瞑り、気持ちいい風に打たれる。


《余韻に浸ってるとこ悪いが、早く戻ったほうがいいぞ》

《アキラが騒ぎ出したらしいぞ?》

《サイが帰って来ないって》


「どこ情報だよ」


《燐火からの情報》


「はぁ、わかったよ…」

「……ゆっくりしてぇ…」


シュゥゥゥ、ブンッ……


俺は風に打たれながら、現実世界に帰還した。

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