第79話 異形の女
北の大地 箱館 昼 (アキラ視点)
わいらは箱館の魔物の殲滅を始めとった。
パシュッ、ボォォォッ
「そんなに居らんなぁ」
「覚醒者もいるみたいだし」
「なんとか踏ん張ってるんだろ」
わいとサイがそんなことを話しとると、
レヴィアタンが攻撃の手を止めた。
『どうやらあなた達だけでここは余裕みたいね』
『私は海に行ってくるわね』
「なんや?」
「野暮用か?」
『ちょっとね』
『眷属にするのに良さそうな子がいるの』
「…そうか」
「なんかあったら呼ぶんやで?」
わいは手で電話のジェスチャーをした。
『心配してくれるんだ』
『一応、魔王なんだけどね』
「女には違わへんやろ?」
「ピンチの時は助けたるで?」
レヴィアタンは素早く振り向くと、飛んでいきよった。
『レヴィいいな〜、優しくされて〜』
アスモデウスがわいの顔を覗きこんできよった。
「別に男が女を守るのは普通やろ?」
「アスモデウスも助けたるで?」
キュルル〜ン
アスモデウスの瞳がハートマークになりよった。
『嬉し〜♡』
『そんなこと言われたの初めて〜♡』
すごい力で抱きつかれる。
「いたたたっ、力強すぎやろ!?」
サイと目が合うたが、
視線を逸らされた。
「おいサイ!」
「何シカトしとんねん!!」
「助けろや!!」
「まあ自業自得だろ?」
「レヴィアタンも頬を赤くしてたし」
「めんどくさいことにならなきゃ俺はいい」
サイはそういうと、
遠くに見えた魔物に走って行ってもうた。
『アキラ〜♡』
『好き〜♡』
「いつまで抱きついとんねん!!」
「サイ行ってもうたやろが!」
わいが振り払うと、
今度は腕に抱きついてきよった。
『二人っきりだね♡』
「だぁあ、弓射れんやろ!」
「助けてやらんぞ!!」
『ん〜…』
『わかった……』
アスモデウスが離れると、
わいは索敵を始めた。
「んー、結構散らばっとんな」
「集まってくれたら楽なんやけど……」
『任せて♡』
『アキラは上で待機してて♡』
「お、おう」
わいは上空に飛翔する。
「こんなもんか?」
『うん♡』
『いくよ~♡』
そう言うとアスモデウスは魔力を周囲に広げ始めた。
魔力はどんどん広がり、
やがて箱館を覆い尽くすほどになった。
すると、周囲の魔物が一斉にアスモデウスの方に移動を始めよった。
「おいアスモデウス!」
「お前も早く上がってこい!」
『やだ~♡』
「はあ!?」
『アキラ〜♡』
『助けて〜♡』
「何ふざけてんねん!!」
「もうそこまで魔物が来とんねんぞ!!」
四方から魔物がアスモデウスに迫ってくる。
その数…10体…。
(あの変態…わいのこと試しとるんか?)
「ちっ、しゃーないなぁ!!」
弓矢に魔力を込める。
「烈火流星群!」
ドドドドドオォン!!
わいは極力、街に被害を出さないために威力を抑え、魔物に矢を放った。
矢はそれぞれ命中したが、
命を刈り取るには至らんかった。
頭を撃ち抜いた魔物は動きを止めたが、
胴や四肢を打たれた魔物は体を引きずりながら、
アスモデウスに近づいて行く。
その数…4体。
そこへ帰って来たサイが魔物に突っ込んでいく。
「どうせなら全部やれよな」
悪態をつきながら、
次々とトドメを刺していく。
魔物をすべて片付け、
わいが地上に降り立つと、サイが呟いた。
「たくっ、遊んでんじゃねぇよ」
「仕方ないやろ!」
「街に被害出さんように加減してんから!!」
そんなことを話しとると、
アスモデウスが駆け寄って来た。
『アキラ〜♡』
『私、役に立てたでしょ〜♡』
ゴンッ!!
抱きつこうとするアスモデウスに、
わいは思いっきりゲンコツを落とした。
『いったーい!』
アスモデウスは涙目でわいを見てくる。
「おいアスモデウス!!」
「お前もっと自分を大事にせえ!!」
『!??』
「わいは命を大事にせんヤツが大嫌いなんや!!」
『でも…それで役に立てるなら…』
わいはアスモデウスに顔を近づけ、睨みつける。
「お前の常識なんか知るかい!!」
「わいらの仲間になったんやろが!!」
「そんなマネ、絶対許さへんからな!!」
『…ご、ごめんなさい…』
『もう…しません……』
(なんかガキみたいなやっちゃな…)
「…わかったんならえぇ」
わいはアスモデウスの頭に手を置き、
頭を撫でた。
「レヴィアタンの様子見に行くで!」
『う、うん……♡』
「はぁ、これはもうダメかもな…」
「ん?」
「なんかゆーたか?」
「なんでもねーよ!」
わいらが飛び立とうとした。
その時…。
「待って!」
声のする方を見ると、
ふらつきながら近づいて来る女が一人。
でも、その姿は人間やあらへん。
左目は、無数の小さな眼が集まった複眼に変異しとった。
「助けて…ください…」
左腕も、肩から先が変異しとる。
硬質な黄色い外殻に覆われた異形の腕。
その先には、カマキリの鎌を思わせる巨大な刃が伸びとった。
「このまま…じゃ…」
ドサッ
女はその場に倒れ、意識を失った。
「変異を自分で食い止めてたんか…」
「やるやんけ…」
助けてやりたい…。
でも、外殻の色を見る限り。
属性は雷…。
「サイ…」
「……お前の言いたいことはわかる」
「でも石田の件もある…」
「それでもや…」
「……頼む」
「……ちょっと待ってろ…」
サイが倒れた女に触れた。
シュゥゥゥ、ブンッ……




