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第77話 伝えたかったこと


オニキス ナツの部屋 朝(ナツ視点)


ユウたちが出て行って、

部屋は静寂に包まれていた。


俺はカナに何を言えばいいんだろう…。


カナが起きたら自分の気持ちを伝えたい…。


言わないと伝えれなくなるかもしれないから…。


そんなことを考えてた自分を殴りたい。


結局、自分のことばかり考えてたんだから…。


もし俺が倒れてる間に、

大事な人達を一度に失ったことを聞かされたら、

多分耐えられない……。


今のカナに俺ができることを、

足りない頭で自分にできることを考える。


俺はベッドに近づき、カナの隣に座る。


すると、掠れる声でカナが口を開いた。


「……私、血はつながってなかったけど…」

「組のみんなのこと…、本当の家族だと思ってたの…」


「……少ししか一緒にいれなかったけど」

「温かい人達だったよね……」


俺たちは手を繋ぎ、一緒に頬を濡らす。


「私こんなだから…、親にバケモノって言われながら育てられて…虐待もされて…」

「でも、借金の回収に来た橋本さんに助けられたの…」


俺は黙ってカナの話を聞いていた。


「組に連れてってもらってからは幸せだった…」

「本当の家族ってこんな感じなんだって…」

「私…、まだ何もみんなに返せてなかったのに…」


「返すか…、多分あの人達はそんなこと思ってないよ」


俺は握る手を指先で撫でる。


「カナが組の人達と笑って隣にいただけで」

「あの人達は幸せだったと思うよ」


「……」


「俺も恵まれた生まれじゃないけど、大切な奴らが出来て思った…」

「こいつらと一緒にいれるだけで、腐った社会でも幸せだと…」

「だからあの人達…」


トンッ


俺が話していると、

カナが俺の肩に頭を預けてきた。


鼓動が早くなったが、

俺は平静を装う。


「だ、だから橋本さん達もカナの幸せを願ってるよ!」

「……それにもう遅いかもしれないけど…」

「今度こそ俺が守る」

「もう何も失わせない…」


「……」


自然と握る手に力が入る。


「すぐに心の傷は癒えないと思う…」

「俺がそれを癒せるとは思わないけど、カナのそばに居させてくれ」


「ナツくん…」


カナの泣きながらも控えめの笑顔を見て、

俺はこんな時にでも少し見とれてしまった。


「そ、そうだ!!」

「カナ、しばらく何も食べてないから」

「胃に優しい物作ってくるから待ってて!」


「う、うん?」


ガチャ、ドンッ


俺は部屋を飛び出した。


カナが苦しんでるのに、

自分の頭の中が不純すぎて嫌になる。


カナの顔が近づいたとき思った。


カナが可愛い。


……こんな時に何考えてんだ、俺。


カナに触れたい。

もっと近くにいたい。

好きだって伝えたい。


「ほんとに俺って奴は……」


俺は胸に手をあてる。


心臓がうるさい…。


俺は心の高鳴りを振り払うように、

ダイニングの扉を開けた。


ガチャッ


中に入るとみんなの視線を感じるが、

俺はキッチンに直行する。


すると、

みんながついてくる。


俺が無言で調理を始めると、

アキラとミツルが肩を組んできた。


「おいおい、無視すんなやぁ」


「顔赤いじゃん、何かあった?」


「うるせぇよ!!」


全員がニヤニヤしてやがる。


「みんなニヤつきやがって!」

「カナのこと心配じゃねぇのかよ!」


ユウが即答する。


「お前と一緒にいたんだから大丈夫だろ?」


「は?」


「大体、お前がそんな顔で部屋出てきたんだからとりあえずカナは落ち着いたんだろ?」


「……」


俺が俯くとみんなが顔を覗き込んでくる。


「あーうるせぇ!!」

「飯作んねぇぞ!!」


みんながそれはまずいと離れていく。


すると肩に手が置かれた。


「まだな…に…か…」


黒瀬さんだった。


「ナツ、カナを幸せにしなかったら…」

「わかるよね?」


満面の笑顔なのにめちゃくちゃ怖い。


「は、はい」


「よし、ご飯楽しみにしてるね〜」


言われなくてもそのつもりだったが、

もし幸せにできなかったら、

俺は殺されるんだと認識した…。


朝食を速攻で作り、

盛り付けは丸投げして、

カナ用の梅粥を作る。


「おー、ナツは優しいね〜」


「心より先に胃袋を掴む作戦か〜」


「風邪引いたらわいにも作って貰おか〜」


マサキ、ジュン、アキラが料理を運びながら絡んでくる。


「お前らマジで飯抜きにすんぞ?」


「「「それは無理〜」」」


俺はお盆に梅粥と水を乗せて部屋に向かった。


「カナおまたせ〜」


「ナツくん、ありがとう」


「お粥熱いし、久しぶりの食事だからゆっくり食べてね?」


「うん…、美味しそう」


カナが一口食べる。


「熱っ…」


「大丈夫!?」

「熱いって言ったのに…」


俺がカナからお盆を貰い、

お粥を冷まそうとする。


「フーフー、大丈夫かな?」

「はい、あーん」


「!?」


少し照れくさいが、

心配が勝ってカナに冷ましたお粥を差し出す。


カナは戸惑いながらも食べてくれた。


「美味しい…」


「ホント?」

「よかった〜」


「……もう一口…」


「いいよー!」

「フーフー、はい、あーん」


美味しそうに食べるカナを見て俺の方が幸せになってしまった。


そんなカナを見てると、

カナが顔を真赤にしながら俯いた。


「どうしたの!?」


俺がカナの見ていた方を見ると…。


部屋を覗いていたみんなと目が合う。


「てめぇら…」


「やべっ、バレた」


「ぶっ殺す!!」


「「「「「「「ごめんって〜〜!!」」」」」」」


俺の怒号が、朝のオニキスに響き渡った。


……ったく、こいつらは…。


でも…、

カナが目覚めたことで、俺の日常が戻った気がした。

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