第71話 創世神
オニキス ダイニング 朝
ダイニングへ行くと、
すでにみんなが集まって来ていた。
「おはよー、出来てるぞー」
ナツが元気よく手を振る。
「おう、いつもありがとうな」
俺も軽く手を上げる。
テーブルには朝食が並び、
自然と席が埋まっていく。
他愛もない話をしながら朝飯を食べ終えると、
誰が言い出したわけでもなく、
ダイニングは静かな空気に包まれた。
おそらく全員が天使戦のことを考えている。
静寂。
俺は昨日のことを思い出し口を開く。
「ミツル」
「ん?」
「勝算がないなら普通攻めて来ないよな?」
ミツルは腕を組み、
少し考えてから口を開く。
「ん〜……」
「まあ、神の命令なら攻めて来るとは思う」
「でもな……」
少し眉を寄せた。
「そんな命令をするほど神が馬鹿とは思えないんだよな……」
「ああ」
俺も頷く。
「仮にも神だろ。」
「人間の俺らですら分かる悪手を打つ理由がない……」
マサキが真剣な表情になる。
「となると……」
アキラが言葉を続けた。
「他に手札があるってことやな……」
「そういうこと」
俺は椅子にもたれ掛かる。
「んで、その手札が何かだ」
視線を魔王達へ向けた。
「ルシファー」
「何か心当たりあるか?」
ルシファーは静かに目を閉じる。
『……神が直接動かせるのは天使だけだ』
一拍置き、
『……本来ならな』
「……どういう意味だ?」
『確証はない』
『だが……』
『恐竜の魔物』
『あれが神の力で出現したのなら話は別だ』
「えっ!?」
ナツが目を丸くする。
「あれも神の仕業だったのか!?」
ルシファーは首を振った。
『だから確証はないと言っただろ』
『だが……』
『主要都市にだけ都合よく恐竜が現れた』
『偶然と考える方が不自然だ』
「……確かに」
ナツは納得したように頷く。
ジュンが腕を組む。
「でもさ」
「星条に出した恐竜を、
わざわざ自分達で倒したってこと?」
「それじゃ意味なくないか?」
ミツルが静かに答える。
「いや」
「最初からそれが目的だった可能性はある」
「自作自演で星条を救って、
信用を得る」
「そのまま支配して利用する」
「そう考えれば辻褄は合う」
アキラが首を傾げる。
「……でも」
「魔物ってコントロール出来るんか?」
アモンが腕を組む。
『そんな話は聞いたことないな』
マモンも続ける。
『だが相手は神だ』
『何でもありだと思った方がいい』
ミツルは顎に手を当てる。
「……なら」
「自我を持たない魔物を操って、
ここへ攻め込ませて来る可能性は高いな」
レヴィアタンが小さく笑う。
『ねぇ』
『自我を持たない魔物って、
断定しちゃっていいの?』
「ん?」
『亜人種が来る可能性だってあるじゃん』
ミツルは首を横に振った。
「それはない」
アスモデウスが身を乗り出す。
『なんで〜?♡』
「それが出来るなら」
「最初から全種族を攻め込ませればいい」
「わざわざ恐竜だけ送り込む理由がない」
レヴィアタンは少し考え込む。
『……つまり』
『出来なかった?』
「ああ」
「境界を崩壊させるのに力を使い過ぎたのか」
「理由は分からない」
「でも」
「結果として呼び出せたのは恐竜四体だけ」
「そこには何か制限があると考える方が自然だ」
『なるほどねぇ♡』
アスモデウスが嬉しそうに笑う。
『ミツルもいいねぇ♡』
「おいおい」
「色欲だからって乗り換えるの早すぎだろ」
『だってぇ♡』
『ユウにちょっかい出したら、
怒られるんだもん♡』
アキラが呆れ顔になる。
「そら当たり前や」
「レイナがおるんやからな」
レイナが少し照れながら俯く。
「……」
俺は思わず苦笑した。
「話が脱線してるな」
ミツルが咳払いを一つする。
「コホン」
「話戻すぞ」
全員の視線が集まる。
「お前ら」
「神について知ってることを全部教えてくれ」
魔王達は顔を見合わせた。
最初に口を開いたのはベルゼブブだった。
『そんな事言われても…』
『創世神ってことくらいしか知らないよ?』
「それだけか?」
ミツルが眉をひそめる。
「名前とか」
「そういうのも分からないのか?」
『知らないなぁ』
ベルゼブブは他の魔王達を見る。
『みんなは?』
ルシファーは俯き。
アモンは静かに首を振る。
マモンも。
アスモデウスも。
レヴィアタンも。
誰一人として口を開かない。
静寂が流れた。
その沈黙を破ったのは……。
ベルフェゴールだった。
『……創世神の名前は…』
眠そうな目をゆっくり開く。
『ノヴァ』
その場の空気が止まった。
全員が思わずベルフェゴールを見る。
ベルフェゴールは大きく欠伸を一つした。
『この話は……』
『ちょっと長くなるけど……聞く?』
静まり返るダイニング。
誰も言葉を発せない。
創世神ノヴァ。
その名が、
俺たちの平穏を壊し続ける元凶。
俺は殺意を隠すのに必死だった。




