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第70話 答えのない夜


オニキス 正門前


ラファエルが去った後、

俺たちはしばらくその場に立ち尽くしていた。


静かな夜風だけが吹き抜ける。


最初に口を開いたのはアキラだった。


「……あの天使、何しに来たんやろな」


俺は夜空を見上げる。


「……まあ」

「天使にも色んな奴がいるってことだろ」


サイが腕を組む。


「人間と同じだな……」


その言葉に、ルシファーが目を閉じた。


『……ラファエル』


アモンが横目で見ながら笑う。


『おっ、ルシファー』

『元同族としては思うところがあるのか?』


ルシファーは首を振る。


『そんなことはない』


マモンが肩をすくめる。


『まぁ、気にするなと言われても無理だろう』


ミツルが苦笑した。


「……やっぱり、お前ら悪魔っぽくないよな」


「わかる!」


ナツも笑う。


「冷酷さは感じるんだけどさ」

「どっちかっていうと人間っぽいんだよな」


ベルフェゴールが眠そうに呟く。


『いやぁ……』

『お前らが悪魔寄りな気がする……』


『うんうん♡』


アスモデウスも頷く。


『特に……』


魔王達の視線が一斉に俺へ向く。


「……何が言いたいんだ」


俺は睨み返した。


レヴィアタンが苦笑する。


『その眼』

『人間がしていい眼じゃないでしょ』


「俺は昔から目付き悪いんだよ!!」


その瞬間。


『「あはははは!!」』✕7


重苦しかった空気が一気に崩れた。


ジュンが笑いながら手を叩く。


「とりあえず今日は寝ようか」

「猶予はあるみたいだし」


「ああ」


俺も頷く。


「流石に今日は疲れた」


その後。


魔王達へ空いている部屋を案内し、

全員がそれぞれの部屋へ戻っていった。




オニキス ユウの部屋


「はぁ……」


俺は椅子へ腰掛ける。


テーブルの煙草を手に取り、

火を点けた。


煙がゆっくり天井へ昇る。


「決戦まで七日、か……」


煙を吐きながら考える。


今やれること。


今考えるべきこと。


神の手札は。


本当に七大天使だけなのか。


「……いや」


違う。


神が直接動く可能性だってある。


そもそも。


神って何なんだ。


キリスト?


仏教?


俺は宗教なんて信じたことがない。


知識もほとんど無い。


「神って言われたら……」


「遊○王の三幻神しか思い浮かばねぇんだけど」


思わず苦笑する。


「……懐かしいな」


少しだけ昔を思い出した。


「……って」

「違う違う」


頭を振る。


「脱線し過ぎだろ…」


俺は煙草を灰皿へ押し付ける。


そして新しい一本に火を点けた。


(……現状)

(攻めて来ても負ける要素がない)

(下級天使の数が増えたとしても、

こっちが不利とは思えない)


煙をゆっくり吐く。


「だからこそ…分からねぇ」

「あいつらの勝ち筋は何だ……」


神はここまでずっと人間を利用してきた。


なら今回も。


俺達がまだ知らない何かが。


「はぁ……」

「わっかんねぇ」


コンコンッ


扉が叩かれた。


「入れよ」


ガチャッ


静かに扉が開く。


レイナだった。


「ユウ……」

「大丈夫?」


俺は苦笑する。


「うーん……」

「多分?」


レイナは俺の隣まで歩いて来る。


「……勝てる?」


その声は少し震えていた。


俺は迷わず答える。


「勝つさ」


レイナは安心したように笑う。


でも。


すぐ真剣な顔へ戻った。


「……何か気になるの?」


「ああ」


俺は煙草を見つめる。


「天使だけなら負ける要素がない」

「勝ち目が無い状況で攻めてくるほど」

「馬鹿じゃない…と思う…」

「多分…まだ俺たちが知らない札がある」


レイナは静かに頷いた。


「……そっか」

「そうだよね」


部屋に沈黙が流れる。


時計の音だけが響く。


しばらくして。


俺は大きく息を吐いた。


「……やめだ!」


レイナが驚く。


「え?」


「明日ミツルに考えさせる!!」


「えぇ!?」


思わず笑ってしまう。


「こういうのはあいつの仕事だ」

「俺が一人で悩んでも仕方ねぇ」


レイナも吹き出した。


「ふふっ……」

「それもそうね」


笑顔が戻る。


その顔を見ていると、

少しだけ肩の力が抜けた。


俺はゆっくり立ち上がる。


レイナの前まで歩く。


「レイナ」


「ん?」


「アスモデウスの件」

「少し不安にさせたよな」


レイナは目を逸らす。


「……ちょっとだけ」


「悪かった」


俺はそう言って、


そっとレイナを抱き寄せた。


「え……」


「埋め合わせ」


レイナは少し照れながら笑う。


「そんなの……」

「ずるい」


俺は優しく唇を重ねた。


短く。


穏やかな口づけ。


離れると、

レイナは真っ赤な顔のまま俺の胸へ額を預けた。


レイナの温もりを感じながら、

俺は再度、必ず守ると心に誓った。


決戦まで、あと……六日。


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