第65話 竜種と魔王
オニキス ダイニング
部屋には静かな空気が流れていた。
俺は目の前にいる魔王達を見る。
普通なら、警戒するべきなのかもしれない。
でも、今はそういう場合じゃない。
同じ敵と戦う仲間……。
「まあ……」
「とりあえず適当に座れよ」
俺以外のみんなはダイニングの椅子へ。
魔王達はテレビ周りのソファへ腰掛けた。
奇妙な光景。
竜種と魔王。
あと猫又……。
本来なら交わるはずのない存在が、
同じ場所に集まっている。
俺は一度息を吐いた。
「ふぅ…、まずは……」
頭を下げる。
「すまなかった」
その瞬間。
部屋の空気が止まった。
ナツ達も。
魔王達も。
全員が驚いている。
「共闘が決まった時点で」
「ベルフェゴールに情報を与えて、
あんた達との合流を促すべきだった」
頭を下げたまま続ける。
「俺の判断が間違ってた……」
沈黙……。
すると、ルシファー?が口を開いた。
『……その通りだと言いたいところだが』
低い声。
『今回は我らが浅はかだった』
俺が顔を上げる。
ルシファーは静かに続けた。
『知らない世界に来たのだ…』
『ならばまず、情報を集めるのが最善…』
『貴様……貴殿らに話を聞きに来るべきだった』
静まり返る室内。
その時。
「まあまあ」
アキラが手を叩いた。
「とりあえず共闘するんやろ?」
全員を見る。
「なら自己紹介でもしよか」
アキラが立ち上がる。
「わいは火竜の相方の」
「焔崎 晃や」
その明るい声で、
少しだけ空気が軽くなる。
ミツルが苦笑した。
「こういう時のお前は最強だな……」
そこから。
順番に自己紹介が始まった。
岩倉 充。
五十嵐 那津。
凪原 雅貴。
鳴神 砕。
日向 純。
黒瀬 麗奈。
全員が名乗り終えた頃。
ルシファーが口を開く。
『我らも名乗った方がいいな』
「いや」
俺は首を振った。
「失礼になるかもしれないが」
「多分必要ねぇよ?」
『?』
ルシファーが首を傾げる。
『なぜだ?』
俺は魔王達を見る。
「想像通りの見た目だからな」
指を向ける。
「姉さんは」
「ルシファーだろ?」
ルシファーが目を細める。
「黒い天使の翼」
「堕天使ってすぐ分かる」
次に。
「そこの青髪の綺麗な姉さんがレヴィアタン」
『……へぇ』
レヴィアタンが少し笑う。
「いかにも暑苦しいあんたがアモン」
『おい』
「金ピカで成金みたいなのがマモン」
『……』
「んで」
「昆虫みたいな羽を生やした姉さんがベルゼブブかな?」
沈黙。
次の瞬間。
『おい!!』
アモンが立ち上がる。
『随分態度が違うんじゃねぇか?』
マモンも眉をひそめる。
『同意だな』
『俺とアモンを下に見ているのか?』
俺は首を傾げる。
「下に見てるとかじゃない」
「美女がこれだけいたら」
「男のあんたらは霞むだろ?」
『なんだと!!』
『貴様!!』
その瞬間。
「やめなさい!!」
ゴンッ!!
レイナの拳が俺の頭に落ちた。
「イテッ!!」
「会ったばかりの人達に失礼でしょ!!」
「いや、こいつら人じゃなくて悪……」
ゴンッ!!
「うるさい!!」
「だから痛いって!!」
その光景を見て。
アモンがベルフェゴールを見る。
『おいベル』
『お前が会った時もこんなだったのか?』
ベルフェゴールは少し考える。
『うーん……』
『まあ、慣れたらこんな感じだった』
ミツルがため息を吐く。
「悪いね」
「こんな緩い感じで」
ミツルは真剣な表情に変わる。
「まあ真面目な話は俺が引き継ぐわ」
「まず今の世界状況について」
「核の影響から考えて」
「極東は……恐らく壊滅」
「大統領の発言から世界を道連れにする気なら龍華にも核が落ちてる可能性がある」
「でも、正直わからない…」
静まる室内。
「日輪は北の大地と東北は守れたが」
「政府機能も停止…」
「復旧はほぼ不可能」
そして。
「星条連合は……」
「首都以外は、ほぼ壊滅したと思っていい」
「しかし、首都も汚染は免れないだろう」
誰も言葉を発さない。
魔王達が守ろうとした場所。
そこがもう、生命が住めない場所になっている。
ミツルは続ける。
「問題はここからだ」
「神は世界を消そうとしている」
「これもあくまで俺の予想だが」
「次はイレギュラーの排除だと俺は思っている」
俺は静かに口を開いた。
「俺も、次の狙いはここだと思う」
「…これからどうするか……」
「…一緒に考えようぜ」
俺はルシファーに握手を求める。
『……あぁ…』
ギュッ
ルシファーは受け入れてくれた。
神のこれからの動きは分からない。
しかし、神という同じ敵を持つ俺たちは……。
共闘の道を歩み始める。




