第64話 逃げる理由
星条連合首都 リバティア
空が核の光で埋め尽くされていた。
悪魔達の攻撃と核ミサイルがぶつかり合い、
夜空で無数の爆発が起こる。
ドォォォォォン!!
一発。
また一発。
核は次々と破壊されていく。
だが。
数が問題だった…。
『くそっ……!!』
アモンが炎を放ち、
一つの核を焼く。
しかし。
その直後。
別の核が迫る。
『しつけぇな!!』
下級悪魔達も必死に迎撃する。
だが。
核の爆発に巻き込まれ、
次々と消えていく。
一人。
また一人と。
悪魔軍は、
みるみる減っていく。
『……』
ルシファーは黙って見ていた。
魔王なら、
迎撃することは容易。
だが、その間にも。
地上の人間達は、
恐怖に震え。
迎撃によって核を爆発させれば、
放射能によって汚染されていく。
そして、もし迎撃を止めれば。
それこそ神の望む結末。
人間達は自らの兵器で滅びる。
『人間は、なんと愚かなんだ……』
ルシファーが呟く。
その時だった。
空間が歪み、
黒い裂け目が開いた。
『ルシファー……』
気の抜けた声。
魔王、ベルフェゴール。
『はぁ、なんで俺はめんどい役回りばっかりなんだろ……』
魔王達が振り返る。
レヴィアタンが目を細める。
『ベルフェゴール!』
『なぜここに?』
ベルフェゴールは頭を掻きながら答える。
『闇竜に頼まれた…』
一瞬。
空気が変わる。
『……何をだ?』
アモンが聞き返す。
ベルフェゴールは空を見る。
降り注ぐ核。
『もう間に合わないって…』
その言葉に。
ルシファーが視線を伏せる。
『……』
ベルフェゴールは続ける。
『だからお前らを連れて、逃げて来いってさ……』
沈黙。
アモンが睨む。
『……は?』
『逃げる?』
『俺達が?』
ベルフェゴールが頷く。
『そう』
『一回引くんだ』
瞬間。
アモンの表情が険しくなる。
『ふざけるな!!』
炎が揺れる。
『ここで逃げれば!!』
『人間達が死ぬ!!』
『神の思う壺だろうが!!』
ベルフェゴールは黙り、
呟くように続ける。
『分かってるよ…』
『でも、これ以上こっちの被害が出る方が問題なんだ……』
魔王達は何も言えなかった。
こうなった以上、神と天使との戦闘に備えるべきなのはわかっていた。
しかし、
ベルフェゴールは空を見上げた。
『人間たちが核を使った時点で……』
『俺達にはもう出来ることはないんだ……』
魔王たちの迎撃の手が止まり、
下級悪魔たちが必死に迎撃し続ける。
ルシファーがベルフェゴールを見た。
『どういう意味だ…』
『人間が核を使うと知っていた神……』
『核の存在すら知らなかった俺達……』
『勝てるわけはなかった……』
アモンが激昂する。
『ベルフェゴール!!』
『てめぇ、何を弱気になってやがる!!』
『事実だろ…』
『俺達はこっちに来て何をした…』
『何もできてないだろ……』
静寂。
ルシファーは理解した。
神が用意した終末。
その時。
ベルフェゴールが黒い裂け目を広げる。
『だから』
『ここから離れる』
『嫌なら……』
一瞬。
ベルフェゴールの魔力が膨れ上がる。
『俺が無理やり連れてく』
魔王達が驚く。
『お前が……?』
普段。
何事にも面倒そうなベルフェゴール。
その彼が。
本気だった。
『俺だってさ』
『やるときはやるんだよ』
次の瞬間。
黒い裂け目から影が伸び、
魔王達の足を絡め取る。
『おい!!』
『ベルフェゴール!!』
アモンの叫び。
『俺はまだ!!』
『はいはい…』
パチンッ
ベルフェゴールが指を鳴らす。
『そういうのいいから』
『逃げるよ』
黒い裂け目が広がり次々と、
魔王達を飲み込んでいく。
ベルフェゴールは振り返り、
核の降り続くリバティアを見下ろす。
『ノヴァ…』
『お前は本当に……』
言葉の続きを飲み込む。
次の瞬間。
悪魔は星条から消えた。
オニキス ダイニング
黒い裂け目が開き、
次々と魔王達が姿を現す。
ナツ達が出迎える。
「おっ……」
「来たな……」
最後にベルフェゴールが出てくる。
『疲れた……』
そして、俺を見た。
『全員連れてきたよ……』
俺は魔王達を見て、
静かに答える。
「お疲れ様」
ルシファーが聞く。
『お前が…』
「あぁ、俺は闇竜の相方」
「影宮 悠だ」
「とりあえず……話そうか…」
寂しさが漂う中。
竜種と魔王が集った。




