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第61話 喰らう闇


北の大地南部 沿岸


ベルフェゴールは空を見上げた。


『うわぁ……』


思わず声が漏れる。


数千年生きてきた魔王。


そんな彼ですら引いていた。


人類が生み出した悪意の塊。


核兵器。


その群れが遠くから日輪に向かってくる。


「少し飛ぶぞ」


竜化(弱)。


黒い翼を広げ、

地面を蹴る。


俺は一気に空へ飛び上がった。


『はぁ……』


ベルフェゴールも浮かび上がる。


『折角だから闇竜の力見せてもらうか……』


俺の後を追ってくる。


俺達は海上へ出て、

ある程度の高度まで上昇すると停止した。


「ここらへんか……」


俺は静かに目を閉じた。


探知を開始する。


魔力を広範囲へ広げていく。


海。


空。


大地。


龍華方面から飛来する無数の悪意。


俺は目を開いた。


「よし」


小さく呟く。


「核は龍華の方からしか来てないな」


なら。


遠慮はいらない。


俺は静かに息を吐く。


そして。


「暁闇やるぞ!」


《あいよっ!》


闇が渦を巻き、

黒い魔力が空へ広がる。


空気が震えた。


竜化(強)。


ドクンッ。


心臓が脈打つ。


身体が黒い球体に包まれ、

球体は、脈打つように膨張する。


ドクン。


ドクン。


そして…。


ビシビシ、ビシッ


球体にヒビが走る。


内側から闇が溢れ出した。


バリンッ、パラパラパラ


球体が砕け散り、

パラパラと闇の欠片が舞う。


姿を現す、巨大な闇竜。


ベルフェゴールが目を細める。


『これが闇竜の魔力……』


周囲の空気が軋む。


海面が震える。


俺はゆっくりと口を開く。


『加減をする必要はない…』


黒い魔力が収束する。


『喰らえるだけ喰らってやる!!』


俺は天を見上げた。


口の前へ魔力を集める。


膨大な闇。


圧縮。


圧縮。


圧縮。


そして、

巨大な暗黒球が完成する。


まるで小さなブラックホール。


周囲の光すら歪んで見えた。


闇淵あんえん


放つ。


瞬間。


暗黒球が前方へ飛び出す。


ドォォォォォ……。


周囲の空気が吸い込まれ。


海水。


雲。


魔力。


全てを無差別に喰らい始めた。


ベルフェゴールが目を細める。


『周りの物を無差別に喰らうから海上に出たのか……』


俺は小さく笑う。


『まぁそれだけじゃないんだがな……』


俺が龍華の方向を見る。


次の瞬間。


空の彼方。


無数の悪意が現れた。


一つや二つではない。


十。


二十。


その先にもまだ続いている。


約五十発。


終末の体現。


龍華から放たれた核ミサイルの群れが、

日輪全土へ降り注ごうとしている。


俺は掌を前へ突き出した。


『喰らえ』


闇淵がさらに膨張し、

吸引力が増大する。


龍華から北の大地へ向かう核。


次々と軌道を逸らされ、

引き寄せられる。


そして。


闇へ呑まれる。


一つ


五つ


十発。


爆発すら許さない。


存在ごと喰らい尽くす。


俺は掌を動かした。


闇淵も連動して動き出す。


東北方面。


そちらへ向かう核へ照準を合わせる。


闇淵が移動し、

再び、核を喰らう。


次々と。


容赦なく。


だが、全ては無理。


既に。


関東より西へ向かっていた核は、

日輪上空へ到達していた。


それを見た俺は、

掌を握り締める。


闇淵が急速に縮小し、

跡形もなく消え去る。


静寂。


残ったのは海風だけだった。


ベルフェゴールが苦笑する。


『これが闇竜……』


遠い目をする。


『一対一だったら絶対勝てないね……』

『にしても、とんでもない数を喰ったな…』


俺は竜化(強)を解除し、

再び竜化(弱)の姿へ戻る。


「ベルフェゴール」


俺は振り返った。


「帰るぞ」


『残りはいいのか?』


ベルフェゴールが聞いてくる。


俺は静かに答える。


「どのみち間に合わねぇよ……」


ベルフェゴールが黒い裂け目を開いた。


『じゃあ帰ろうか〜』


ベルフェゴールが帰れる喜びで、

ウキウキで先に中へ入る。


俺は最後に。


遠く空を見た。


西京都の方向。


俺は小さく呟く。


「自分たちの今までの行いを後悔して……死ね」


多分俺は恨んでいた。


助けた人たちから、

浴びせられた暴言…。


米澤組の襲撃…。


協力者の殺害…。


考えたら切りが無い……。


俺は日輪に背を向け、

黒い裂け目へ足を踏み入れる。


裂け目が閉じる。


その瞬間。


日輪各地は、

無数の核の破滅の光に包まれた。


そして、

数千万の生命が日輪から消えた。

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