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第57話 魔王達の来訪


オニキス 正門前


北の大地は雪が降り始めていた。


普段なら深々と降る初雪は、

空気を浄化してくれるように感じていた。


だが、

今年は違った。


重く、息苦しい。


空間そのものが、

目の前の二人を拒絶している。


男は、

気だるそうに欠伸をし。


美女は、

妖艶な笑みを浮かべる。


俺たちは、

正門前で二人と対峙していた。


みんなは戦闘態勢へ入っている。


俺は静かに二人を見つめた。


「あれが魔王……、怠惰と……色欲か?」


俺の言葉に男の魔王が反応した。


『…正解だよ』

『俺は、ベルフェゴール』

『こっちがアスモデウス』


『よろしく♡』


その瞬間。


俺の身体から、

自然と魔力が漏れ出し、

魔力が雪を揺らす。


ベルフェゴールの目の色が変わった。


『あー……』


気怠そうな声。


だが、

その目は鋭く俺を睨みつける。


『イレギュラーって君か……』


空気が止まる。


『……そりゃ神も焦るか……』


「……?」


意味が分からなかった。


俺だけじゃない。


全員が眉をひそめる。


だが次の瞬間。


ナツ達の魔力が一気に膨れ上がる。


殺気が雪を吹き飛ばした。


ベルフェゴールが露骨に引いた。


『……ちょ、ちょっと待てって!』


両手を上げる。


『戦うために来たんじゃない!』


「……どういうことや!」


アキラが炎を滲ませながら睨みつける。


空気がさらに張り詰めた。


だが、

アスモデウスだけは楽しそうに笑っていた。


『話し合いに来たのよ』


「……は?」


ジュンが困惑する。


マサキも警戒を解かない。


サイは無言で魔力を練っていた。


俺は二人を見つめる。


さっきも思ったが…。


……敵意がない。


少なくとも今は…。


ミツルが静かに口を開いた。


「話が見えないな」


アスモデウスが肩をすくめる。


『まぁ簡単に言うとね…』


妖艶な笑み。


『私達と組まない?って話』


沈黙。


そして真っ先に口を開いたのはナツだった。


「俺でも分かる……」


ナツは魔王を睨みつける。


「完全に罠だろ」


『うーん……』


ベルフェゴールが困ったように頬を掻く。


『やっぱりそうなるよなぁ……』


空気が止まる。


雪だけが静かに降っていた。


そして、俺が口を開いた。


「……いいぞ、入って」


「はぁ!?」


ナツが叫ぶ。


「おいユウ!!」


「本当に入れるつもり!?」


レイナも顔を青ざめさせた。


だが、

俺は視線を逸らさない。


俺は魔王に掌を向けた。


その瞬間。


オニキスを覆っていた結界に、

小さな穴が開く。


ベルフェゴールが目を丸くする。


『……いいの?』


「あぁ」


俺は静かに答える。


「最悪の場合でも、

お前ら二人なら俺一人でも何とかなる」


瞬間。


俺の魔力を、

二人の魔王へ叩きつけた。


空気が軋む。


アスモデウスの髪が揺れた。


そして。


彼女は嬉しそうに笑った。


『へぇ……♡』


細い指先を自分の口元へ当てる。


『君、いいね♡』


その瞬間。


ドロォォォ…。


凄まじい魔力が溢れた。


レイナだった。


黒い魔力が揺らぎ、

空気が歪む。


レイナが、

アスモデウスを睨みつけている。


『あら、残念』


アスモデウスが笑う。


『いい男なのに』


「てめぇ……」


レイナの声が低く唸らせ、

魔力が暴走気味に溢れ出した。


ベルフェゴールが頭を抱える。


『アスモデウス……』


深いため息。


『話し合いなんだから、

面倒事はやめて……』


『あは♡ ごめんごめん♡』


俺も小さくため息を吐いた。


「……とりあえず中入るぞ」


そして俺たちは、

二人の魔王を連れてオニキスへ入った。






オニキス ダイニング


静かな空間に、

緊張感が部屋に充満している。


ナツたちは、

警戒を解いていない。


特にレイナの殺意がすごい…、

背中からビリビリ伝わる……。


俺はソファへ腰を下ろす。


「まぁ、好きに座れ」


『へぇ〜』


アスモデウスが部屋を見渡す。


『結構いい部屋ね〜』


ベルフェゴールは気だるそうに、

俺の向かいのソファへ座った。


アスモデウスもその隣へ腰掛ける。


だが。


ナツ達は座らない。


全員、

いつでも動けるように立ったままだった。


俺はベルフェゴールを見る。


「早速、話を聞かせてもらおうか…」

「俺たちと手を組みたい理由を……」


ベルフェゴールは、

少しだけ目を細めた。


『……そうだねぇ』


交渉しに来たとは思えないほど、

やる気は感じられない。


そして。


ゆっくりと口を開いた。


『とりあえずさ…』


一瞬の沈黙。


『境界が崩壊した原因、知ってる?』


「……いや、知らない」


俺が答える。


すると、

ベルフェゴールは静かに呟いた。


『そうか……』


そして。


まるで世間話でもするように言った。


『実は……この事態を引き起こしたのは……』

『神の仕業なんだ……』

『しかも意図的にね…』


「…………は?」✕8


声が漏れる。


八人全員が、

完全に思考停止した。


ベルフェゴールが話を続けた。


『その目的は…、〝世界を消滅させる〟ためだね…』

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