表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

50/54

第50話 闇の供物


極東連邦首都 セーヴェルグラード


吹雪と鋼鉄に守られた軍都は、

今や崩壊の瀬戸際にあった。


分厚い城壁は砕かれ、

防衛砲台は潰され、

装甲列車すら横転して炎を上げている。


都市の中央を踏み荒らしていたのは、

山脈のような巨体……、

アルゼンチノサウルス。


全長百五十メートルを超える異形の首長竜。


現実の生物の常識など、

もはや意味を持たない災厄だった。


その巨脚が一歩踏み下ろされるたび、

道路は陥没し、

周囲の建造物が振動だけで崩れていく。


「第三区画、壊滅!」


「地下シェルター入口が埋まりました!」


「住民がまだ中に――!」


叫びは次の衝撃でかき消えた。


ドゴォン……!!


尾が薙ぎ払われ、

戦車隊が玩具のように宙を舞う。


砲撃も、

ミサイルも、

その巨体を止められない。


ただ進むだけで都市が死んでいく。




セーヴェルグラード 地下統制司令部


赤い警報灯が点滅し、

重苦しい空気が司令室を満たしていた。


巨大モニターには、

押し潰されていく首都の映像。


「第三防衛線、完全崩壊!」


「中央庁舎まで到達予測、十八分!」


「航空戦力、壊滅です!」


怒号の中、

大統領は無言でモニターを見つめていた。


将軍の一人が拳を握り締める。


「もう核を使うしか…」


別の老将軍が低く呟く。


「首都が落ちれば連邦は終わる」


その目には狂気が宿っていた。


「ならば周辺諸国へ報復核を放て」

「我らだけ滅ぶ理由はない」


「馬鹿な……!」


若い官僚が声を荒げる。


「世界そのものが終わるぞ!」


「勝てぬ世界など不要だ」


静まり返る司令室。


誰も否定しきれなかった。


この国もまた、

追い詰められていた。


大統領がゆっくり口を開く。


「……発射準備を――」


その瞬間。


バチンッ……


司令室の照明が一斉に落ちた。


端末も、

モニターも、

すべて沈黙する。


「な、何だ!?」


「非常電源を急げ!」


混乱の中、

誰かが震える声を漏らした。


「……下を見ろ……」


床一面に、

黒い魔法陣が広がっていた。


司令室だけではない。


都市全域の死体安置所、

病院、

戦場跡地。


積み上げられた死体から、

黒い霧が吸い上げられていく。




セーヴェルグラード中央区


アルゼンチノサウルスが首を振り上げ、

逃げ惑う住民たちへ影を落とす。


その足元で、

地面が脈打った。


ドクン……ドクン……


割れたアスファルトの裂け目から、

影が伸びる。


そして、

闇そのものを纏った女が姿を現した。


漆黒の外套。


背から伸びる六枚の黒翼。


手には禍々しい長槍。


その瞳は、

死体より冷たかった。


女は周囲を見渡し、

鼻で笑う。


『これが異世界か…随分と脆い』


低く響く声。


『だが、供物としては上等だ』


アルゼンチノサウルスが咆哮し、

巨脚を振り下ろす。


だが女は動かない。


踏み潰される寸前…。


ズドォォォン!!


黒槍が真上へ突き上がり、

巨脚を貫いた。


巨獣が絶叫する。


『面倒だな…』


女は空に上がり、

魔力を込める。


『そら、供物を用意してやったぞ』

『我が眷属よ、我が敵を蹂躙せよ!』


女がそういうと、

街に転がってる死体たちが、

魔法陣に飲み込まれる。


死体を飲み込んだ魔法陣から、

影が伸び…姿を表す。


下級悪魔の群れだった。


その数、約五十…。


『五百の供物でこれだけか…質が低い…』

『……行け…』


悪魔たちは一斉に巨体へ群がり、

肉を裂き、

骨を削り、

血を啜る。


数十秒後。


山のような巨体は、

悲鳴と共に崩れ落ちた。


沈黙。


助かった住民たちは震えながら跪く。


「す、救われた……」


「おぉ…神よ……!」


「……私達は見捨てられてなかった……」


『我が名はルシファー』

『頭を垂れよ、虫ども』


生者たちは泣きながら額を地につける。


地下司令部では、

誰もが顔面蒼白だった。


核すら使う前に、

より危険な何かが国を掌握した。


堕天使……ルシファー、

歓喜する民衆を見下ろしながら嗤う。


『愚かな家畜どもだ』


その背後で、

さらに無数の魔法陣が灯り始めていた。


『さあ、次の供物を寄越せ』




竜種の精神世界(ナツ視点)


「はぁ…はぁ…、畜生……」


サイが膝をつく俺に近寄ってくる。


「十秒か…、まあ成長は認めるけどな」


「…お前が慰めか?」

「……珍しいこともあるもんだな」


「成長〝は〟な?」


「うるせぇな!!」

「大体、俺が普通だわ!!」

「お前らが異常なんだよ!!」


俺とサイが揉めていると、

暁闇が精神世界に姿を現した。


《おっ、やってるな〜》


「暁闇、なにかあったのか?」


《ちょっとみんな集まってくれるか?》


その言葉で人間六人と、竜種六体が、

暁闇のもとに集まった。


すると、万雷が口を開いた。


《ったく、何だよ暁闇……ん?》


万雷が周りを見渡す。


《ユウは来ないのか?》


《あぁ、休めって言って置いてきた》

《境界の崩壊から、

ずっと気を張りっぱなしだったからな》


話を聞きながら赭土が暁闇に近寄る。


《なるほどな…、じゃあ話を聞かせて貰おうか》


《あぁ…、どうやら星条と極東に、

天使と悪魔が出てきた》


暁闇の言葉にアキラが反応する


「へー、天使と悪魔かいな、強そうやな」


《今は一体ずつしか上位種が出てきてない》

《顔ぶれを見るに、まだまだ出てくるだろうな》


赭土が真剣な顔で問う。


《その口ぶりだと顔見知りのようだな》


《そりゃそうだろ?》

《どっちも七大天使と七大魔王の一角だもん》


………。


《「はああああ?!!!!」》✕6

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ