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第46話 死の悲しみ、死の資源


オニキス ダイニング


白い光が差し込む中、

ミツルたちが視線を合わせ立ち上がる。


アキラが腕を回しながら口を開いた。


「よし!」

「ほな、わいらも修行に行ってくるわ」


ミツルが頭を抱えながら苦笑する。


「はぁ〜……またボコられるのかぁ…」


ジュンはミツルを見ながら静かに微笑んだ。


「大丈夫…死にはしない……多分…」


マサキが腕を組んで俯く。


「……まあ荒療治でも、

強くなるしかないからな…」


シュゥゥゥ、ブンッ……


四人は俺とレイナに視線を送りながら、

精神世界に消えて行った。


俺はみんなを見送りながら、

小さく息を吐いた。


「……頼んだぞ…サイ…」


「ねぇ、ユウ」

「カナの顔見に行ってもいい?」


「あぁ…」

(まぁ…気になるよな……)




オニキス ナツの部屋


静けさだけが残った部屋。


俺がベッド横の椅子に座り、

レイナがカナの顔が見えるように、

ベッドに座った。


レイナはカナを撫でながら、

心配そうに見ていた。


「……ねぇ、ユウ」


レイナが視線を落としたまま呟いた。


「ちょっと……話してもいい……?」

「昨日のこと……」


「……無理に話さなくていいんだぞ?」


レイナは小さく首を振る。


「ううん、伝えたいの…」

「橋本さんの生き様を……」


レイナは向き直り俺の顔を真剣に見る。


「……あたし達はテレビに釘付けになってた……」


レイナの声は震え、

指先は布団をぎゅっと掴んだ。


「……反応するのが遅れたの…」

「仲間だと思ってたから……」


「………」


「最初に石田の行動に気づいたのは、

鷹宮さんだった…」


呼吸が乱れる。


「皆さん逃げてって……」

「声が聞こえた瞬間に、

あたしはカナを抱えて窓から飛び出して、

橋本さんは身体強化で耐えたみたいだけど、

みんなは……」


俺は黙ってレイナの話を聞く。


「あたしと橋本さんはその後、

カナを守りながら石田と戦闘になって……」

「……強かった…」


「そうか……」


「でも、あたし達を倒すのに時間がかかると思ったんでしょうね…」

「石田は大技をカナに放ったの……」

「あたしは必死にカナに覆いかぶさって……」


「……うん…」


「でも……その時、橋本さんが……

カナとあたしの前に立って……」


涙が頬を伝った。


「気付いたら……あたし、

生きてて……橋本さんは黒焦げに……」


言葉が途切れた瞬間、

俺はそっとレイナの肩にそっと手を回した。


「……もういい」


「……橋本さんは……あたし達を守って……」


「最後まで…かっこいい人だった……」


しばらく、ただ泣き声だけが部屋に満ちた。




やがて涙がおさまった頃、

レイナは小さく呟いた。


「……あたし、生き残った意味って……あるのかな」


俺は即答した。


「あるに決まってるだろ」

「少なくとも俺は……」

「だから…俺のそばにいてくれ……」


俺はレイナの顔を見ながら、

強く抱きしめた。


消えてしまわないように……。


レイナは驚いたように俺を見て、

弱く、でも確かに微笑んだ。


「……うん」


俺たちは知らなかった、

世界が破滅に向かってることを……。






龍華共和国首都 昇龍京(しょうりゅうきょう)


昇龍京の中心部。


高層建築が並ぶ商業区は、

もはや原形を失っていた。


ビルは砕け、

道路はえぐれ、

スピノサウルスが咆哮しながら、

住民を捕食していた。


黒煙と血の匂いが混ざった風が、

街を撫でていく。


「う、うわああああ!!」


「助けてっ……誰か……!」


逃げ惑う市民。


バキッ…、ボリボリッ…


スピノサウルスがひと噛みするたびに骨が砕け、赤い霧が舞った。


その地獄の只中……。


「前衛部隊、構えッ!」


怒号とともに、

武装兵士部隊が展開する。


前に出た兵士は四人。


彼らの後ろには兵士が三十〜四十人ほどが待機し、

さらに後ろに兵士よりも多い、

拘束された貧困層の住民たちが、

列を成していた。


その数、軽く五百人を超える。


彼らは、泣き叫び、震え、罵声を上げている。


だが兵士たちは一切振り返らない。


すると、ひとりの兵士が前へ進んだ。


手に握られたのは、青白い刃を持つ青龍刀。


柄には無数の管が接続され、

背後の巨大な金属箱へと伸びている。


金属箱の中には、

ぎゅうぎゅうに押し込められた住民たち……百人。


男が刀を振り上げると同時に、

箱の中の住民が絶叫を上げた。


「痛いッ!!やめてくれ!!」


「殺さないで!!お願い!!」


「何が国家主席だ!お前が死ねぇ!!」


「お母さん……」


箱全体が震え、

まるで生きた巨大な心臓のように脈打つ。


兵士の刃には風がまとわりつき、

刃が肥大化していく。


「……青龍斬…」


青龍刀が振り下ろされる。


ズバァッ…


鋭い風の刃が空気を裂き、

スピノサウルスの尻尾を断ち切る。


ギャオォォォオ!!


巨大な尾が宙を舞い、

地面へ叩きつけられた。


だが代償はあまりにも重い。


箱の中では……。


三十人ほどが、ぐったりと動かなくなっていた。


兵士は気にする様子もない。


「魔力を検知!!」

「攻撃来ます!!」


「玄武、前へ!」


大盾を構えた兵士が飛び出した。


彼の背後にも、

同じように住民を詰め込んだ箱。


箱が軋み、住民たちが泣き叫ぶ。


スピノサウルスは怒り狂うように、

口元に膨大な魔力を収束し始めた。


水の粒子が一点に集まり…。


「…来るぞッ!」


高圧水流が放たれた。


スパッ…


周囲のビルは切り裂かれ、

道路は抉れ、車は真っ二つ。


だが玄武盾の男は動じない。


「玄武甲壁!!」


盾が肥大化し、

巨大な魔力壁を形成する。


水流が壁に激突し続け、

後ろの地面が振動する。


盾持ち兵士の背後で、叫び声が響いた。


「司令官!!」

「このままでは、エネルギーが!!」


パソコンを操作していた兵士が叫ぶ。


司令官らしき男が即答した。


「朱雀の供給を玄武に回せ!」


「はっ!」


朱雀槍の箱に繋がっていた魔力管が切り替わり、

玄武盾へと新たなエネルギーが流れ込む。


同時に……、

二つの箱の住民たちが同時に悲鳴を上げた。


「ぎゃああああああ!!!」


スピノサウルスの水流を防ぎ切ったその直後、

両方の箱では、半分ほどが力尽きていた。


息があるのは、どちらも約五十人だけ。


司令官が言い放つ。


「玄武のエネルギーを補充しろ」


箱の扉がガコンと開く。


内部から押し板が突き出すように動き、

生きている者も、死者も、

ぐちゃぐちゃに外へ押し出された。


「補充開始!!」


兵士たちが新たな住民を、

叫ぶのを無視して容赦なく押し込む。


「やめてくれえええ!!」


「ママ!!…ママ!!」


「そんな……そんな……!」


バンッ。


箱が閉まる。


押し込まれた子どもの靴が、

片方だけ外に転がっていた。


沈黙。

そして、再び悲鳴が満ちた。


この兵器は……、

まぎれもなく、〝世界の闇〟を具現化した装置だった。




これが、近く訪れる世界の破滅のカウントダウンであることを。


ユウたちはまだ知らない……。

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