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第42話 七竜、災厄と化す


オニキス ダイニング(ユウ視点)


静かだった。


誰も、何も言わない。


ただ、みんなの魔力が混ざりあって、

渦巻いている。


……息が詰まる。


考えるな。


考えたところで、結果は変わらない。


俺は守れなかった。


それだけのこと…。


椅子を引く。


ギィ……


立ち上がる。


「……ユウ?」


ナツの声。


「どこ行くんだよ」


答えない。


そのまま、扉へ向かう。


…止まる理由はない。


背後で、椅子が鳴る。


「……俺も行く」


ナツだった。


振り返らない。


さらにもう一つ。


ガタンッ。


「……わいも」


アキラ。


足音が近づく。


並ぶ。


言葉はない。


だが分かる。


このまま終わらせる気はない。


扉に手をかける。


その瞬間。


「……待て」


低い声。


マサキだった。


足が止まる。


「行く気か?」


ミツルの声で俺たちは振り返る。


マサキとミツル。


二人とも、座ったままこちらを見ている。


「……そうだ」


短く答える。


ミツルが小さく息を吐く。


「……やめとけ」

「また同じことになる」


言葉が、刺さる。


「感情のまま動いて、何も守れなかっただろ」


沈黙。


否定は、出来ない。


マサキが続ける。


「次は、誰を失う?」

「親友失ったらお前終わるぞ?」


ナツの肩が、わずかに揺れる。


アキラは、黙ったままだ。


俺は、何も言わない。


……理解している。


だからこそ、止まれない。


その時。


ミツルが、ぽつりと呟いた。


「日輪を討つのは否定しない」

「……だが、やり方を変えろ」


視線が、集まる。


「恐竜の時のこと、覚えてるだろ」

「魔力に当てられた人間が、どうなったか」


魔物化。


ミツルの目が、細くなる。


「同じ状況を、〝意図的に〟作る」


空気が変わった…。


マサキがゆっくりと頷いた。


「……直接殺す必要はない」

「環境を変えればいい」


俺は、目を閉じる。


そして。


開く。


「……環境を変える…か…」


ナツが、静かに頷く。


アキラも、小さく息を吐いた。


誰も止めない。


誰も迷わない。


理解している。


これは、選択だ。


俺たちは…。


それを選んだ。


「……行くか…」


誰も答えない。


だが。


全員が、立ち上がった。






西京都上空(人間視点)


逃げていた。


瓦礫を踏み越え、転びながら。


後ろから、何かが来る。


見たくない。


見れば終わる。


「はぁっ……はぁっ……!!」


息が切れる。


誰かが、叫んだ。


「上……!」


思わず空を見る。


黒い影。


人の形をしているが、

それは、明らかに人間じゃなかった。


七つの影。


空に並んで動かない。


ただ、そこに〝いる〟。


その瞬間。


音が、消えた。


風も。


叫びも。


何もかも。


呼吸だけが、やけに大きく聞こえる。


息がしづらい。


胸が潰れそうだった。


一人が前に出る。


黒い翼がわずかに揺れた。


「……やるぞ」


低い声。


次の瞬間。


世界が歪んだ。


何かが七人から滲み出る。


見えないのに、分かる。


重い。


苦しい。


身体が軋む。


「……あ、れ……?」


隣にいた男が膝をつく。


ブチッ、ブチブチブチッ…


腕が膨れ、

皮膚が裂ける。


青い何かが、内側から溢れ出す。


「やめろ……やめろやめろやめろ!!」


叫び。


絶叫。




別の場所。


親子が走っていた。


「こっちよ!!」


母親が、子供の手を引く。


だが。


突然影が落ちてきた。


上から降りてきたそれは、

無数の脚を持つ、青い塊だった。


母親が振り返る。


子供の腕が、そこにあった。


だが…、

その先は見えなかった。


「いやああああああああ!!」


悲鳴が響く。


グチャッ


だが…すぐに途切れた。






日輪作戦司令部


「迎撃許可承認!!」


「目標確認、撃て!!」


空を裂く音。


戦闘機。


ミサイル。


砲撃。


一斉に、上空の影へ向かう。


次の瞬間。


影宮が、手を上げた。


掌を兵器へ向ける。


「……黒淵(こくえん)


それだけ。


静かに。


空間が、歪む。


闇が開く。


穴だ。


光を飲み。


音を消す。


「命中します!!」


だが。


…何も、起きない。


「……は?」


ミサイルが消える。


戦闘機が、吸い込まれる。


砲撃も、戦車も。


全部。


何も残らない。


「な、なんだあれは!!」


「聞いてないぞ!!」


「誰の命令だ!!」


通信が乱れる。


叫びが飛び交う。


「竜に手を出すべきじゃなかったんだ!!」


誰かが叫び。


誰かが否定する。


責任を押し付け合う。


だが…。


もう遅い。


七つの影は、動かない。


ただ見ている。


下で起きている全てを。


泣き声。


悲鳴。


罵声。


裏切り。


殺し合い。


ただ、

理解した。


……人間はこうなる道を、

自分たちで選んだということを…。

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