第36話 雷竜の心
精神世界(アキラ視点)
ブンッ……
わいらは見知らん場所に立っとった。
いつもとちゃう景色。
空は黒い雷雲が渦巻いとる。
雷が絶え間なく落ちとった。
ドォォォン!!
地面が揺れる。
ナツが顔をしかめる。
「……なんだよこれ」
マサキが周囲を見渡した。
「サイの影響だろうな」
その瞬間。
轟音が響いた。
『グォォォォォォォ!!』
巨大な影が空を裂く。
わいらは見上げた。
そこにおったんは…、
二体の雷竜。
サイと万雷や。
サイが雷を纏って、
暴れ回っとる。
そのサイを、
万雷が組み付いて踏ん張っとった。
万雷はすでにボロボロ…。
《チッ……》
《やっと来やがったか》
ナツが言う。
「サイは!?」
万雷はサイを睨んだまま答えた。
《見りゃ分かんだろ》
《怒りで理性が吹き飛んでる》
ドォォォォン!!
雷が地面に落ちる。
衝撃で地面が割れた。
万雷が歯を食いしばる。
《俺が抑えてるが……》
《長くはもたねぇぞ》
その時や。
わいの足が、
勝手に前に出とった。
ナツが言う。
「待てアキラ」
わいは振り返らへん。
「これはわいの仕事や」
ナツが眉をひそめる。
「何言って……」
わいは笑った。
「サイはわいが殴る」
そう言うて、
わいは歩みを進める。
サイがこっちを見た。
黄金の瞳。
せやけど、
理性は残っとらん。
『グォォォォ!!』
《くっそっ…》
ドオォンッ
サイは万雷を吹き飛ばし、
わいに突っ込んでくる。
ドォォォン!!
巨大な腕が振り抜かれた。
わいの身体が吹き飛ぶ。
地面を転がり、
砂煙が上がった。
ミツルが叫ぶ。
「アキラ!!」
……痛い。
(せやけどな…)
わいはゆっくり立ち上がる。
口の端から血が流れとった。
それでも、
わいは笑った。
「おい、サイ」
サイが唸る。
わいは拳を握った。
「まだ終わっとらんぞ」
その瞬間。
わいの頭に、
昔の光景がよぎった。
雨の日。
中学のグラウンド。
泥だらけの地面。
サイが睨んどった。
「ムカつくんだよお前」
わいも睨み返す。
「こっちのセリフじゃボケェ!!」
次の瞬間。
わい達はガードもせんと、殴り合う。
殴り。
蹴り。
泥だらけ。
何度も転び、
何度も立ち上がる。
どっちも譲らん。
どっちも止まらん。
気付いたら、
二人とも倒れとった。
息も絶え絶えや。
せやけど。
顔見合わせて、
笑ってもうた。
「なんやこれ……昭和やんけ…」
「でも…こういうのも悪くない…」
拳を突き出す。
「せやな」
わいらは拳を合わせた。
……あの日からや。
わいはサイを見上げる。
そして。
ドン!!
思いきり殴った。
拳がサイの顔にめり込む。
わいは叫んだ。
「わいらは!!」
「こうやって仲良くなったやろが!!」
せやけど。
サイは止まらん。
『グォォォォ!!』
雷が爆発する。
バリバリバリ!!
「くっ…」
わいの身体が吹き飛ぶ。
地面を転がる。
「……チッ」
その時や。
万雷がサイに組み付く。
《もうやめろ!!》
《正気に戻れって!!》
ナツが前に出る。
「その通りだ…」
ナツがサイへ走る。
そして。
ドン!!
拳を叩き込んだ。
ナツが叫ぶ。
「バカ野郎が!!」
「らしくねぇんだよ!!」
マサキも歩き出す。
「戻ってこい!!」
ドン!!
ミツルが肩をすくめる。
「帰ってこい!!」
ドン!!
ジュンが静かに言った。
「サイ!!」
ドン。
全員の拳が叩き込まれる。
それでも。
サイは暴れる。
雷が荒れ狂う。
…わいは叫んだ。
「お前は!!」
ナツが続く。
「俺たちの!!」
マサキ。
「仲間だろ!!」
ミツル。
「聞こえてんだろ!!」
ジュン。
「サイ!!」
全員が拳を握る。
そして。
同時に。
ドォォォン!!
拳が叩き込まれた。
「「「「「戻ってこい!!」」」」」
世界が震えた。
雷が止まる。
静寂。
サイの瞳が揺れた。
小さな声。
『……なんでだよ』
『なんで俺なんかを…』
瞳から、
涙が零れた。
雷竜の姿が崩れていく。
光に変わる。
その中で、
サイの声が響いた。
『……みんな』
少し笑って。
『ありがと…』
その瞬間。
サイの姿が消えた。
ナツが目を見開く。
「サイ!?」
マサキが言う。
「……違う」
「戻ったんだ」
「現実世界に…」
雷雲が消えた。
空が割れていく。
わいが拳を見ながら言った。
「ふぅ…、わいらも戻ろか」
「「「「おう!」」」」
《お前ら…、助かったぜ…》
《ありが…》
「こっちのセリフや!」
《!?》
「わいらの親友止めてくれてありがとな…」
万雷は一瞬黙った。
《……ケッ》
照れくさそうに鼻を鳴らした。
シュゥゥゥ、ブンッ……




