第34話 轟く雷鳴
西京都中央
炎に包まれた街。
溶けたアスファルトが赤く光り、
熱気が空気を歪ませている。
ギャオォォォオ!!
咆哮が街を震わせる。
「……どんだけ切ればいいんだよ」
俺は刀を握り直す。
闇竜翼を広げ、
空を蹴った。
一瞬で距離を詰める。
シュンッ
斬撃が閃く。
ズバッ!
同じく刃は確かに肉を裂いた。
だが。
ぐにゃりと傷口が蠢き、
肉が盛り上がり、
裂けたはずの傷が塞がっていく。
《また再生してるな》
「見りゃ分かる」
俺は距離を取る。
ティラノの口が赤く光る。
次の瞬間。
ドオォォォン!!
マグマが噴き出した。
ビルが溶け、
地面が爆ぜる。
俺は空へ跳び上がる。
「……知性がないのは助かるが…」
ティラノは再び突っ込んでくる。
地面が砕ける。
「しつけぇな…スタミナどうなってるんだ?」
俺は横へ回り込み、
再び斬りつけた。
ザシュッ
肉が裂ける。
そして。
また塞がる。
だが。
俺は目を細めた。
「……遅くなってるか?」
《あぁ》
《再生の速度が落ちてる》
さっきよりも、
明らかに回復が遅い。
つまり。
「回復にも限界がある」
《削り続ければ倒せるな》
俺は刀を構えた。
その時。
上空から声。
「おーいユウ!」
振り向く。
ナツだった。
その後ろには、
マサキ、
アキラ、
ミツル、
ジュン、
サイ。
俺は呆れた顔をした。
「遅ぇよ」
ナツが笑う。
「悪ぃ悪ぃ」
アキラが弓を構える。
「雑魚多すぎなんや」
ミツルが盾を構えた。
「とりあえず全員集合な」
ジュンが剣を抜く。
「状況は?」
俺はティラノを見る。
「超速再生持ちだ」
マサキが眉をひそめた。
「面倒だな」
俺は続ける。
「でも限界はある」
ナツが剣を肩に担いだ。
「じゃあ削り合いか」
サイは黙っていた。
ティラノが咆哮を上げる。
ギャオォォォオ!!
俺は言った。
「行くぞ」
七人が同時に動いた。
シュンッ、ズバッ
俺はティラノの目を切りつけた。
ナツが突っ込む。
「うらぁぁぁ!!」
魔力を纏った片手剣が振り下ろされる。
ザンッ!
脚に傷が走る。
マサキが大剣を振り抜く。
「水刃切り!」
ズバッ
巨大な水の刃がティラノの胴を裂いた。
ミツルが両掌を突き出す。
「ロックバレット」
生成された無数の岩がティラノを襲う。
ドドドドッ
よろめくティラノ。
その隙に。
ジュンの連撃。
閃光のような斬撃が走る。
「どうだ」
アキラが叫ぶ。
「お前ら離れぇ」
大容量の魔力を弓に込め、
ティラノの真上を取る。
「……烈火流星群」
ドドドドドオォン!!
放たれた無数の火球が炸裂する。
爆風が街を吹き抜け、
炎が空へ巻き上がった。
サイは切っ先を向け雷を放つ。
バァァァン!!
稲妻がティラノを貫く。
だが。
肉が蠢き、
再生が始まる。
ナツの顔が歪む。
「まだ治るのかよ!」
マサキが言う。
「魔力足りるかな…」
俺はティラノを睨む。
「やっぱり大技で削るしかないか…」
ミツルが俺を見る。
「なんかやるのか?」
その時。
サイが前に出た。
静かに。
低く呟く。
「……どけ」
ナツが振り向く。
「はい?」
「やるぞ万雷」
《あいよ》
竜化(強)。
サイの身体が雷を纏う黄色い球体に包まれた。
球体は、脈打つように膨張していく。
俺はその光景を見ながら声が漏れた。
「おいおい、嘘だろ……」
ビシビシ、ビシッ
みんなが驚く中、
ビルほどの大きさになった球体にヒビが入った。
バリンッ、パラパラパラ
『行けるな…』
ジュンが目を見開く。
「……サイ?」
ミツルが言った。
「おい……それ…」
巨大な雷嵐。
バチバチバチッ
空気が震える。
雷を纏った、
圧倒的な巨体。
誰もが言葉を失う。
ナツが呟く。
「……おいおい」
アキラも息を呑む。
「マジかいな…」
だが。
サイは振り向かなかった。
『死にたくなきゃ下がれ』
そういうと纏っていた雷が増幅した。
雷が紫色に変わる。
空気が震える。
誰も動けなかった。
『…紫電霹靂神』
次の瞬間。
世界が雷に飲まれた。
バリバリバリ、ドッカーーン
巨大な雷柱が地面へ落ち、
街が白に染まる。
ティラノを中心に、
半径百メートルほどで雷が爆発した。
遠くのビルの窓ガラスが、
一斉に砕け散った。
小型の魔物が消し飛び、
ティラノの巨体も雷の中に消えた。
数秒後、雷が消えた。
ズゥン……
雷が収まった瞬間、
ティラノの巨体が崩れ落ちた。
煙が立ち込める。
そこに残っていたのは。
巨大なクレーター。
ナツが呟く。
「……マジかよ」
ジュンも言葉を失っていた。
ミツルが息を吐く。
「やりすぎだろ…」
俺たちはサイへ近づいた。
その時。
サイの声。
『……来るな』
全員が止まる。
サイの身体が震えていた。
サイの頭の中に声が響く。
あの時聞いた声。
あの罵声。
…遅ぇんだよ。
…守れよ。
…役目だろ。
その言葉が、
雷のように頭の中で反響する。
サイの瞳が歪む。
雷が暴れ始める。
ナツが言う。
「おいサイ…」
サイが叫んだ。
『離れろ!!』
雷が爆ぜる。
ジュンが叫ぶ。
「まずい…!」
サイの身体から、
さらに雷が溢れ出す。
雷竜が天を仰ぐ。
そして…咆哮。
『グォォォォォォォォォォォ!!』
西京都の空に、
雷竜の咆哮が響き渡った。




