第33話 東側戦線
西京都中央(ユウ視点)
地面へと降り立った瞬間。
熱風が顔を叩いた。
赤い鱗に覆われた魔物は熱を発している。
「火属性だとこんなことになるのか…」
《魔力が持続的に漏れてるからな…》
「魔力切れとかは……ないか…」
ティラノはビルを薙ぎ倒しながら、
ゆっくりとこちらへ顔を向ける。
黄色い瞳が、俺を捉えた。
「……来るか」
次の瞬間。
ギャオォォォオ!!
衝撃波のような咆哮が街を揺らす。
「試し切りしてみるか」
俺は刀を抜いた。
闇竜翼を広げ、
一気に加速し、
ティラノの巨体へ突っ込む。
キィン!!
刃は確かに食い込んだ。
だが。
数十センチ。
それ以上、刃は入らない。
「……硬っ」
次の瞬間。
ティラノの肉が蠢いた。
裂けたはずの傷口が、ぐにゃりと動く。
肉が盛り上がり、
傷が閉じた。
完全に。
「……は?」
俺は距離を取る。
今、確実に斬ったはずだ。
だが傷は、跡形もない。
「おいおい、これって…」
《超速再生だな…》
ティラノが大きく口を開く。
口内が赤く光る。
次の瞬間。
ドオォォォン!!
地面が爆ぜた。
口から噴き出したのは、マグマ。
灼熱の奔流が街を飲み込む。
俺は空へ跳び上がる。
溶岩がビルを溶かし、
アスファルトが赤く焼ける。
「……だるっ…、とりあえず削り続けるか…」
《弱点見つけれれば御の字だな》
刀を構える。
「まあいいや…」
「あいつら来るまで……」
ティラノが飛び上がり突っ込んでくる。
地面が崩壊する。
「お前どういう脚力だよ!」
俺は再び空を蹴った。
西京都東側(ミツル視点)
瓦礫の街に俺たちは降り立っていた。
魔物が飛びかかってくる。
俺は大盾を前に出した。
ガァン!!
牙が盾に食い込む。
「っと……!」
そのまま左手を前に突き出す。
魔力を掌に集める。
「ファイヤーボール」
ボンッ!!
火球が魔物の顔面で炸裂した。
吹き飛ぶ魔物。
そこへジュンが飛び込む。
二本の剣が光を纏う。
「はっ!」
斬撃が閃く。
一瞬。
三回。
四回。
魔物の身体がバラバラに裂けた。
ジュンが軽く息を吐く。
「まだ来るね」
背後から唸り声。
サイが振り向きざまにガンソードを振るった。
ザンッ!
魔物の胴体が真っ二つに裂ける。
「チッ……雑魚が多すぎ」
その時だった。
物陰から声。
振り向くと、住民たちがいた。
数人の男と女。
子供もいる。
一人の男が頭を下げた。
「ありがとう……!助かった!」
俺は肩をすくめる。
「礼は後でいいって」
だが。
次の瞬間。
別の男が吐き捨てた。
「……遅ぇんだよ」
空気が変わる。
住民たちは俺たちを睨んだ。
「もっと早く来いよ」
「お前ら、力持ってんだろ?」
「守るのが当然だろうが」
別の女が言う。
「こんなことになる前に来てればよかったのに」
ジュンの眉がぴくりと動く。
「……は?」
俺は苦笑した。
「いやいや」
「命助かってんだからさ」
だが男は鼻で笑う。
「助けるのが当たり前だろ!!」
サイがゆっくり振り返った。
無言。
ガンソードを肩に乗せる。
その瞬間。
ダダダダッ
魔物の群れ。
十体ほど。
俺が盾を構える。
「来るぞ!」
だがサイが前に出た。
ガンソードに魔力が集まる。
青白い光。
バチバチと雷が弾ける。
サイが低く呟く。
「……うるせぇ」
切っ先を魔物たちに向ける。
「消えろ」
バァァァン!!
雷が地面を走った。
稲妻が魔物の群れを貫く。
一瞬で。
全ての魔物が焼け焦げて倒れた。
沈黙。
煙が立ち上る。
サイは振り返った。
住民たちを見下ろす。
冷たい目。
「……お前らにも撃ってやろうか?」
住民の顔が青ざめる。
慌てて逃げ出す者。
だが一人の男が吐き捨てる。
「な、なんだよ……!」
「力持ってんなら守れよ!」
「それが役目だろ!」
ジュンの顔から笑みが消えた。
「……ミツル」
「俺、今かなりイラついてる」
俺はため息を吐いた。
「奇遇だな」
サイが吐き捨てる。
「クソが」
ガンソードを担ぐ。
「行くぞ」
遠くから咆哮が響いた。
ギャオォォォオ!!
ユウと恐竜が戦ってる。
俺はユウが戦ってる方を見る。
「丸投げしたけど大丈夫だよな?」
ジュンが剣を握る。
「急ごう」
サイが歩き出す。
「さっさと終わらせる」
俺たちは魔物を蹴散らしながら進んだ。
ユウのいる場所へ。
西京都の空に、再び咆哮が響いた。




