第32話 西側戦線
西京都上空(ユウ視点)
黒煙が空へと立ち昇っていた。
燃え盛る街。
崩れ落ちたビル。
逃げ惑う人々。
その中心で、
巨大な影が咆哮を上げる。
ギャオォォォオ
地上に立つのは、
赤い鱗に覆われた、
ティラノサウルスの魔物。
咆哮と共に放たれる魔力が、空気を震わせる。
その波動に当てられた人々の身体が歪む。
骨が軋み、
皮膚が裂け、
魔物へと変わっていく。
地獄絵図だった。
その光景を、空から見下ろす俺たち。
ナツが顔をしかめる。
「……おいおい、マジかよ」
アキラが口角を上げる。
「ド派手やな」
マサキは冷静に街を見渡していた。
「魔物化……、酷いな……」
俺は恐竜を見据えたまま、低く言う。
「まずは……」
その時だった。
ナツが口を開いた。
「俺ら西側行くわ」
ナツはマサキとアキラの肩に腕を回す。
マサキが頷く。
「東側は任せる」
ミツルが肩をすくめた。
「了解」
ジュンもすぐに続く。
「安全最優先だからな?」
サイが俺を見て呟く。
「雑魚処理は任せろ」
俺が口を開く前に、作戦は決まった。
いや、決まってしまった。
ジュンが俺の肩に手を乗せた。
「恐竜の足止め頼んだぞ?」
「は?」
ナツがニヤリと笑う。
「まあ倒してしまっても構わんよ?」
マサキが即座に言う。
「はい死亡フラグ」
ミツルが手を振った。
「とりあえず頼むわ〜」
俺は一瞬沈黙したあと、小さく息を吐いた。
「……勝手に決めんな」
ナツが笑う。
「じゃ、行くぞ」
六人が空中で二手に分かれる。
西へ向かうナツ、マサキ、アキラ。
そして東へ向かうミツル、ジュン、サイ。
俺だけが、その場に残った。
視線の先には、赤い巨影。
俺はゆっくりと高度を下げる。
「……あとで文句言ってやる」
西側地区(ナツ視点)
俺たちは瓦礫の街へ降り立った。
地面に着地した瞬間。
うぅぅぅ……
振り向いた俺の視界に、黒い影が迫る。
人の形を歪ませた魔物だった。
俺が眉をひそめる。
「…ゾンビか…、ヒト型はやめてくれねぇかなぁ…」
次の瞬間。
パシュッ
ゾンビの頭部を火矢が撃ち抜いた。
振り返ると、アキラが弓を構えていた。
「何を、ボーっとしとんねん、
噛まれたら終いやぞ」
マサキが続く。
「まあ、躊躇なく打てるお前も大概だけどな?」
ダダダダッ
二体の蜘蛛の魔物が、
こっちに突っ込んで来る。
「俺が左の殺る」
マサキがそういうと、俺も前に出る。
「あいよ、じゃあ右もらうわ」
マサキが大剣を構える。
大剣に魔力を込めると、
水流が生まれた。
マサキが大剣を振る、
すると巨大な水の刃が街を横切る。
スパッ
魔物は真っ二つになり、
血飛沫が噴き出した。
「名前は水刃切りとかかな?」
「やるじゃん、じゃ…俺も!」
俺は魔物に突っ込む。
「うらあぁぁぁあ!!」
俺は片手剣に魔力を纏わせ、
兜割りを繰り出す。
ザバッ
俺も魔物を真っ二つにする、
相変わらず断面が汚い。
でも昨日寝る前に魔力操作の練習を、
春嵐に付き合ってもらったお陰で、
まだまだ戦える。
マサキが静かに言う。
「数が多いな…」
背後から魔物の群れ。
「うぜぇ、10体はいるぞ」
俺が言い終わると、アキラが前に出た。
「おい、遠距離型が前に出んな!」
「まあ、見とけや…」
弓に魔力が収束すると、
炎が矢の形に変わった。
「烈火…流星」
ボオォォォオ、ドオォン
アキラの放った一撃は、
大きな火球となって、
魔物達をまとめて撃ち抜いた。
アキラが笑う。
「どや?、殺られる前に殺るんやで」
「あぁ…やっぱお前もネジ飛んでるわ…」
「は?、普通やろ」
その時だった。
瓦礫の下から声がした。
「た、助けて……」
俺がすぐに走り出す。
コンクリートを持ち上げると、
下にいたのは、女性と子供。
俺は手を差し出した。
「もう大丈夫だ」
女性は震えながら俺たちを見た。
その目に写ったのは…恐怖。
そして吐き捨てた。
「化け物……」
「……あ?」
すると隠れてた住民達が出てきて叫んだ。
「お前らのせいでこうなったんだろ!」
「もっと早く来いよ!」
「何やってたんだよ!」
空気が凍った。
アキラが眉をひそめる。
「は?、何やこいつら?」
「立場教えたろか?」
俺は周りの住民を見て殺意が湧いた。
強く拳を握る。
…助けたのに…何だよ……。
マサキが静かに言った。
「今は雑魚処理が先だ、
早くユウに合流してやらないと」
「……チッ」
俺は舌打ちをした。
その瞬間。
ダダダダッ
遠くから唸り声。
無数の影。
魔物の群れ。
アキラが肩を回す。
「まだ来るか」
マサキは大剣を肩に担いだ。
「どんだけいるんだよ」
俺はゆっくりと剣を構える。
「一匹残らず片付ける」
俺たちが前に出る。
その時だった。
街の中心から…。
ギャオォォォオ
空気が震えた。
俺たちが振り向く。
遠く。
炎の街の向こう。
赤い巨影。
そしてその上空。
一つの影が落ちていく。
ユウだった。
俺は小さく呟く。
「……頼んだぞユウ…」
西京都の空に、再び咆哮が響いた。




