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第29話 来訪者


会議室の扉が閉まり、足音が遠ざかる。


静寂。


重かった空気が、少しだけ緩んだ。


「……で?」


ナツが机に頬杖をつく。


「三人、どこ住ませるんだよ」


仕事とか学校、

世の中の奴らはどうしてるんだろう。


アキラが淡々と言う。


「薄野以外の住民ほとんど避難してるんやろ?」

「この付近なら部屋空いとるんちゃうん?」


「いや他人の家に泊める気かよ!」


ジュンが即ツッコむ。


そんなやり取りの最中。


コンコン…


控えめなノック。


扉が開く。


鷹宮がひとり戻ってきた。


「……お帰り」


俺が椅子にもたれたまま言う。


鷹宮は一歩入るなり、眉間を押さえた。


「あなたという人は……」


「……?」


「なぜあそこで〝全員竜種〟などと、

公言するのですか!」


室内が一瞬、凍る。


ナツがゆっくり振り向いた。


「……え?、打ち合わせしてたんじゃ…?」


俺は平然と言った。


「あぁ、あれアドリブ」


「「「「「「はぁ?!」」」」」」


鷹宮が声を荒げた。


「事前の打ち合わせでは、

〝三名の移送を通す〟だけでしょう!」

「竜種の情報を出すなんて!」


「仕方ねぇじゃん」


俺は淡々と言う。


「力の差を理解してねぇ奴らに、

言葉通じねぇんだもん」


「理解させるために国家を、

震撼させる必要ありますか?!」


ナツが吹き出す。


「まあでも、あの顔は面白かった」


「面白くありません!」


鷹宮は本気で怒っている。


だが俺は肩をすくめた。


「でも結果的に三人は北の大地に、

居れるようになったじゃん」


沈黙。


鷹宮は深く息を吐く。


「……本当にあなたは、

予定調和を壊す天才ですね」


「そんな褒めるなよぉ」


「褒めてません!!」


小さな笑いが漏れる。


張り詰めた空気が、

ほんの少し緩んだ、その時だった。


鷹宮の携帯が震える。


ビービービー


室内に響く、緊急通知音。


鷹宮の顔色が変わる。


「……はい」


短い応答。


「……は?」


鷹宮の血の気が引いた。


「どうした」


俺が低く問う。


鷹宮は無言で壁面モニターを起動する。


映像が切り替わる。






日輪の首都・西京都(さいきょうと)上空


晴れていた空が、揺れた。


まるで陽炎のように。


次の瞬間。


ゴゴゴゴゴ…、ドゴォン


中心街の地面が内側から爆ぜる。


アスファルトがめくれ上がり、

地下鉄の構造体が露出する。


そこから……。


巨大な影が、せり上がった。


最初に現れたのは尾。


鋼鉄のような赤い鱗が、陽光を鈍く反射する。


そして、頭部。


縦に裂けた瞳孔。


剥き出しの牙。


全長は六十メートルを超え、

高さはビルの10階相当の、恐竜の魔物。


ギャオォォォオ


空気が震え、窓ガラスが一斉に砕け散り、

ビルの壁面が音を立てて崩落し、

人々が逃げ惑う。




数分後。


自衛隊第一波が到着。


戦闘ヘリ三機。


対戦車ミサイルを同時発射。


ドドオォォォン


白煙が空を引き裂く。


爆炎が怪物の上半身を包みこむ。


……だが。


魔物は立っていた。


焦げ跡一つなく、

ゆっくりと首を傾ける。


まるで鬱陶しい虫を見たかのように。


地上部隊が展開。


装甲車列。


重機関砲が火を吹く。


弾丸が鱗に当たる。


カカカンッ


弾かれる音だけが虚しく響く。


ドスンッ


魔物が一歩踏み出すと、

その質量だけで道路が陥没する。


尾が横薙ぎに振られ、

装甲車が宙を舞い、

ビルに激突し、爆発。


空自の戦闘機が急降下。


超音速で接近。


対地誘導弾、連続発射。


直撃。


閃光。


爆煙。


数秒の静寂。


次の瞬間。


爆煙の中から、赤熱した口腔が覗く。


光が集束する。


戦闘機のパイロットが叫ぶ。


「回避……」


遅かった。


赤い閃光が空を裂いた。


空中で戦闘機が消失する。


破片すら残らない。


魔物は、ただ立っている。


都市の中心に。


圧倒的に。


誰の攻撃も、届かない。


西京都は、その瞬間、理解した。


これは災害ではない。

ただの蹂躙だと…。






北幌駅 地下政府施設


俺たちは西京都の様子をモニターで見ていた。


映像の音だけが響く。


「おいおい……」


「これは流石に……」


「ヤバ過ぎやろ……」


「日輪が…終わる……」


各々の声が漏れる。


「悠さん!!」


鷹宮の声が響く。


「なんだ?」


「悠さんなら…止められますか……?」


一拍。


全員の視線が集まる。


モニターの爆音だけが響く。


「わからねぇ……」


俺の言葉は場の空気を…殺した……。

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