第28話 管理対象
北幌駅 地下政府施設
無機質な蛍光灯。
長い会議卓。
奥側に座るのは、三人の覚醒者たち。
三人は並んで座っているが、
視線は交わらない。
手前側に俺たちが並んで座った。
それに、鷹宮と取り巻きの二人が、
会議卓の横に立っている。
空気は冷たい。
記録端末を抱え、
鷹宮が一歩前に出た。
「皆様、早朝より、
お集まりいただきありがとうございます」
「まずご紹介をさせていただきます」
鷹宮は俺を見る。
「昨日見てもらった動画の闇竜がこちらの、
影宮 悠様です」
「影宮 悠だ、残りの六人の紹介は省略してくれ」
「かしこまりました…」
「では、覚醒者三名の現状報告を行います」
「石田 毅、三十九歳、元会社員」
「属性は雷、
覚醒条件は長期のパワーハラスメント」
石田は俯いた。
「パワハラをしていた上司を、
感電死させました」
部屋が、わずかに軋む。
鷹宮は続ける。
「中村 陽菜、十七歳、高校生」
「属性は火、覚醒条件はいじめ」
中村の拳が震える。
「主犯の女子を、焼死させました」
誰も遮らない。
「久保 瑞樹、十一歳、小学生」
「属性は風、覚醒条件は家庭内での虐待」
瑞樹は顔を上げない。
「父と母を、風で切り裂き…殺しました」
長い、沈黙。
俺が口を開く。
「三人とも大変だったな…」
「「「?!」」」
「世の中の奴らがなんていうか、俺は知らない」
「本人たちの苦しみを考えれば、
俺は当たり前だと思う」
三人は俯いて涙を流した。
「法律とか倫理観とかそんなの知るか、
死んだのは死んだ奴らの罪だ」
「国は、三人をどうするつもりだ?」
鷹宮は一瞬だけ視線を落とし、答える。
「現状隔離状態にありますが、
適性があれば……兵器運用の予定です」
中村の肩が震え、
石田は唇を噛み、
瑞樹の小さな爪が、机を掴んで白くなる。
俺は椅子にもたれた。
「俺は反対だ」
全員の視線が集まる。
「覚醒者は北の大地に集める」
「兵器にはさせない」
空気が変わる。
「それは…」
鷹宮の取り巻きの一人が口を開きかけるが、
俺が遮る。
「自衛隊は負け、政府の人間は死に、
俺は終わらせた」
「日輪は覚醒者を止める術を持たない」
俺は事実だけを並べる。
「試してみるか?」
誰も否定できない。
「もし、了承しないなら」
俺は取り巻きたちに冷ややかな視線を向ける。
「今後、日輪政府からの依頼は一切受けない」
「他国がどう動くかは、知らん」
重い沈黙。
これは脅しではない。
〝現実〟だ。
鷹宮が静かに言う。
「……覚醒者の意思は、どうなさいますか」
俺は三人を見る。
「お前らはどうしたい」
石田が小さく言う。
「……管理されるのは、もう嫌だ」
中村は唇を噛む。
「また閉じ込められるなら……」
瑞樹は、かすかに頷いた。
俺は息を吐く。
「俺のところに来い」
「ちょ、ちょっと待ってください」
取り巻きが口を開いた。
「影宮さんは、
兵力を集めて何をするつもりなのですか!」
「はぁ、同じことを言わすな…」
俺は殺気を浴びせる。
「ひっ…」
「三人を兵器にするつもりもないし必要もない」
「言ってなかったがな、
ここにいる俺の仲間は全員竜だ」
鷹宮が青い顔をして身を乗り出した。
「ちょ、ちょっと…」
「言葉通りの意味だ…、一つ教えておいてやる」
「七属性にそれぞれ一体しか存在しない、
竜種がここにいる七人だよ」
鷹宮たちは言葉を失った。
「この意味がわかるな?」
「一つ聞かせろ」
「三人の相方の種族と名前は?」
三人が、固まる。
鷹宮が眉をひそめる。
「……相方?」
「……嘘だろ…、マジでわからないのか…」
部屋が静まり返る。
石田が、かすれ声で言う。
「……知らないです」
中村も、首を振る。
瑞樹は、沈黙。
政府側も動揺している。
「……そんな報告は受けていない」
俺は立ち上がる。
「だからお前ら、お役人どもは駄目なんだよ」
「力を〝兵器〟としてしか見てない」
「人間として扱って話をしてれば気づけたかもな」
沈黙。
鷹宮が、ゆっくりと口を開く。
「……覚醒者三名の北の大地移送を、
上申します」
「正式回答は後日」
「三人はここにおいていけ、家はこっちで探す」
「わ、わかりました」
会議は、終わった。
だがこれは…。
この決定は日輪の行く末を大きく変えた。




