第24話 回想と覚悟
事務所に帰るために、
俺とレイナは、
二人を引き連れる形で前を歩き始めた。
「なぁレイナ、一つ聞いてもいいか?」
「…何?」
「もし、お前も力を手に入れれるとしたら、
どうしたい?」
「!?」
「お前と会った瞬間気づいてた…。おま…レイナも…闇属性なんだ…」
「そう…なんだ…、じゃああーしも…」
「俺は悩んでる…」
「……なんで?」
「闇属性は他の属性と違って、扱いが難しいんだ…」
闇に堕ちた覚醒者の顔が、嫌でも浮かんだ。
あれはもう、人間じゃなかった。
「じゃあ、なんでその話したの?」
「正直、属性しかわからないんだ…、
種族も何も……」
「だから街で暴れまわってるような、
魔物に変異する可能性も考えると…」
「そういうこと…」
「俺は…」
トンッ
レイナは肩で小突いてきた。
「ユウ、あたしさ…昔のこと思い出してたんだ」
「中学校の時、女子たちにいじめられてたあたしを、ユウが助けてくれたこと…」
「……」
「あたしあの時、死ぬことも考えてた…」
「無視されて、グループから外されて、クラス中にありもしない噂流されてさ」
「あたし、教室にいるのが怖くなってた。」
中学時代(レイナ視点)
昼休みの教室は、やけに騒がしかった。
笑い声はあるのに、
そこに混じれない孤立感だけが、
胸の奥に重く沈んでいく。
私は机に伏せて、
視線を上げないようにしていた。
「ねえ、あいつさ、
昨日おっさんと歩いてたらしいよ」
「え、まじ?キモ、
どうせいかがわしいことでもしてるんでしょ」
「つーか調子乗ってない?、顔だけのくせに」
ひそひそ声なのに、わざと聞こえるように大きい声。
誰も止めない。
味方なんていない。
ノートの上に落ちる影だけが、やけに濃かった。
「ねえ麗奈、今日のグループ活動、
あんた来なくていいから」
「もうメンバー決まってるし」
そう言って、女子たちは当然のように背を向けた。
教室の空気が、胸に刺さる。
その時だった。
ガタンッ
椅子を蹴る音がして、
クラスの視線が一斉に集まった。
「なにやってんだよ、てめぇら」
立ち上がったのは悠くんだった。
「は?関係なくね?」
「男子は黙ってて」
「関係あるんだよ!」
悠くんは机に手をついて、
女子グループを睨みつけた。
「自分達がブサイクだからって、
可愛いレイナに当たってんじゃねぇよ、
キモいのはてめぇらだろうが」
教室が一瞬で静まり返る。
「……は?」
「なにそれ、最低」
「先生呼ぶよ?」
「呼べよ!」
「あーなるほど、
教師に色目使って庇って貰おうってか?」
ざわめきが広がる。
クラスメイトたちは、ただ遠巻きに見ているだけだった。
「噂流して、仲間外れにして、
陰でコソコソ、ガキかよ」
「いや、中学生だけどさ」
誰かが小さく笑った。
「レイナに謝れ!!」
悠くんは一歩前に出た。
その背中が、やけに大きく見えた。
レイナは顔を上げた。
涙が止まらなかった。
でも、初めて、教室が怖くないと思えた。
「おい!、お前俺の女になんか用か?」
「調子のってんじゃねーぞ」
「お前が詫び入れろや」
その時、騒動を聞きつけた女たちの彼氏たちが、
教室に入ってきて、悠くんに詰め寄った。
「てめぇらの女かよ、見る目ねぇな?」
教室が再びざわめいた。
「あぁん?」
「抱ければ誰でもいいってか?、
まるで猿だな?」
「てめぇ!!、ぶっ殺す!!」
悠くんは、先生が来るまでに、
男たちの顔面を殴りつけ、机に叩きつけ、
止めに入った先生の声すら届かなかった。
その結果、
いじめっ子たちと一緒に停学になってしまった。
現在(ユウ視点)
「でも、ユウが「レイナに謝れ!!」って」
「自分が標的にされても、
毎日助けてくれてさ、…その時思ったんだ」
「……」
レイナが俺の前に出て、顔を見つめてくる。
「あたしも守れる人になりたいってさ」
「……」
「それに…」
ドンッ
レイナは俺に抱きついて見つめてくる。
「もしもの時は、また悠くんが助けてくれるんでしょ?」
「…あぁ……」
「じゃあ力を貸してよ、
カナや、オヤジ、カシラに、組のみんな」
「悠くんがいなくても、守れる女になりたいの」
「……わかった、レイナの覚悟、
確かに受け取ったよ」
「おうおう、いちゃついてんな、
ヒューヒュー、お熱いねー」
この状況を見て、ナツが全力で茶化してきた。
「!?、ナツ、あんた!」
「やっべ、お先に失礼!」
危険を感じたナツは走りだす。
「こら!、逃げんなぁ!!」
レイナが追いかける。
するとカナが俺の隣に来て口を開いた。
「ユウ兄、レイ姉を泣かせたら許さないから」
なぜだろう、美人の圧は恐怖を感じる。
「待てぇぇえ!!」
「ごめんってばぁ!」
このあと、ちゃんと捕まって怒られてた。
普通の幸せ…。
俺はこの日常を守るために…。
その代わりに、何を失うのかも知らずに…。




