第23話 夜景に残る光
夜の薄野は、
戦場の痕跡を残しつつ、
妙に賑やかだった。
ネオン、
笑い声、
酔っぱらい。
さっきまで命のやり取りをしていた感覚が、
嘘みたいに薄れていく。
焼け焦げた建物の影で、笑い声が弾けている。
この街は、今日も生きている。
「はぁ〜、美味かった〜」
「こんな状況でも、
営業してくれてる店に感謝だな〜」
ナツが満足そうに言った。
「なんか俺ら、まだまだ若いな〜」
「この日常が一番贅沢に感じるなぁ」
そう返すと、ナツは肩をすくめた。
レイナは静かに箸を置いて、
小さく息を吐いていた。
その顔は少し安心したみたいで、
少し疲れているみたいで。
……出来るなら…もう心配させたくない。
でも……今日、ひとつ終わっただけ……。
外に出ると、夜風が気持ちよかった。
戦いの熱が冷めて、
身体の奥に残った疲労だけがじわじわと浮かび上がる。
空は澄んでいて、街の光が星みたいに瞬いている。
「じゃあ、夜景見に行こっか」
レイナが切り替えたように明るく言った。
その声は、
さっきまでの沈黙を切り裂くみたいに軽かった。
展望スポットに着くと、
北幌の街が一望できた。
光の海。
しかし、ところどころ光が消えていた。
「……綺麗」
レイナが小さく呟いた。
その声がやけに胸に残る。
「写真…撮りたい」
カナがスマホを構える。
「まずはユウとレイナな」
ナツがニヤニヤしながら言った。
「は?」
「まずカップルからだろ?」
「そういうんじゃない、俺らは…」
即答したけど、ナツは聞く気ゼロ。
「いいじゃん、撮ろ?」
レイナが勢いよく、俺の腕に抱きついた。
柔らかい体温が、夜風に冷えた身体に伝わる。
「せっかくだから、ちゃんと写りたいし」
そう言って、カメラに目線を向けるレイナ。
夜景の光に照らされて、綺麗だった。
「はい、チーズ」
カシャッ
「……文句言う割に満更でもなさそうじゃん」
ナツが笑う。
「うるせぇ…」
そう言いながらも、俺はレイナから目を逸らせなかった。
なんか、見惚れてた。
「次はお前らだな」
俺が言うと、ナツとカナが顔を赤くした。
「…恥ずかしい」
「ほら、並べ」
二人が並ぶ。
距離はあるのに、なぜか視線だけがぶつかってる。
「「……」」
照れくさそうに、でもちょっと嬉しそうで。
カシャッ
スマホを覗き込む。
「ユウ、あーしのこと見すぎ〜」
「うるせーな」
「カナ可愛い…」
「ナツくんも…」
「ナツは…、まあ普通だろ」
「なんでだよ!」
笑い声が夜に溶けていく。
この街の光と一緒に、
夜へ溶けていくみたいだった。
写真の中の俺たちも、ただ笑っていた。
この時間がどれくらい続くかなんて、
俺は考えたくなかった。
その時、スマホが鳴った。
ピロン。
(……鷹宮からか)
画面を見ると、短いが重い文章。
覚醒者との面会が可能になりました。
明日、北の大地に覚醒者三名を連れて向かいます。
直接、お話がしたい。
俺はスマホを閉じた。
「ユウ、どうしたの?」
レイナが聞いて来る。
本当に、勘のいいやつだ
「覚醒者三人、連れてくるってさ」
ナツが息を呑む。
「明日か?」
「……あぁ」
夜景の光が、やけに淋しく感じた。
俺はどこまで守りたいんだろう。
考えることが山積みだ。
「ユウ……」
レイナが袖を掴んできた。
指先の力は、驚くほど強かった。
「俺は守りたいんだ…」
それだけで十分だった。
それ以上、言葉はいらない。
レイナは小さく笑って、夜景を見上げた。
その横顔が、妙に大人びて見えた。
俺は、目を逸らして夜の街を見つめた。
光の海の底に、何が潜んでいるのか。
それを知るのは、きっと明日だ。
悠と麗奈のツーショットと那津と佳奈のツーショットをXに貼っときます




