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第20話 弱肉強食


綱走刑務所 正門前


砂混じりの風が吹き荒れる中、

地に伏した二人の覚醒者、

水狼と土狼が呻いていた。


一人は腕を失い、

もう一人は脚を切り落とされ、

這いずりながら逃げようとしている。


「た、助けてくれ……」


「やめてくれ……俺は……」


俺はため息をついた。


「……命乞いか」

「お前らが奪ってきた連中は、

そんな機会すら無かっただろうに…」


返答はない。

あるのは、落ちる血の音だけ。


「安心しろ、トドメは刺さねぇ」

「自分の命の炎が、

消えていくのを感じながら、死ね…」


二人の目から希望が消えた。


「クク……やるじゃねぇか」


低く、獣じみた声が響いた。


黒い影が歩み出る。


男の身体は獣化し、

筋骨隆々の四肢、

鋭い爪、狼の頭部。


闇をまとった二足歩行の狼。


「これが黒竜の力か、

でもお前の動き見えてるぜ?」

「俺の名は…」


「興味ねぇな…、獣以下のゴミの名前なんざ」


俺は囚人が名乗ろうとするのを遮った。


「大体、力を手に入れたからって、

なぜそうなる」


「弱い奴は強い奴に食われる。

それが自然の摂理だろ?、

俺は正しい側なんだよ」


地面に倒れた囚人たちを見下ろしながら続ける。


「女もガキも、俺に従えば生かしてやった、

感謝してたぜ? 」

「俺がいなきゃ生きられなかったんだからなぁ」


胸糞悪い言葉だった。

だが、こいつにとっては〝正義〟なのだろう。


「弱肉強食か」


俺は剣を構えた。


「なら、そのルールで裁いてやる」


闇狼が飛びかかる。

闇の斬撃が襲い来る。


俺は一歩踏み込み、最小限の動きで回避。

刀を振るい、肩口の肉を削ぐ。


「チッ!」


続けて腿、腹部、脇腹。

致命傷にはしない。

だが確実に削っていく。


「な、なんだ……!

てめぇ本気出してなかったのか!!」


「当たり前だ」


俺は淡々と答えた。


「お前ら如きに、本気出すわけないだろ?」


闇狼の顔が歪む。


「舐めるなァァァ!!」


怒りに任せ、闇を増幅させる。

理性の鎖が外れた瞬間だった。


「バカが…、闇に飲まれやがって、

絶望を与えられないだろうが」


《闇を舐めすぎたな》


闇狼の闇が広がった。


「いや、いやだぁ…」

「死にたくない、し…」


放置していた水狼と風狼の覚醒者を呑み込む。


三つの影が融合し、巨大な怪物へと変貌する。


……三つの頭を持つ漆黒の狼。

闇のケルベロス。


刑務所の壁が崩れ、嵐が巻き起こる。

まるで冥府の門番のような威圧感。


グルルルゥ


俺は闇狼を見上げた。


「……こういう進化もあるんだな」


だが、恐怖はなかった。


「待ってる奴らがいるんでな」

「そろそろ終わらせる」


竜化(中)


空気が凍りつき、

まるで空間そのものが、

俺を恐れて後退したかのようだった。


黒き竜翼が広がり、

皮膚に竜鱗が浮かび、

竜角と竜爪が顕現する。


大地が震え、世界が静止したかのように見えた。


《俺等の力の一旦を見せてやるよ」


グルァァァァァァアアアア!!


俺の言葉に答えるように闇狼が咆哮する。


俺は自分の竜爪を見ながら、静かに告げた。


《弱肉強食か…」


殺意の視線を向ける。


《この言葉が自分に、

帰ってくるとは思わなかったのか?」


闇狼の瞳が揺れた。

捕食者の目から、〝被食者の色〟が滲み出る。


闇狼は恐怖を打ち消すかのように、

爪で切り裂いてきた。


ドォン


しかし、俺は簡単に受け止めた。


《…こんなもんか……」


バキバキバキッ、ドドドォン


俺は闇狼の前足を弾き、

顔面を拳で撃ち抜いた。


殴り飛ばされた闇狼は、

刑務所の壁を突き破りながら瓦礫に消えた。


《せっかくだ、試し切りに使ってやるよ」


俺は居合の構えを取った。


ガラガラガラ、

グルゥゥゥ


闇狼はふらつきながらも、

立ち上がり、残っていた双頭で噛みかかってくる。


《……常闇居合(とこやみいあい)・黒炎雷…」


俺は刀を一閃した。

音が消え、

世界が一拍遅れて動き出す。


闇狼の身体に斬撃痕はない。


グルァァァア!!


次の瞬間、闇狼の全身に亀裂が走り、

その隙間から闇色の炎と紫黒の雷が噴き出した。


内部で爆ぜる雷撃が骨を砕き、

業火が血肉を焼き尽くす。


ドドォン


それは〝斬る〟ための斬撃ではなく、

〝壊す〟ための斬撃。


《ふぅ…俺の考えてた技も再現できた」


竜化(弱)


「どうやら竜化(中)までなら、

とりあえずコントロール出来そうだな」


《今のところな?、激情状態だとどうだろうな?》

《失うのはごめんなんだよ……、

ここまで関わった人間は初めてだしな…》


「死なねぇよ、守るもんがあるからな」


《まあ依頼は終わったんだ、

向こうのことも心配だろ?》


「心配してねぇよ、

ナツはやるって言ったらやる男なんだよ」


俺は依頼を終え、

薄野に向かってオレンジ色の空に飛びたった。




今回のことを通じて俺は一つの答えを導きだした。

他の覚醒者と話をしないといけないと…。

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