第18話 覚悟の選択
「……お前らさ、いつまで見つめ合ってんだよ」
俺はニヤニヤしながらツッコんだ。
二人は同時にビクッと肩を跳ねさせる。
「ち、違っ……!」
「……」
ナツは耳まで真っ赤になり、
カナは視線を逸らしながら俯いた。
そんなやり取りを見て、
橋本さんが鼻で笑った。
「青春してんな、
とりあえず立ち話もなんだ。中で話そうや」
「おう、入れ」
米澤さんの一声で、
俺たちは事務所の中へ通された。
米澤組事務所 応接間
応接間の畳に座ると、
組長と若頭、
そしてレイナとカナが対面に座った。
空気が重い。
だが、話さなきゃならない。
「まず、今の状況なんですが…」
俺は冥闇城で国の連中と会ったこと、
覚醒者を管理・隔離しようとしていること、
そして従わなければ敵対者として、
扱うと脅してきたことを全て話した。
ドンッ
「……クソが」
レイナがテーブルを叩いた。
「結局、国が自分たちの支配下に、
置きたいだけじゃん」
「人間は兵器じゃねぇんだよ」
「まあ国ってのは昔からそういうもんだ」
米澤さんは煙草に火をつけながら、
淡々と吐き出した。
「で、本題です」
俺は深呼吸し、核心を告げた。
「国の依頼で、綱走刑務所を覚醒者から奪還することになりました」
「問題は…相手にするのが犯罪者ってことです」
部屋の空気が一段と冷える。
「拘束するか、殺すか…、正直迷ってます」
沈黙。
「生かす必要ある?」
全員がレイナを見る。
「そいつらさ、
元から人殺しとかレイプ犯とかでしょ?」
「覚醒して魔物より危険な存在になってんのに、
なんで命懸けで助けなきゃなんないわけ?」
「……」
「悪いけど、あーしはユウが死ぬ可能性あるなら、
そんな連中は切り捨てるべきだと思う…」
橋本さんも頷いた。
「情けかけて仲間が死ぬのが一番アホらしい、
俺らの世界じゃ敵は潰す、それだけだ」
米澤さんは腕を組み、低く言った。
「お前はもう、ガキじゃねぇ」
「背負う覚悟があるなら、決断しろ」
俺は目を閉じ、そして…開く。
「……分かりました。危険な奴は、排除します」
覚悟は決まった。
もう迷わない。
「もう一つ、ナツを連れてきた理由なんですが」
「……私?」
「そうだ」
俺はカナを見る。
「お前の相方は、
風属性の魔物だ…恐らく高位の」
「……」
その言葉に、カナが少しだけ驚いた顔をした。
「ナツも同じ風属性、属性が同じなら、
精神世界で干渉できるはずなんだ…」
ナツの目が見開かれる。
「つまり……?」
「お前が春蘭と話したみたいに、
カナの中の相棒と対話できるかもしれない」
「俺がいない間、
事務所の防衛を任せる人員も欲しかったしな」
「……」
「お前はカナと信頼関係築いとけって、
言おうと思ってたんだが、
さっきの見るに、まあ大丈夫だろ」
「「……」」
二人は俯いて喋らなくなった。
「とりあえず、説明はこんなところです、
ちょっとトイレ借りますね」
俺は席を立ち、トイレに向かった。
「ちょっと待って!」
俺は廊下でレイナに腕を掴まれた。
「悠くん……、ほんとに一人で行く気なの?」
「お前にそう呼ばれるの久しぶりだな、
懐かしいなぁ」
「……」
「なんだよ、俺がいないと寂しいのか?」
「べつに……」
レイナがそっぽを向く。
でも、幼馴染だからだろうか、
心配して泣くのを我慢してるのがわかった。
「はぁ、レイナは昔から優しいからなぁ」
俺はレイナの頭に手を置く。
「心配すんな。
早く片付けて、お前に顔見せてやるよ」
俺は頭を撫でた。
「……調子乗んな」
でもレイナは抵抗しなかった。
米澤組事務所前
「なあナツ」
「なに?」
「俺がいない間、ここを頼むぞ」
「万が一の時は、仲間の命を最優先だ」
「分かった。絶対守る…」
「だからお前も…絶対に帰って来いよ!」
「当たり前だ、俺が何年修行してたと思ってるんだ?」
「ぽっと出のやつに負けられるか」
竜化(弱)
「じゃ、行ってくるわ」
俺は空へ舞い上がる。
北幌の街が小さくなっていく。
「暁闇、囚人の気配は、
綱走刑務所の方だけか?」
《……どうやら、
刑務所を拠点にしてるみたいだな》
「よかった…、
散らばってたらめんどくせーからな」
……待ってろよ、犯罪者ども。




