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第15話 対話という名の圧力


浮遊城 応接室


「……」


俺は少し考え口を開く。


「悪いミツル、神崎って人、

ここに連れて来てくれ」


「…あいよ」


短く答え、ミツルが扉へ向かう。


ガチャ


俺は二人掛けのソファに腰を下ろした。

革の感触が、生々しい。

緊張で滲んだ汗が、背中に張り付く。


ここは戦場じゃない。

だが、間違いなく前線だ。


失敗すれば、

剣も竜も関係なく、国が俺達を潰しに来る。


喉が、ひりついた。


「……みんなに、お願いがある…」


ナツが真っ先に反応した。


「どうした?」


「本当は、俺とミツルで対応するつもりだった」

「でも…俺らの後ろに立っててくれないか……」


声がわずかに震える。

手の平に、汗が滲んだ。


バシッ


アキラが勢いよく、

俺の背中を叩いた。


「わいらがついとる、ビクビクすなや」


マサキが、無言で俺の肩に手を置く。


「大丈夫だ、いつものお前でいい」

「やばかったらミツルがどうにかするさ」




一瞬の沈黙。




「ふぅ…、ありがとう…落ち着いた…」


次の瞬間。

五人全員の手が、俺の背中に重なった。


「「「「「任せた」」」」」


「……おう!!」


ガチャ


扉が開き、充が三人を案内してくる。


「お連れした、どうぞ、お座りください」


俺の対面のソファに二人の男が腰を下ろす。

その背後に、女が一人、控えるように立った。


初老の男が、静かに口を開く。


「私は内閣官房長官、神崎 宗一」

「隣が、防衛副大臣の藤堂 直哉」

「後ろにいるのが、

私付きの特別記録官、鷹宮 澪」

「本日は時間を頂き、感謝する」


……次は、俺の番か…。


「ようこそ、我が城……冥闇城オニキスへ」

「俺は、影宮 悠」


「私は先程も挨拶させていただきましたが、

改めまして」

「私は岩倉 充です、要件をお伺いします」


「では、早速本題に入ろう」


藤堂が資料を開いた。


「現在、日輪国内では〝覚醒者〟と呼称される存在が確認されている」


「管理対象、登録義務、隔離施設」


淡々と、単語だけが並ぶ。


「社会秩序を維持するため、

やむを得ない措置だ」


「……で?」


ミツルが静かに問い返す。


「要点を言ってください」


藤堂は、ほんの一瞬、言葉に詰った。


「影宮 悠、及び諸君らにも、登録を求める」


空気が、軋んだ。


「加えて」


神崎が続ける。


「現在、暴動が発生している刑務所の鎮圧に、向かってもらう」


「拒否した場合は?」


俺が訊ねる。


神崎は、一瞬だけ視線を伏せた。


「……他国が、より強硬な手段に出る可能性がある」

「我々には、それを止める力がない」


背後で五人が、同時に一歩前へ出た。


床が、低く鳴る。


「それ、脅し?」


那津の声が荒れる。


「核やろ。言葉選べや」


晃の目に殺意が宿る。


充が、ゆっくり息を吐いた。


「確認します」


静かな声だった。


「あなた方は、

〝他国が核を使う可能性がある〟と言った」

「その結果、俺たちは生き残り」

「……日輪の住民は、死ぬ」


神崎は、否定しなかった。


「…お前ら……舐めてんのか?」


気づけば、俺はそう言っていた。


沈黙。


その時……。


「そこまでです!」


凛とした声が響いた。


鷹宮が、一歩前に出る。

記録端末を胸に抱いたまま。


声は、震えていない。

覚悟して、この場に立っている声だった。


「これでは交渉じゃありません」


「ただの強要です」


神崎と藤堂が、同時に彼女を見る。


「……鷹宮」


神崎が小さく名を呼ぶ。


だが、鷹宮は視線を逸らさなかった。


「彼は〝兵器〟ではありません」


「一人の人間です」


その言葉で、空気が変わった。


藤堂が、深く息を吐く。


「……失礼した」


神崎が、ゆっくりと頭を下げた。


「ここからは……記録に残らない話だ」


数秒の沈黙。


それは、政治家にとって異常な長さだった。


「我々は…反総理派だ」

「今の総理は龍華の傀儡だ、その周囲も……」


全員が、息を呑む。


「核を持たない日輪が、

他国と対等に交渉するためには……」


神崎は、まっすぐ俺を見た。


「あなた方の力を……」


「平和な国を作るために」

「日輪を他国に渡さない為に」

「力を…貸してほしい」


再び、深く頭を下げた。


沈黙。


砕が、冷たく言い放つ。


「さっきまで脅してた相手に、都合良すぎ」


晃も続く。


「信用せぇ言われても無理や」


重い空気が流れる。


すると純が静かに口を開いた。


「お、俺は…助けられるなら、

助けたいと…思う……」


雅貴も自分の思いを告げた。


「正直思うことはある…、

でも…日輪のことは好きだ…」


俺は、自分の拳を見つめ。

考える。


逃げたら楽だ。

でも、ここで背を向けたら、

俺はもう親友の前に立てない。


「条件がある」


顔を上げる。


「刑務所の件は、〝依頼〟として受けてやる」


「登録もしないし。管理も受けない」


「報酬は、こちらが決める」


「拒否すれば、日輪政府は敵と見なす」


俺は殺意を込めて睨みつけた。


ミツルが、隣で小さく笑った。


「こちらの意見は以上です、

それでも良ければお受けします」


神崎は、一瞬だけ目を閉じ。


「……国家として、あなた方に依頼します…」

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